中国は大きなカントリーリスクとなる国だ。アップルも、ナイキも、スターバックスも、テスラも、中国市場でモノを売っている企業は早く中国から撤退して、他の国に活路を見いだしたほうが将来のためになるだろう。中国と一緒に沈没するアメリカ企業は見たくない。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
中国市場から足抜けできない企業が苦しんでいる
アメリカにとって中国は、すでに「敵国」扱いとなっている。アメリカ政府は粛々と中国との経済関係を切っており、最終的には中国そのものをグローバル経済から切り離そうと画策しているのが見て取れる。
2019年9月にはトランプ大統領が中国株の上場廃止を検討し、バイデン大統領も2020年5月には米国の上院が中国企業の米国上場を禁止する法案を可決した。中国企業はアメリカの株式市場から次々と退場させられている。
さらに2022年10月、アメリカ政府は中国への半導体の輸出規制を強化し、世界各地の中国企業の子会社や事業所への輸出を事実上禁止し、2023年3月には、サーバー製造のインスパー・グループや遺伝子企業BGIリサーチなど、数十社の中国企業を「エンティティーリスト」に追加した。
そして、2024年4月にはAIや半導体製造装置の対中輸出規制をさらに強化しており、着々と中国を経済的に排除している。最近では、国家安全保障の脅威としてTikTok禁止法案が通って、親会社バイトダンスは1年以内にアメリカ撤退か、売却かを選択しないといけなくなった。
こうした動きを受けて、アメリカ企業も中国からの足抜けを模索しており、アメリカの金融企業はほぼ中国から引き揚げている。
しかし、中国市場に食い込んでビジネスを行っている企業は簡単に足抜けできず、今後の展開に苦しんでいる。
たとえば、アップルもiPhoneの売り上げの20%近くが中国市場であるし、ナイキも売り上げの16%近くがやはり中国市場である。スターバックスはどれくらい中国に依存しているのか正確な数値は不明だが、かなり重要な市場として中国がある。
これらの企業がいま、中国から簡単に足抜けできずに苦しんでいるのだ。2024年5月2日、スターバックスは第二四半期決算を発表したのだが、悲惨な決算となって一時は17%を越える株価大暴落となった。
中国にすがるように、中国拡大路線に走る
今回のスターバックスの決算を見ると、利益と売上高は2期連続で予想を下回っている。第2四半期の調整後1株当たり利益(EPS)は68セントとなり、予想の79セントを13.9%も下回ったのだ。
四半期の売上高は85億6,300万ドルで、予想の91億4,000万ドルに届かなかった。世界の既存店売上高は前年比4%減となった。
アメリカではインフレと人件費の高騰に苦しんでいるのだが、問題は、中国でスターバックスの売り上げは急激に減少していることにある。
アメリカ政府は最終的には中国をグローバル社会から切り捨てて中国を最貧国にしようと考えているのだが、スターバックスは売上を何とか維持するために、すでに足がかりを作った中国を捨てることができない。
中国を捨てるどころか、売上が落ちてしまった中国にすがるように、むしろ拡大路線に走ろうとしている。