日本政府は動くのか?
一般的に、ここまで円安が進むと、輸入物価が上がって国民が苦しくなるということで、政府は発言でけん制したり円買い・ドル売りの介入を行ったりします。
しかし、それはどちらかというと世論を気にしてのことだと思います。
今これだけ円安になっていますが、日本の全体的な雰囲気としては円安は悪くないのではないかというところがあります。
2023年3月期の決算では、上場企業の業績が非常に良く、国の税収も過去最高になると言われています。
政府にとっても良いですし、日本経済にとっても(上場企業という面では)円安がプラスに働いているということです。
内需の面でも、コロナの制限が緩和されて外国人がどんどん入ってくることは政府としても大歓迎です。
したがって、政府が目先で本格的に円高誘導のための介入を行うとは考えにくいということになります。
この適温相場はしばらく続くのではないかと考えています。
長期的に見たらこの円安が人々の財布を苦しめる可能性もありますが、日本のインフレは原油価格が下がりつつあることもあり、物価は落ち着いているようにも見えます。
日銀の植田総裁も、本質的な物価上昇率は2%に満たないもので心配する必要はないと言っています。
これらの発言からも、政府が今金利を上げるとは考えにくいということになります。
日本政府が金利を上げる可能性はかなり低いので、今後の為替相場は海外の金利に左右されてくると思われます。
海外の政策金利の状況を見る時に重要になるのがインフレです。
このインフレの要因としては、コロナ禍の供給不足で物の価格が上がったことと、各国の金融緩和でお金が多く出回って、物の価格や賃金が上昇したことがあります。
このインフレがどこまで続くかは分かりませんが、一つ言えるとすれば、景気後退ということになるとインフレは続かないのではないかと考えます。
今アメリカでは、短期金利の方が長期金利よりも高くなるという「逆イールド」の状態で、これは近い将来の景気後退を示唆すると言われています。
アメリカでは少し前に地方銀行がいくつか破綻しましたが、今度は不動産に融資しているところの金融的なリスクが高まっていると言われていて、このあたりが引き金となって景気が悪化した時にはいよいよ金利を引き下げることになります。
したがって、この円安はどこかで止まって円高に振れると私は思っています。
ヨーロッパやアメリカの利上げが止まって利下げに転じた時がその契機となるでしょう。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年6月26日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。