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まさに水道民営化の弊害。「今後の支払いに不安」との勝手な判断で市民の水道を止めた委託業者に「何勘違いしちゃってんの」と批判殺到

長野県安曇野市で、市内に住む男性が水道料金の滞納分を納付したにもかかわらず、「今後の支払いが不安」という理由で、委託業者によって70日間にわたり給水を止められていたことが分かった。

報道によると、同市内に住む男性は今年4月6日に滞納していた数か月分の水道料金を全額納付したものの、その後70日間に渡って給水が再開されなかったとのこと。

本来なら、開栓業務などを担う委託業者が、料金支払いが確認できれば直ちに給水を再開することになっているが、その委託業者が継続的に水道料金が支払われるかを訝しみ、給水を再開しなかったことが原因だという。

料金の納付からおよそ2か月後に、男性の家族の関係者からの問い合わせがあり、この事実を市が把握。その2日後に給水を再開し、男性に謝罪したという。市は「絶対にあってはならないことなので、委託業者への管理監督を徹底し、再発防止に努めます」としている。

海外では水道事業の“再公営化”の動きも

2018年に「改正水道法」が成立して以降、日本でも各地でその動きが進みつつある水道事業を民営化。2022年には、宮城県の水道事業の運営主体が民間企業に切り替わり、特に飲料水などに使う上水道の民営化は全国初の試みだとして、大きな話題となった。

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海外では、水道料金の値上げや水質の悪化、さらには委託会社の経営不透明といった問題も浮上するなどで、一度民営化されたのが“再公営化”されるといったケースもあるようなのだが、日本においては電動キックボードの規制緩和の件もそうだが、世界の動きとは逆行しているというのが実情のよう。

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いっぽうで今回報道された安曇野市だが、同地では「水道メーター等の検針」「水道の開栓・閉栓、名義変更などの受付」「水道料金・下水道使用料の収納業務」などの業務を、水道事業経営の効率化及びお客様のサービス向上のため、民間事業者である「ヴェオリア・ジェネッツ」に委託しているとのこと。

ヴェオリアといえば、先述の宮城県の民間による水道事業運営にも参画しているフランス本拠の水道業者で、ヴェオリア・ジェネッツはそのヴェオリアの日本法人であるヴェオリア・ジャパン合同会社のグループ会社という位置づけなのだが、今では安曇野市のみならず、国内の多くの自治体において水道メーターの検針や水道料金の収納といった業務を担っている状況。

ただそんなヴェオリア・ジェネッツだが、現在の商号に変わる直前の2015年には、千葉県の山武郡市広域水道企業団から水道料金徴収業務を受託されていた同社職員が、水道料金徴収業務を担うコンピューターを不正に処理するなどの手口で、宙に浮かせた水道料金400万円超を横領していたことが発覚

さらに2017年には大阪府堺市において同社職員が、市内の124世帯を訪問し、滞納した料金の徴収と称して現金を受け取り、偽の領収書を渡すといった手口で、約1,944万円を着服していたことが判明するなど、今回の件以前にも職員による“不祥事”はちょくちょく起きていたようなのだ。

噴出する「だから水道の民営化はダメ」との声

世に数あるインフラのなかでも水道は、それが途絶えてしまうような事態となると、住民の生命にも危機が及ぶということで、それはやはり民間でなく公営でやっていくべきでは……という意見が、日本においては根強いところ。

にもかかわらず今回のように、料金は払っているのにも関わらず、今後支払われるのかどうかが不安だといった勝手な判断で、長期間に渡り給水を止められていまったという今回の件は、いうなれば民間企業によって住民の生殺与奪の権が握られているという、異常な状況が表面化した格好だけに、SNS上では「民営化にメリットなし」「こういうことが起きるから水道(ライフライン)だけは民営化したらダメなんだよ」といった声が噴出する事態に。

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先述の「改正水道法」の成立に関しては、当時国会で審議された時間はわずか8時間だったことも物語るように、国民の間での関心はあまり高くないような感もある水道事業の民営化を巡る議論。だが、一部からは「こんな判断を勝手に水道委託業者ごときがしてるって事に恐怖」という声もあがっているなど、各地で水道事業が民営化される動きに危機感を募らせる声も、ここに来て徐々にだが増えてきているといった状況のようだ。

Next: 「一部の業務を委託に出しただけでもこういうことに…」

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