周辺事業で安定を目指す
その答えは、DeNAの中期経営計画に記されています。それは、社会課題領域の強化を重視しているからです。
出典:DeNA IR Day 2023 説明会資料
社会課題領域とは、ヘルスケア・メディカル領域と、スポーツ・町づくり領域です。
ゲーム事業はエンターティメント領域と分類されていますが、業績変動が激しいことから、社会課題領域を主力としたい狙いが見えます。
このヘルスケア・メディカル領域の主力商品は「Join」です。
Joinは医療関係者が高セキュリティ環境下でコミュニケーションが取れるアプリであり、脳卒中などの急性期疾患を扱う診療科を中心に導入されています。地域間の医療従事者をつなぐプラットフォームとなり、医療関係者が足りない地域にも医療を届けることを目的としています。
23年3月期のヘルスケア・メディカルのセグメント利益は22億円の損失を計上しました。
中期経営計画上は、25年に50億円の利益を目標としています。
23年3月期の全体の営業利益が42億円だったことを踏まえると、業績に与える影響は大きそうです。
また、スポーツ・町づくり領域では横浜DeNAベイスターズなどのチーム周辺地域の開発を行うようです。23年3月期は1億円の損失でしたが、30億円まで伸ばす目標を掲げています。ただし達成時期は未定であるため、実現可能性は不透明な印象です。
出典:DeNA IR Day 2023 説明会資料
また、エンターティメント領域として、ライブストリーミング事業もあります。
そのサービス内容は、配信者のライブを視聴者が課金アイテムなどを使って盛り上げる、というもの。2021〜2022年は黒字化しましたが、おそらくコロナ禍による一過性の需要増だったと考えられます。現在は広告宣伝費を投じてユーザー拡大を狙っている、育成段階のサービスと言えるでしょう。
DeNAに投資する魅力は何か?
一度、ここまでをまとめます。
第一の収益の柱は、ゲーム事業です。
これはスマホの普及、あるいはそれ以前のYahoo!モバゲーのヒットから続く事業と言えるでしょう。しかし、現在のDeNAにゲーム事業を成長させたい意欲は感じられません。ゲームが本業の任天堂や、ウマ娘のロングヒットを狙うサイバーエージェントと比べると、「当たったらラッキー」といった姿勢に見えてしまいます。
確かに、ゲーム事業は当たればラッキーというボラティリティが高い事業です。
その代わりの収益の柱としたいのが、医療系DXやスポーツ関連です。今後はこの社会課題領域で成長していきたい、という計画です。
これを見てあなたはどう考えますか?
…
私の正直な感想は
「結局何がしたいのか?」です。
確かに医療系DXの領域は、マクロ的に考えると需要が高まる領域です。しかし、そこにはエムスリーなど、たくさんの企業も存在しています。逆にエムスリーが「スマホゲーム開発をする」と言い出したら、「何やってんだ!」となるはずです。
どうにも、DeNAは資本を活かして、様々な領域に繰り出している印象です。
いち投資家の意見ですが、かつてのヒット領域を切り捨てながら、次なる成長領域に中途半端に進出している企業には、投資するか慎重になるべきでしょう。
なぜならば、いつまで経っても柱となる事業が確立しないためです。DeNAの祖業はオークションサイトのモバオクです。しかし、現在は赤字事業のその他にひとまとまりとされています。単一セグメントですらありません。
ゲーム事業や今後柱とした事業においても、同じようにならないかが心配です。
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