報道のポイント(2)
いくつかの国々は自国外の金融センターで米国財務省証券を保有する場合があり、その場合は、その金額分は他国の保有高の中に紛れ込むことになる。例えばベルギーは2月時点で143B$を保有しているが、その大半は中国の外貨準備になっていると言われている。
1974年より米財務省は財務省証券保有高を各国個別に発表してきたのだが、財務省方針により、サウジアラビア等のOPEC湾岸産油国の個別保有高は公表せず、産油国グループの合計高のみを発表してきた。それに拠ると、OPEC諸国合計額は2015年7月時点で298.4B$、2016年2月時点で281B$だった。
しかし原油価格の下落、財政赤字補填、中近東での戦争拡大等で、サウジアラビアの保有高が注目をあびる事になってきた。2015年、サウジアラビアは財政赤字補填の為に外貨準備の16%を減らしており、全世界の債券市場に大きな影響を与えている。
湾岸産油国個別の財務省証券の保有高は下記の通り。
Country | USD Bln |
---|---|
Saudi Arabia | 116.8 |
United Arab Emirates | 62.5 |
Kuwait | 31.2 |
Oman | 15.9 |
Iraq | 13.4 |
Qatar | 3.7 |
Nigeria | 3.1 |
Bahrain | 1.2 |
Algeria | 0.7 |
結局、このブルームバーグの記事でも、サウジアラビア自国内での米国債、財務省証券の保有高は分かるものの、それ以外のサウジ国外での保有高は不明なのです。
サウジアラビアの外貨準備公表データでは、外貨建て資産額は2014年11月の726B$が2016年3月576B$へと大きく減っています。外貨建てですから、米ドル建て以外にも、ユーロ建て、人民元建て、日本円建てなどの資産も含まれています。
次に米国財務省の公式データを見ると、米財務省統計ではアジア原油輸出国というグループにサウジアラビアが含まれています。記事にあるようにサウジアラビアだけでなく、湾岸産油国の保有高も含まれた合計金額です。
なお、ナイジェリア、アルジェリアは財務省統計上、アフリカ原油輸出国というグループに含まれています。
これには国家だけでなく、一般企業、個人の保有高も含まれています。
さて何が顕著に減っているか?米財務省証券類にもまして、米国企業株の減少が目立ちます。湾岸産油国グループは米財務省証券以上に米国企業株を売却しているようです。
※太字はMONEY VOICE編集部による