2023年9月9日にログミーFinance主催で行われた、第61回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第4部・株式会社サニーサイドアップグループの講演の内容を書き起こしでお伝えします。
アジェンダ
渡邊徳人氏(以下、渡邊):株式会社サニーサイドアップグループ代表取締役副社長の渡邊徳人でございます。当社は1985年に創業し、PR、ブランディングを担う事業会社を傘下に持ちながら、コミュニケーション・デザインに携わり、現在まで38年間事業を行ってきました。その間、環境は大きく変化し続け、コミュニケーション手法も大きく変わってきていますが、PRの持つ力を最大限に活かしながら、今後も成長し続ける企業でありたいと考えています。
まず、本日のアジェンダです。本日は企業概要、2023年6月期連結決算レビュー、2024年6月期業績予想、そして中期成長戦略についてご説明します。
エグゼクティブサマリー
渡邊:2023年6月期の連結業績は、3期連続で増収増益となり、売上高189億円、営業利益12.9億円と、過去最高を更新しました。第4四半期にPRの受注が増加したことによって、業績予想を超過達成することができました。
マーケティング&コミュニケーション事業は着実な案件の獲得により、増収となりました。人的資本への先行投資により微減益となりましたが、全社利益を下支えしています。
セールスアクティベーション事業は、キャラクター等のIPコンテンツを活用した大手コンビニエンスストア向け販売促進企画の順調な受注が進み、大幅に伸長しました。その他の2つの事業でも利益の改善が進み、全事業セグメントで黒字を確保できたことが、増収増益の大きな要因です。
続いて、2024年6月期の業績予想についてお伝えします。2023年5月に発表した「成長に向けた戦略方針」に沿って、売上高210億円、営業利益15.6億円を目指しています。中核企業であるサニーサイドアップを存続会社とした吸収合併により、基幹事業を強化し、利益、売上ともに拡大していく方針です。また、成長に向けた戦略投資を行いながらも、株主還元を拡充する予定です。
中期成長戦略としては、「成長に向けた戦略方針」の下、セグメントを再定義し、基幹事業を「ブランドコミュニケーション」とします。3年間はこの基幹事業の成長に注力し、中長期の視点では、基幹事業の周辺領域に収益の柱を育成することを考えています。
沿革
渡邊:当社の沿革です。1985年7月に創業してから38年が経っています。PRの事業からスタートし、セールスプロモーションを行うワイズインテグレーションという会社を子会社化しました。
その後、2008年、リーマンショックの10日前に、大証ヘラクレスに上場しました。上場が10日後であれば、今日はここには来ていないかもしれません。コンプライアンスなどの上場審査が非常に厳しい中、それを乗り越えて、約50社の中で上場しました。
そして10年が経ち、2018年に東証二部に鞍替えを行い、さらに3ヶ月後に東証一部に市場変更しました。コロナ禍で少し停滞しましたが、売上は過去最高の189億円というところまで成長してきました。
増井麻里子氏(以下、増井):御社はもともとスポーツ選手や元スポーツ選手のマネジメントをされているイメージがあります。その後、いろいろと事業領域を広めていった理由はどのようなものですか?
渡邊:ご質問のとおり、当社グループをスポーツ選手のマネジメントを行っている会社としてご認識いただいているかと思います。しかし、PR会社としてスタートし、そこにセールスプロモーションが加わり、PRとセールスプロモーションをワンストップで提供できる会社として事業を展開してきました。
上場が2008年9月で、ちょうど北京オリンピックの最中にロードショー(株式公開前の会社説明会)を開催したということも、そのイメージの背景にあったかと思います。当時、スポーツの部門で、商品やサービスのPRをしていました。そこから、スポーツ選手にフォーカスし、モノやサービスではなく、人をPRしていこうと、新たにスポーツ選手のマネジメント事業がPRの発想のもとに広がりました。
ここで、わかりやすい事例を1つご紹介します。当時、注目を浴びていたサッカー選手が大手飲料メーカーの新商品のコマーシャルに抜擢され、当社とマネジメント契約をしました。これにより、マネジメント事業の売上が上がります。
それから、当社グループのPR部門が新商品のPRを行うと、2つ目の売上が計上されることになります。さらに、コンビニエンスストアにその商品が並ぶ時に、セールスプロモーションを受注します。当時はベタ付けのボトルキャップやプレゼントキャンペーンが主流だったのですが、ここでも売上が上がることになります。
スポーツ選手のマネジメントを通じて、企業の広告出演に関するマネジメント売上が上がり、商品のPRを行う際には、PRで売上が上がります。さらに、店頭でのセールスプロモーションで売上が上がり、これら3つの領域を一体として提供できています。
北京オリンピックで北島選手が金メダルを取った時期と、当社の上場のタイミングがちょうど重なっていたため、どうしてもスポーツ選手のマネジメントというイメージが残っているのだと思います。
もともとの事業の根幹であるPRも、スポーツ選手のマネジメントに関しても、その選手の良さや、今後の選手のセカンドライフも含めたブランディングやPRを行っていたところが当社の特徴です。
当社は、スポーツ選手のマネジメントだけではなく、Doスポーツ、つまり、プレイする側のスポーツイベントのPRやラグビーやサッカーのワールドカップなどのPRを受け持ったりしてきました。また、スポーツのマネジメントという領域だけではなく、幅広い領域でPRを担ってきました。それに伴って、M&Aなど、当社グループに合流していただく企業も増え、PRを基軸としながら、現在までさまざまな領域に事業を広げてきたという経緯になります。
事業構造
八木ひとみ氏(以下、八木):事業構造について、具体的なご説明をお願いします。
渡邊:コア事業はホールディングス傘下のサニーサイドアップという会社で、PRを中心としたマーケティング&コミュニケーション事業、過去にセールスプロモーションと呼んでいたセールスアクティベーション事業を行っています。
スライドには、複数の社名を記載していますが、マーケティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業において、サニーサイドアップ、スクランブル、ワイズインテグレーションの3社を統合しました。
他にも、クムナムエンターテインメントでは、大手の総合広告代理店とほぼ同じようにコマーシャルのキャスティングを行い、コマーシャル制作やPR、さらにはメディアバイイングをサポートしていく事業を行っています。クムナム社は、主に韓流スターを使ったコマーシャルなどを手掛けていますが、詳しくは後ほどご説明します。
また、ステディスタディは、主に外資系クライアントに向けた「アタッシュドプレス」というハイブランドのファッションに関する貸出機能を持っています。これは、いろいろなメディアや芸能の方、モデルの方などがハイファッションブランドを着る際のPRを担う機能です。
続いて、セールスアクティベーション事業の下に、フードブランディング事業と記載しています。この事業では、フライパン、SUNNY SIDE UP KOREAという会社で、シドニー発祥のオールデイダイニング「bills」の事業を運営しています。「世界一の朝食」というPRキーワードを使いながら成長させ、現在は国内に8店舗(うち直営7店舗)、韓国に2店舗を展開しています。
コロナ禍のため、ハワイの店舗は残念ながら撤退しましたが、当社がグローバルブランドをPRしながら、直接店舗も経営する事業となっています。
さらに、海外から日本に進出する飲食店などから、「bills」の事例をもとに当社にオファーをいただくことが多くあります。そのため、「bills」をブランディングのドアオープニングツールとして、PR事業の売上につなげています。
ビジネスディベロップメント事業では、株式会社グッドアンドカンパニーという女性活躍を支援するサステナブルな事業に取り組む会社や、「XR」という新しい事業を開始するサニーサイドエックスという会社など、さまざまな新規事業を行っています。
事業構造
渡邊:事業構造の補足です。売上高はコア事業であるPRを中心としたマーケティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業が約8割を構成しています。営業利益はマーケティング&コミュニケーション事業が全体の利益を下支えしています。右側のグラフが営業利益の構成ですが、マーケティング&コミュニケーション事業の営業利益構成比が高くなっています。
事業環境
渡邊:事業環境については、特定の業種に依存することなく、多種多様な業種に対応しています。どうしても当社グループはスポーツ選手のマネジメントというイメージが強く、スポーツイベントのPRなどが表に出ることが多くなっています。
しかし、今大きくなってきているのは円グラフの右上に記載のとおり、「コスメ・ファッション」です。こちらは日本市場のみならず、韓国コスメの会社など、さまざまなアジアの企業が日本へ進出する時のPRや、ヨーロッパやアメリカのファッションブランドのPRを行っており、それらがかなりの割合を占めている状況です。
一方で、円グラフのブルーの部分で示しているように、実はスポーツが少なくなっています。
八木:イメージよりも、意外と少ないですね。
渡邊:その通りです。「何をやっている会社ですか?」と聞かれれば、中心は企業のPR、マーケティングやブランドコミュニケーション領域を担っている会社です。
次に、「食品・飲料」とグラフに記載しているように、飲料メーカーのキャンペーンやチョコレートやアイスクリームなどの食品のPRを行っています。また「bills」を基軸に、海外から日本に進出するレストランのPRをしています。
さらに「エンタメ」、そして今非常に目立つものとして「商業施設・ホテル」のPRがあります。現在さまざまな外資系ブランドのホテルが日本で開業しています。当社グループはPR会社のため、「どこを手掛けています」といった情報をあまり表立って出せませんが、さまざまなホテルのオープンPRを行っています。
最近は、商業施設がホテルに併設されているケースが多く、渋谷区の商業施設のオープンや、進行期では港区にある商業施設の開業PRなど、大型プロジェクトにも携わっています。前期の振り返りのスライドにもありますが、新宿区の新しい商業施設、ホテルのPRもお手伝いしました。
また、商業施設、ホテルの中に新しいお店が「初出店」というかたちで入ることがあります。そのような場合、当社グループが商業施設全体、あるいはホテル全体のPRを引き受けているため、施設内のレストランやショップからの個々の依頼も受けることができます。そのため、メディアへの対応も含めて、当社が一括して効果的にPRすることが可能になっています。
八木:幅広く対応されているということですね。
連結決算ハイライト
八木:続いて、具体的な数字も見せていただきたいと思います。2023年6月期の連結決算レビューをお願いします。
渡邊:2023年6月期は3期連続増収増益となり、売上高189億5,600万円、営業利益12億9,600万円、営業利益率6.8パーセントとなっています。
株主還元について、株主優待を廃止していますが、株主様に対しては配当金で還元し、1株当たりの年間配当金は前年の12円から15円に増やしています。
増井:第4四半期に売上高がさらに超過したとご説明いただきました。そのように第4四半期に受注が増えた要因には、どのようなものがあったのでしょうか? 新型コロナウイルスの感染症に関する水際措置の撤廃なども関係あるのでしょうか?
渡邊:その影響はあると思います。当社グループの売上はコロナ禍でも順調に伸びており、前期の売上高も過去最高を更新しました。企業の広告宣伝、PR活動は、コロナ禍でも行われていたものの、やはりリアルなイベントは実施できませんでした。
八木:そうですね。
渡邊:当社グループでもPRは行っていたものの、PRイベントは行えませんでした。しかしコロナ禍が明け、水際対策も撤廃されたことにより、インバウンドが回復してきました。外資系のファッションブランドについては、クライアントが本国からチームで来日できるようになったことも影響していると思っています。
その結果、PRの際にプラスアルファで行うリアルなイベントが、売上に貢献したのではないかと分析しています。
営業利益・営業利益率推移
渡邊:営業利益率は先ほどお話ししたように、6.8パーセントとなっています。スライドのグラフ左端に記載のとおり、2009年6月期は1.3パーセントでした。それ以降、「消費税のように、3パーセント、5パーセント、8パーセント、10パーセントぐらいの数値を目指していく」と投資家のみなさまにもご説明してきました。
営業利益率はやはり、10パーセントは確実に達成したいと考えています。今、それがようやく6.8パーセントまで伸びてきたこともあり、2桁以上の利益率を目指し、これを早急に実現したいと思っています。
業績サマリー
渡邊:業績サマリーとして、2022年6月期との比較を記載しています。ご覧のとおり、前年同期比ですべてプラスとなっています。
四半期業績推移(売上高)
渡邊:先ほどのご質問にもありましたが、第4四半期の業績が向上しています。企業のPRや広告宣伝は、上期のほうがクリスマスイベントなど年末のイベントも多いため、売上が多く見える傾向があります。しかし、今回は第4四半期の伸びを活かし、通期で成長していきたいと考えています。
四半期業績推移(営業利益)
渡邊:営業利益も四半期推移のとおり伸びてきており、第4四半期も黒字に転換しています。
セグメント別業績サマリー
渡邊:先ほどご説明したマーケティング&コミュニケーション事業、セールスアクティベーション事業、フードブランディング事業、ビジネスディベロップメント事業の売上高、利益です。
フードブランディング事業には、「bills」の店舗の売上・利益が入っています。インバウンドも含め、非常に順調に回復し、黒字に転換しています。ただし、会計期間は7月から6月までのため、昨年度の前半はまだコロナ禍の影響を含んでいました。そのため、今年度は丸1年、それ以上のことが何も起こらなければ、確実にプラスアルファになると予想しています。
営業利益変動要因
渡邊:そのような影響が営業利益の変動にも表れています。
マーケティング&コミュニケーション事業 23年6月期ハイライト
渡邊:ハイライトとして、先ほども少しお話しした事例を記載しています。まず、スライドの左側に記載のとおり、東急歌舞伎町タワーの開業PRを行いました。
また、今年の4月に入った売上として、スライド右側に記載のように、「CRAFT SAKE WEEK」を六本木ヒルズアリーナで開催しました。こちらは、延べ20万人近くの方に訪れていただいています。
八木:私も行きました。
渡邊:ありがとうございます。このイベントは、蔵元をサポートしながら、伝統ある日本酒を国酒として海外に広めていくイベントです。
今年の開催でもう8回目ぐらいになりますが、最初は蔵元に出店をお願いするような状況でした。しかし今では、このイベントが認知され、各蔵元から「必ず出たい」とオファーをもらえるまでになりました。ただ、1日10蔵を毎日入れ替え、10日間で100蔵に出店を限定して行うイベントのため、厳選し、基準をきちんと満たしている蔵元に出店していただいています。
さらに、さまざまな飲食店にもキッチンカーで出店していただき、みなさまに楽しんでいただけるようなイベント作りを行っています。当社グループが掲げる「たのしいさわぎをおこしたい」というスローガンのもと、このようなイベントも行い、しっかりと売上と利益を確保しています。
また、スライド下部には広告の事例も記載しています。肖像権等の関係で写真は出せませんが、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で活躍したメジャーリーガーの化粧品のコマーシャルへのキャスティングや、それに伴うすべての広告代理機能を担っています。
そして、韓流スターのBTSは、おそらく当社が日本で最初にコマーシャルの契約を担当させていただきました。現在もそのまま契約を継続しており、今回も大手お菓子メーカーのコマーシャルへのキャスティング、制作、PRと、すべての広告代理機能を担っています。
フードブランディング事業 23年6月期ハイライト
渡邊:フードブランディング事業のハイライトです。先ほどお話ししたように、日本酒のイベントを当社がサポートしていることもあり、新たに「bills house 日本酒」を導入し、世界の「bills」の店舗での提供を開始しました。
これまで「世界一の朝食」というキーワードで事業展開してきたこともあり、「bills」にはどうしても朝食のイメージがついています。そこで、この新しい日本酒を導入することによって、夜のイメージを訴求していきます。
いろいろなレストランのPRを受注した際にも、「さまざまなシーンで売上を上げてきたい」というご要望にフォーカスした施策を考える時、ディナーを訴求するためのお酒を自社で作ってブランディングし、売上に貢献していくという施策を提案しています。
このような取り組みが、レストランのPRのオファーをいただく時の実績となるため、展開後の効果も常に研究しています。また、このような実績を活かしてPRプランを立てられるというところも、評価いただいています。
2024年6月期 通期業績予想
渡邊:2024年6月期の業績予想です。売上高は約10パーセントアップの210億円、営業利益も20パーセントアップの15億6,000万円を目指しています。
事業別業績見通し
渡邊:事業別の業績見通しです。3社統合後のサニーサイドアップでは、売上伸長とコスト削減を図っていきます。後ほどご説明しますが、サニーサイドエックスでは新たな事業の展開をスタートしています。
増井:グループ3社の統合効果として、売上の拡大とコスト削減のお話がありましたが、どちらの効果が大きくなりそうですか?
渡邊:コスト削減よりも売上の拡大を見込んでいます。サニーサイドアップとワイズインテグレーションは、別々のグループ会社でありながら、セールスアクティベーション事業をそれぞれ担っていました。
吸収合併することで、より一体となった活動が期待できます。例えば、旧ワイズインテグレーションが大手ファストフードチェーンのキャンペーンで培ったノウハウを活かし、サニーサイドアップのクライアントにPRとセールスアクティベーションを融合した提案が可能となります。
他にも、特に今、PRにはインフルエンサーマーケティングが必須となっていますが、PRの発注とは分離されているケースもありました。
サニーサイドアップにスクランブルを吸収合併することで、PR事業にインフルエンサーマーケティングもプラスし、領域を拡大して売上を獲得できるようになります。これまでは、人財の交流にも会社間で垣根があったため、今後は垣根を越えることによって、大きなシナジー効果が出てくるのではないかと期待しています。
ブランドコミュニケーション市場の創出
渡邊:中期成長戦略になります。まずはブランドコミュニケーション市場の創出についてです。PRの市場規模は非常に小さく見えるかもしれません。しかし、最近では、大手のコンサルティング会社がPR会社のM&Aをするケースが出てきました。コンサルティング会社にとってもPR機能がコンサルティングにおいて不可欠になってきているからだと思っています。
このような動きからも、PR市場は、今後さらに広い領域のコンサルティングや広告を含む市場へと広がっていくと捉えています。これを「川上から川下まで」と表現しますが、当社グループでもPRだけでなく、コンサルティング市場、広告市場も含め、トータルでブランドコミュニケーション市場を担い、当社のプレゼンス、シェアを高めていきたいと考えています。
増井:先ほど、御社は韓国コスメのPRも担当されているというお話がありました。日本に進出したい海外企業からコンサルティングをお願いされることはありますか?
渡邊:PR会社としての認知度も高まってきたこと、また当社グループ代表の次原悦子が国際PR協会の会長を務めていたこともあり、海外のPR会社ともアライアンスを組んでいます。
グローバルブランドが日本に進出する際に、提携している海外のPR会社から依頼されるケースもあります。また、当社グループの実績を見てお問い合わせをいただくなど、事業が広がってきていると思います。
成長のための事業ポートフォリオ
渡邊:成長のための事業ポートフォリオとして、中期3ヶ年はコア事業である「ブランドコミュニケーション」で成長し、次期成長の柱となる「ブランドテック」も育成していきます。
また、我々は長年に渡ってSDGsに取り組んでいますが、女性の活躍をサポートする商品開発など、社会的課題をテクノロジーで解決する「サステナブルテック」にもファンドとのアライアンスを活用しながら、投資していきます。
なお、フェムテック市場には日本よりも海外の企業が非常に多いため、商品開発を行っている海外企業に投資し、サステナブルテックに取り組む企業が日本へ進出する時にはPRを支援させていただくことを狙っています。
中長期の事業成長イメージ
渡邊:中長期の事業成長イメージになります。コア事業で手堅い成長をする中で、3社統合の効果を出していき、ブランドテック事業としてはXRスタジオ設置による事業育成、そして先ほどお話ししたフェムテック海外投資を行っていきます。また、投資した会社が日本進出する時にはPRをお手伝いし、コア事業に取り込んでいくことを考えています。
次の時代へ、まず構造改革を断行
渡邊:グループ企業3社の統合についてです。先ほどご説明したため、ここでは割愛します。
更なるグループシナジーの発揮
渡邊:企業間連携を強化し、更なるグループシナジーを創出します。広告代理店のクムナムエンターテインメント、PR会社のステディスタディ、サニーサイドエックス、フライパン、グッドアンドカンパニー、SUNNY SIDE UP KOREAなど、グループ内でシナジー効果を発揮していきたいと考えています。
コア事業の極限までの成長
渡邊:新たなグループ会社で「新生サニーサイドアップ」としてプラスアルファを作り、高付加価値を収益拡大につなげていきたいと考えています。
ブランドテック投資
渡邊:ブランドテック投資についてですが、自社内にXRスタジオを設置しました。本来はリアルで行う記者会見や企業の商品発表、全国に支社のある企業の社長のメッセージを伝える場など、さまざまなかたちでXRのサービスを提供していきます。
こちらのスライドの画像では少しわかりづらいと思いますが、グリーンバックのスタジオで、背景に本当に山の中にいるかのような風景などを合成しています。さまざまなクライアントのニーズに応え、デジタルなソリューションを提供する事業に投資し、サービスを展開していきます。
サステナブルテック投資
渡邊:先ほどご説明した、サステナブルテック投資です。海外では急拡大している領域で、投資を通じて海外有力企業との関係性を構築し、それらの企業が日本進出する際のサポートを行っていきたいという目的で進めています。
当社は、戦略なくさまざまな領域に分散投資するということではなく、戦略的に投資領域を定め、さらに投資した会社のPR、ブランドコミュニケーションを支援できるスキーム、体制を考えています。
八木:投資先はフェムテック領域というお話ですが、具体的にどのような事業なのか、イメージしやすい例があれば教えてください。また、会場からの質問も含め、「国内ではなく、海外のスタートアップへの投資が優先になるのか?」という点についてもお答えください。
渡邊:海外のスタートアップへの投資からお話しします。こちらはやはり、その領域の有望な機会にしっかり投資できるのかが、非常に重要なポイントになると思います。しかしPRを行ってきた当社の人間が、いろいろな国へ行き、現地でネットワークを作り上げるのは、現実的ではありません。今回は、ヨーロッパを中心にフェムテック領域の海外市場にネットワークをお持ちのチームと提携することができたため、VCファンドを通して投資し、我々が出会うことのない領域にフォーカスしていきます。
また、投資候補の多くはワールドワイドな企業のため、日本への進出時にはPR、ブランドコミュニケーション案件で御支援をしたいと考えています。
3か年成長ターゲット
渡邊:売上成長率や営業利益率も、ブランドコミュニケーション事業で高めていきたいと思っています。
成長への戦略投資
渡邊:成長への戦略投資として、過去3年の営業利益合計約25億円の6割に相当する15億円を3年間の戦略投資枠とし、テクノロジー投資・人財投資・DX業務投資を行っていきます。
人的資本経営ガイドライン
渡邊:当社の代表である次原も女性で、経団連のダイバーシティ委員会の委員長を務めています。全社でも、女性が活躍できるよう取り組みを推進していきます。
現在、当社およびグループ全体で女性の管理職比率50パーセントを目指していますが、すでに管理職は44.7パーセント、取締役は30パーセントを超えている状況です。
株主還元
渡邊:株主還元は、配当性向約30パーセントを目処に還元を実施しています。
新経営体制
渡邊:そして新経営体制です。まずホールディングスであるサニーサイドアップグループのCOOに植野大輔を迎えました。デジタルも活用しながら、グループ全体の企業変革、DXを推進していきます。次に、リュウ シーチャウを事業会社のサニーサイドアップ代表取締役社長として招聘しました。中国出身のリュウ シーチャウを事業会社トップにすることによって、先ほどお話しした女性活躍の推進も進めていきたいと思います。
さらに、グループ会社のサニーサイドエックスの代表取締役社長に西谷大蔵を招き、XRをはじめとするブランドテックを進めていきます。このように、経営体制の強化においても、人財投資を行っています。
市場区分の再選択
渡邊:市場区分の再選択として、今回決算発表と同時に、プライム市場からスタンダード市場へ変更しました。まだ時間に余裕がありましたが、株主のみなさまに安心して投資いただけるように、過去最高売上かつ最高益の時に、我々に合った市場を選んだ結果、市場区分を変更する決断をしました。
最初に上場した時は「東証一部を目指したい」という想いで、実際に一部上場企業になることができました。その後、プライム上場企業としての責務を果たせるよう努力をしてきましたが、この市場改革の中で、あらためて我々の成長方針に適した市場を選択したかった、というのが今回の決断の背景です。
増井:2026年まで猶予があると思いますが、その期日が近づいてきた場合はどのように対応される予定ですか? もしくは、再びプライム市場の基準に届きそうだと思われた時は、どのように対応されますか?
渡邊:今回、決断したとおり、スタンダード市場に移行します。新規で上場審査を受けることになるため、簡単に変えられる判断ではないと思っています。
もちろん、プライム市場をまったく視野に入れていないわけではありません。今後の成長方針の進化によって、プライム市場がより当社の財務戦略上、適した市場であると判断した場合は、プライム市場への再移行も十分に考えられます。
質疑応答:株価上昇に向けての対応について
増井:「『bills』の優待がなくなり悲しく思います。そのぶん株価を上げるとのことでしたが、コロナ禍後もそれ以前の水準に戻っていない現状があると思います。それに対する具体的な対応を教えてください」というご質問をいただきました。
渡邊:このたび、過去最高売上および最高益を達成することができました。これら当社の成長性を、より力強くIR活動を通じて、お伝えしていくことがさらに重要と考えています。そして、株価を向上させていきたいと思っています。なお、株主還元については、先ほどもお話ししたとおり配当金で還元していく方針です。
質疑応答:パブリックリレーション実行に向けた人財教育について
八木:パブリックリレーションは、いろいろと考えなければならない部分も多く、企業によって最適解も異なるため、本当に難しい分野だと思います。そのようなパブリックリレーションの実行を担っていく人財についての質問です。
スライド28ページの「コア事業の極限までの成長」という資料の中に、「統合3社人財の最適配置」という項目があります。その下に「先端教育を実施する」と書かれていますが、御社では社内での育成にどのくらい注力されていますか?
渡邊:人財の育成は、今回新たに招聘したサニーサイドアップグループCOOの植野と、サニーサイドアップ社長のリュウ シーチャウが、これまでに人財教育で豊富な経験を有しているため、人財教育を主導していきます。
すでに、着任早々から人財育成には非常に力を入れており、2人の経営トップが自ら塾や講座を開き、非常に充実した人財育成プログラムを開始しています。
また、幸いにも非常に多くの若い方々に、我々のようなPR企業への入社を希望していただいており、新卒採用にも力を入れています。事業を拡大していく上で、中途採用によって優秀な人財も採用していますが、やはり中途よりも新卒を採用し、教育するところに力を入れています。
八木:スライド33ページに「人的資本経営ガイドライン」という資料もありますが、企業内での育成には、これからさらに力を入れていくのでしょうか?
渡邊:おっしゃるとおりです。今回の3社統合に伴い、当社に人財採用を一括集中し、そこから各社に出向するというかたちをとっています。そのため、優秀な人財を適材適所に配置しやすくなったと考えています。
質疑応答:ブランドコミュニケーション事業の営業利益率の目標について
増井:スライドの31ページの内容についてご質問します。ブランドコミュニケーション事業は、マーケティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業の合計となっています。3ヶ年の計画では、営業利益率は16パーセント程度を目標にされていますが、こちらはどのように達成される見込みでしょうか?
渡邊:今回3社統合したことによって、先ほどのコンサルティング市場の領域も獲得する予定です。過去に、大手広告代理店が企業から広告宣伝費の予算枠をもらい、その中で事業を行うビジネスモデルがありましたが、今は変わってきたと言われています。
当社グループでも、コンサルティング機能を強化しています。川上から川下の中で、上流の高単価のコンサルティング案件を受注できれば、利益率が非常に高くなります。
PRの利益率は高いのですが、セールスプロモーションの場合、企画提案から中国の工場で作った物を最終的に納めるところまで担うため、利益率が低くなっています。そのため、PRを含むマーケティング&コミュニケーション事業とセールスアクティベーション事業では利益率が異なります。
今後は、これらにコンサルティングを含めた総合的な事業によって、利益率を上げていきたいと思っています。
質疑応答:韓国以外への「bills」の海外展開について
八木:海外展開に関して、韓国に力を入れているというお話がありました。韓国以外に、今後注力していきたい国はありますか?
渡邊:「bills」のブランドを研究する中でわかったことは、やはりアジアの国々が興味を持っているということです。我々はまず韓国に進出したのですが、実は香港、台湾、シンガポールなどのアジア地域から「bills」の出店オファーが常にある状況でした。
デベロッパーの方からお話を聞く限り、日本の企業が日本人の目で海外から選んできたブランドという信用力があるそうです。アジアの観光客が日本でそれを体験し、自国に帰ってSNSで発信し、それを見たアジアのデベロッパーが、我々にオファーしてきています。
実は本国にはオファーが届いていません。そのため、我々がアジア地域からのオファーについて、本国と調整しながら検討することになります。
すでにコンタクトが多数あり、オープンができるかどうかは基本的にはライセンスの問題のみで、その場合は我々がサブライセンスを取得することになると思います。アジアでの展開はコンサルティングのみになりますが、検討できる領域ではないかと思っています。