今回分析する企業は、日本取引所グループ(以下、JPX)です。株式投資をしているあなたなら、おそらく東京証券取引所に上場している株式を売買していることでしょう。実は、その東京証券取引所を運営するJPX自体も株式市場に上場しているのです。そして、このJPXの株価が今年に入り上昇し続けています。多くの人がこの企業にお世話になっているはずですが、その実態はよくわからないものです。JPXが、どうやって儲けているのかを知り、投資対象となり得るのかを考えていきます。それでは早速見ていきましょう!(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
「日本株の盛り上がり」が重要なビジネス
JPXの主要なビジネスは東京証券取引所・大阪取引所の運営です。その他にも、株価情報や指標情報の管理・運営、自主規制機能を有しながらマーケットの平等性を管理する側面も持ち合わせています。

日本取引所グループ <8697> 日足(SBI証券提供)
JPXの収益源をざっくり分けると、証券会社から得られる収益と上場企業から得られる収益、株価・指数情報の提供によって得る収益に分けられます。
<証券会社等からの収益>
①取引関連収益ー売買代金・数量や注文件数に応じて得る収益
→現物やデリバティブの取引高・売買代金に応じた取引料、取引参加両者の資格に応じた基本料、注文件数に応じたアクセス料など
②清算関連収益ー債務引受にかかる収入など
→取引の決済を行う際に徴収する収入。取引の決済と証券の移転に関連する収入である。要するに買い手と売り手の仲介役となることで得られる手数料のようなイメージ
<上場企業から得られる収益>
③上場関連収益ー新規上場に応じた手数料など
→時価総額や増資の実施等に応じて上場会社から得る収入など
<株価・指数情報の提供によって得る収益>
④情報関連収益
→取引参加者、情報ベンダー等への相場情報の提供料など
出典:JPX 5つのポイント
特徴的なことは、情報関連収益以外の収益は、有価証券・デリバティブ商品の売買代金に加え、上場企業の時価総額や資金調達額・新規上場企業数に連動していくことです。従って、国内外の経済情勢や各国の金融政策、地政学リスクの動向など、マクロ環境に収益が左右されやすいことが大きな特徴と言えるでしょう。
その外部要因によって変動が起きやすい収益が、全体の70%を占めています。
出典:JPX 5つのポイント
JPXの優位性
JPXの強みを理解するために、まずは日本の市場規模を見てみましょう。実は日本市場は売買代金ベースで世界3位。アメリカの3分の1以下の市場ですが、世界的に見て小さい市場ではないのです。
出典:日経新聞より作成
そして、JPXはこの日本市場の中で高いシェアを持っています。日本の多くの株式は東京証券取引所に上場しているため、日本の企業に注目が集まった場合は、JPXを通して投資を行う機会が多くなるのです。
出典:JPX 5つのポイント
この、日本市場における高いシェアがJPXの強みです。