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ホンダの全力「EVシフト」は四輪事業の終わりの始まり。強みを捨て“負け戦”に挑む愚策だ=澤田聖陽

EVに完全シフトして勝てるのか?

少なくとも筆者は、ホンダがEVに完全シフトして勝てるという要素が見当たらないし、そもそも以前から内燃車がEVに完全に取って代わられるということ自体が幻想だと考えている。

グローバルな視点で見てみると、米国は大統領が共和党か民主党かによって脱CO2に対するスタンスは大きく変わるし、中国は自国のEVに対して手厚い保護政策を取るだろうから、これからそれほど魅力的な市場になるとは思えない。

EUは脱CO2の最先鋒であるが、そもそもEUはこれから魅力的な市場であり続けるとも思えない。

米中とEUが現状では大きなマーケットであることは間違いないが、今後大きく成長するのはグローバルサウスと呼ばれる新興国だろう。

グローバルサウスの国々では、EVは難しく、今後も内燃車が中心になる。

EVに完全にシフトするというのは、この魅力的なマーケットを放棄するということで、良策とは思えない。

なぜホンダはEVシフトを打ち出したのか?

そもそも、なぜホンダは「EVシフト」を打ち出したのか?筆者は、ホンダの置かれている立ち位置がそうさせたのだと考えている。

ホンダはHV(ハイブリッド)、PHV(プラグインハイブリッド)については、トヨタに完敗の状況だ。また四輪車事業の損益も悪く、2023年3月期決算では四輪車事業は166億円の赤字である。

これは米国での大規模リコールの影響ではあり、リコールで586億円の費用が発生したことが赤字転落の原因であるが、そもそも600億円ぐらいの費用が発生したぐらいで赤字に転落するほど、ホンダの四輪車事業の収益は弱っているという証左でもある。

ホンダ全体の決算を見てみると、2023年3月期決算は売上16兆9,077億円、営業利益7,807億円で、各事業別損益は以下のとおりとなっている。

二輪事業:売上 2兆9,089億円/営業利益 4,887億円
四輪事業:売上 10兆7,817億円/営業損失 ▲166億円
金融サービス事業:売上 2兆9,561億円/営業利益 2,858億円
その他事業:売上 4,764億円/営業利益 228億円

ホンダは二輪事業が強く、二輪事業で約5,000億円の営業利益を稼ぎ出している。

金融サービス事業は、自動車やバイクを販売するときのクレジットやカーリースなどによる事業の収益である。

四輪事業の収益が弱くても、自動車を販売することで金融サービス事業での収益が上がるから良いという考え方もあるが、長期的には四輪事業の収益が悪化して販売が弱ってくると、金融サービス事業の収益も悪化してくる可能性がある。

やはり四輪事業の収益力は重要であるということだ。

「技術のホンダ」というイメージがあるが、近年ではリコールが多発し、ホンダ車のイメージはかなり悪化している。特に北米でのリコールは、北米市場での販売比率が高いホンダには大きな痛手となっているはずだ。

Next: 「EVシフトではホンダの四輪事業は再生しない」と言えるワケ

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