なぜ業績が好調なのか?
では、JPXの業績推移を見てみましょう。長期的に成長している様子がわかります。2013年に業績が大きく拡大していますが、これは大阪取引所を吸収合併した影響です。
今期は過去最高の売上と利益を達成する予定です。背景には通期の売買代金・取引高が拡大するにつれて、収益が増大する見込みであることが関係しています。
出典:マネックス証券
決算をもう少し細かく見てみます。24年3月期1Qは業績を大きく拡大させています。
出典:マネックス証券
この理由は、収益の拡大です。JPXは売上の上昇に伴ってコストが増えるビジネスではありません。収益の約80億円の大半が利益増に繋がり、営業利益は73億円増(前年同期比40%増)の大幅な増益となりました。
背景には、1日平均売買代金の増加が収益を押し上げたことが関係しています。
出典:決算説明資料より作成
このことから、売買代金が増えれば、JPXの業績も伸びる、という連動性が確認できます。(余談ですが毎日市場の売買代金をチェックしていればJPXの業績予想が行いやすいことでしょう)
ではこの好調の間に、JPXは何をやっていたのでしょうか?
ポイントとなったのは、PBR一倍割れ企業への改善要請です。
実はこの提言のように、証券取引所が企業に対して何かを要請することは異例でした。しかし、この要請を受けて市場参加者たちは
「日本の低PBR企業の資本効率や収益性が向上するのではないか」という思惑が広がり、日本株への注目が集まりました。
日経平均採用銘柄で年初来騰落率の高い銘柄を見ると、低PBRの銘柄が多い印象です(6月末時点)。また、総合商社株もランキングに入っていますから、バフェット効果の追い風もあったと想像できます。
出典:日経新聞 海外売上比率50%以上、海外投資家の保有割合が30%以上
低PBR要請の一件は、自社の業績向上に繋がりますし、日本株全体を盛り上げる意味でも、良い提言であったのではないかと考えます。
<新NISAでさらに成長する?>
このようにJPXの成長のカギとして、日本株の売買代金増加が挙げられます。そして、そのカギに繋がりそうなことが、2024年から新NISAが始まることです。個人投資家が株式投資を行うきっかけになることでしょう。
では、新NISAによってJPXはさらに成長するのでしょうか?
私は売買代金の増加につながることから、基本的にはポジティブに捉えています。しかし、市場に占める個人投資家の割合は全体の20%と決して高くはありません。従って、業績に与える影響は必ずしも大きくはなく、成長ドライバーと考えるにはインパクトが弱いと感じます。
出典:日本証券取引所 投資部門別 株式売買状況より作成
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