日本国内でもここ数年でよく見かけるようになった電動キックボードだが、フランスのパリでは事故が相次いだことから、レンタルサービスがこの8月末で廃止されたと報じられている。
報道によれば、パリでのレンタルサービスが始まったのは5年前のことで、約1万5000台まで普及が進んでいたというが、その反面で事故も多発し、去年は3人が死亡したとのこと。また、禁止されている歩道を走行するなどの運転マナーの悪化が問題視され、4月に行われた住民投票では、レンタルサービスへの「反対」が約9割に上っていたという。
現在、レンタルサービスの運営事業者が路上から撤去を始めているということだが、いっぽうで個人で所有する電動キックボードは引き続き利用できるという。
日本での“規制緩和”を推し進めた黒幕とは?
二酸化炭素の排出量が比較的少なく、観光のほか、通勤・通学手段としても有用な乗り物として、海外ではいち早くその存在に脚光が集まっていた電動キックボード。
だが普及が広まるとともに、その危険性も早々に露呈することとなり、2019年にシンガポールで、全ての歩道における電動キックボードの利用禁止が定められるなど、各国で規制強化が進むことに。
その規制内容は国や都市によって様々といったところで、カナダのモントリオール市では2020年に今回のパリと同様に共有の電動キックボードが全面禁止に。またイタリアのローマでは、電動キックボードのレンタル利用者を正式な身分証明書を持つ成人(18歳以上)に制限するなどの新ルールが、2022年に定められたようだ。
そんななか、海外と比べて数年遅れで電動キックボードの普及が進んだ日本では、今年7月から、16歳以上で最高時速20キロなどの基準に適合さえすれば、「運転免許不要」「ヘルメット任意」で乗れるという新ルールを適用。
海外ではどちらかというと規制強化の流れとなっているタイミングで、日本ではまさかの規制緩和となったワケだが、これに関してSNS上などでは訝しむ声が続出。
なかには、電動キックボードのレンタル事業を展開するとある会社に出資しているのが、自民党の大物政治家とも縁が深いとされる某有名商事会社ということで、その筋から“規制改革”の後押しがあったのでは……といった噂も、まことしやかに囁かれているようである。
国内で電動キックボードを普及させている黒幕は、“河野太郎”の親戚『伊藤忠商事』であることが判明 https://t.co/OubGVGFaTW
— himuro (@himuro398) July 18, 2023
電動キックボードの信号無視が急増中
このように、この7月から“規制緩和”となった電動キックボードだが、新ルール適用後1か月で、電動キックボード絡みの交通違反は都内だけで352件あったといい、人身事故も8件発生。
ちなみに、違反のなかで最も多かったのが「信号無視」で、全体のおよそ半数を占めていたとのこと。さらに歩道への進入や逆走などといった「通行区分違反」も、およそ3割と多かったようだ。
かねてから電動キックボードの規制緩和によって、もっとも危惧する声が多かったのが、いわゆる“無免許”の人々による運転。
すなわち、自動車学校での教習や学科試験の学習などを通じて、交通法規を学ぶといった経験をしたことのない人間が、電動キックボードに乗って多く路上に放たれることで、危険なシーンが爆増するのでは……といったものだったのだが、このように交通法規の基本中の基本である信号を守ることすらしない人間が増えていることからしても、その予感は当たっていたと言えそうである。
SNS上からは「周回遅れ」との声も多く飛び交っている、日本における電動キックボードを巡る状況。仮にその周回遅れということであれば、日本でも電動キックボード絡みの事故が多発し、ゆくゆくは今回のパリのケースのようにレンタルサービスの廃止、あるいは規制強化といった流れになることも考えられそうだが、それ以前に「なぜ海外の失敗に学ばない?」といった声も多いといった状況だ。
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