エムスリーという会社を知っていますか?投資家であれば、一度は聞いたことがある企業でしょう。エムスリーはコロナ禍で株価を3倍に伸ばし、大きな注目を集めました。しかし、現在はピーク時の1株10,000円から約80%株価を下げ、約2,000円。PERは140倍から30倍まで落ち着きました。「これだけ株価が下がったのだから、そろそろ買い時では?」と考える方もいるでしょう。この記事では、エムスリーはなぜ優れた企業なのか?株価はどうして下がっているのか?今は買い時なのか?について解説していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
エムスリーの優れたビジネスモデル
まずはエムスリーの業績推移を見てみましょう。長期に渡り綺麗に成長していることが分かります。

エムスリー<2413> 業績(SBI証券提供)
エムスリーの名前の由来は
・medicine :医療
・media :メディア
・Metamorphosis:変容
この3単語の頭文字から取ったものです。インターネットを用いて、不必要な医療コストを1円でも減らす、という目標を掲げています。
マッキンゼー出身の谷村 格氏が2000年に創業しました。そしてわずか創業の4年後にマザーズへ上場します。この、超スピードの上場に至った理由が、主力事業の『MR君』の運営です。
出典:M3.com
このサイトの主な顧客は製薬会社の営業担当者(MRと呼ばれています)です。また医師もこのサービスを使っています。
製薬会社の視点からすると、MR君はマーケティングツールです。
MR君は、医師が基本無料、MRなど製薬会社側が有料となっています。
驚くべきことに、その使用料は年間1.5億円。トップクラスになると、年間10億円にも達するようです。
なぜ、製薬会社は莫大な使用料を払って『MR君』を使うのでしょうか?
実は、MRの仕事は決して効率的なものではありません。勤務中の医師が診療室を出るのを待機室で待ち、わずか5分だけ薬の説明をする、このような状況です。
この、不満・非効率性を解消したのが『MR君』です。MRは、医師を待っている時間を無くし、オンラインで情報発信ができます。具体的には、サイト上でMRが医師に対して自社の薬の効果を伝えたり、医師にアンケートを実施し、薬の使用情報のデータを取ります。
さらに、製薬会社の営業コストで最も重いのがMR関連費用であり、1兆円ものコストを費やします。したがって製薬会社にとっては、MR君の年間1.5億円の使用料は、相対的に割安なのです。
この製薬会社(MR)の非効率さを解消できたことが、成長の最大要因です。そして、コロナ禍でMRと医師が直接話すことができなくなり、エムスリーのビジネスに火がついたのです。