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投資家から見た『半導体戦争』の勝者は?米国が“台湾有事”をやたらと煽るワケ=栫井駿介

今、半導体ブームということで、半導体関連銘柄の株価が大きく上昇しています。果たして、これは一時的なブームなのでしょうか。たしかに、目先では生成AIのブームによって半導体市場に火が付いている状況ではありますが、もっと昔からのことを考えると、戦後の経済は半導体の進化の歴史といっても過言ではありません。そのことが記してあるものが最近ベストセラーとなっている『半導体戦争』という本です。この本は500ページにも及ぶ大作となっていますが、今回はその中から内容をかいつまんでお話したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

「半導体」って何?

まずは、そもそも半導体とは何か、という話です。

イメージするところはいわゆる「チップ」になると思いますが、間違いではありません。

現代のあらゆる電子機器に半導体は使われています。

最近のコロナのパンデミックの影響で、「半導体が足りずに自動車が作れない」という話があったと思いますが、なぜ半導体が足りないと自動車が作れないのかと疑問に思った方もいるかと思います。

コロナで半導体の供給ができなくなったと言われていますが実態はそうではなくて、コロナ禍のDXでPCやスマートフォンの需要が急速に伸びたことによって、半導体の製造会社がPCやスマートフォンの製造に舵を切り、一方で自動車はコロナの影響で売れないから生産をストップして半導体の発注を見送ったりしたため、半導体を作るラインが足りなくなって自動車のところに半導体がまわらなくなったということです。

つまり、半導体というものは、そのバランスが少し崩れるだけで世界のサプライチェーンを大きく揺るがして世界経済に影響を与えるほど重要なものになっているということです。

かつては石油が世界においてとても重要な資源とされていましたが、今やその石油を圧倒的にしのぐくらい半導体が重要な産業インフラとなっています。

だからこそすべての経済人・投資家は半導体のことを知る必要があると考えます。

半導体とは何かという話に戻ります。

簡単に言うと、1つ1つがスイッチになっているようなものです。

デジタルの世界になるので「0」と「1」しかない二進法となりますが、その0と1が無数につながることによって多くの情報を取り扱うということになります。

数が多ければ多いほど扱える情報の量が増え、高精度化しますが、数を増やすということはその分の空間が必要になります。

しかし、スマートフォンなどはどんどん小さくなっていて、それでより多くの情報を扱おうとすると、半導体を限りなく小さくすることが求められます。

半導体を小さくすることでデジタルの世界は進歩してきたと言えますが、最近の半導体は原子数個というレベルまで微細化が進んでいます。

この小ささを実現するためにはものすごい研究開発と、工場設備を作るためのお金がかかります。

たくさんお金をかけて半導体を作ることによって、やがて性質の向上とコストの低減で世の中に半導体が普及してきたということです。

しかし、こういう設備投資産業は、投資したらその分回収しなければなりません。

そのため、わざとたくさん作ることになり、商品としての値段が下がってやがて利益が出にくくなって半導体不況に陥るという「シリコンサイクル」を繰り返してきました。

とにかく半導体というものはお金がかかるものなので、普通の一般家庭や企業が使うのは難しく、最初は軍事用途として開発されたものでした。

しかし、電卓やパソコンなどの民生品用の市場も大きくなって、今やその大部分は民生品ということになっています。

ただし、軍事においても重要な要素であることは今も変わりません。

特に市場が大きく開花したのは直近ではスマートフォンの登場によるものです。

これによって半導体の世界ががらっと変わることとなりました。

Next: 半導体市場の中心『TSMC』が世界中の最先端技術を支えている

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