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安倍政権の消費増税再延期と財政出動がもたらす「2018年の絶望」=吉田繁治

「政治的な言葉」によるアベノミクス失敗のごまかしと混乱

黒田日銀総裁は「異次元緩和は所期の(期待した)効果を果している」と言い続けていますが、実際はクルーグマンが言うように「金融政策(異次元緩和)には限界があった」のです。
(注)消費税増税による物価上昇効果(2%)がはがれた2016年4月の消費者物価上昇は-0.3%でした(総合)

当初約束した2年ではなく、3年経っても、目的とした効果を果たせない場合、普通なら「リフレ政策は長期停滞を認識できず、失敗した」と言います。

しかしそれはアベノミクスの失敗になり、政治的な死の問題になるので、決して言わない。代わりに「しばらく時間がかかる」と言う。これが、日銀と安倍政権です。

次に何をするのか?

時間をかけて、次に何をするのか?これもクルーグマンが、日本政府との非公開会議で言っています。

We are seeing that the policy that has been the principle lever for trying to deal with this global weakness is not as effective as we had hoped and not as effective perhaps as it seems to be recently.

我々は今、世界的な経済の弱さに対処する、もっとも肝心なテコであるべき政策(金融緩和)も、過去に期待していた効果がないこと、そして最近まで効果のように見えていたものすら失っているのを、目の当たりにしつつあるのです。

つまり金融の超緩和政策は、予想していた効果がなかった。ではどうすべきか?

Fiscal policy. Everything we have seen for the past seven years suggests that fiscal policy remains effective, especially effective in these circumstances. …… The idea that one should be prioritizing long-run budget issue over fiscal support now seems to me to be extremely misguided. Obviously I am talking about the consumption tax here.

次は財政政策です。我々は(リーマン危機の後の)過去7年間、財政政策は有効であり続けていることを見続けてきました。とりわけ、現在のような環境では有効です …… 財政支援より長期の政府予算の問題を優先すべきだという考えは、今は、まるで見当違いでしょう。私がここで言っているのは(まずは)消費税のことです。

クルーグマンは、増税の停止を言っています。増税は政府財政の赤字減らしのためです。消費税3%の増税で約7.5兆円、2%の増税で5兆円の緊縮財政にしたことと同じです。逆に減税は、財政の拡大と同じです。

この提言を受け入れ、安倍政権は2ヶ月後の2016年5月末に「増税の延期(事実上の廃止でしょう)」を決定しました。異次元緩和もクルーグマンの提言からのものでした。増税の停止も同じです。内閣官房参与の浜田宏一氏が政策の危機を感じ、クルーグマンに頼んだとも言えるでしょう。

But as I said, that has limits and on fiscal policy which needs to be more focused on that immediate need than it has been.

金融政策だけでは、ここまで申し上げてきたように、(インフレ効果に)限界があります。今行うべきは、過去より、はるかに直接に必要になった財政政策の実行です。

2016年3月の会合で、財政出動(大型補正予算)が決定しました。金額は、熊本地震の対策費(当初は2兆円か?)を含んで、7兆円~10兆円でしょう。

政府の財政の拡大は、直接に名目GDPを増やします。「需要面のGDP=民間消費+住宅投資+企業の設備投資+政府消費+公共投資+輸出-輸入」だからです。この中の「政府消費+公共投資」を増やすのが財政出動です。

ただし政府の財政は、年間で20兆円から30兆円の赤字です(消費税8%後)。このため財政拡大を10兆円とすれば、10兆円の分、国債発行が増えて、名目GDP(500兆円)に対する政府の債務(1212兆円:2016年3月)が拡大します。

Next: マスコミが報じない2014年4月消費増税(5%→8%)後の消費不況

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