マスコミが報じない2014年4月消費増税(5%→8%)後の消費不況
消費税の増税前後からの、家計消費は以下でした(2人以上の世帯)。実質とは、名目から物価上昇率を引いたものです。商品の数量消費を示します。
実質消費支出 | |
---|---|
2013年 | +1.0%(かけこみ需要あり) |
2014年 | -2.9%(4月の増税後落ちこみ) |
2015年 | -2.3%(消費落ち込みが続く) |
2016年の家計消費(実質)は順に、1月(-3.1%)、2月(+1.2%)、3月(-5.6%)、4月(-0.4%)です。消費者物価は消費税3%で2%分上がっています。上がった物価に対し、家計が商品購入数を減らし続けています。
2014年、2015年と2年も続けて家計消費が「2.9%+2.3%=5.2%」もマイナスしていることは、消費不況以外のなにものでもないでしょう。
しかし、政府批判をほとんどしなくなったマスコミはこれを言いません。有効求人倍率が1.3倍を超えたというような都合のいいデータだけを取り上げるのです。
なぜこうなっているのか。根本の原因は、物価上昇を引いた実質賃金が大きく減っていることです(2010年を100とする指数)。まず、2000年から2009年の10年間から見ます。
※毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報の解説[PDF] – 厚生労働省
実質賃金 | 名目賃金 | 消費者物価指数 | |
---|---|---|---|
2000年 | 107.2. | 110.5 | 103.1 |
2001年 | 106.6 | 108.8 | 102.2 |
2002年 | 104.6 | 105.6 | 101.0 |
2003年 | 104.1 | 104.8 | 100.7 |
2004年 | 103.2 | 104.1 | 100.7 |
2005年 | 104.4 | 104.7 | 100.3 |
2006年 | 104.4 | 105.0 | 100.6 |
2007年 | 103.2 | 103.9 | 102.3 |
2008年 | 101.3 | 103.6 | 102.3 |
2009年 | 98.7 | 99.5 | 100.7 |
2000年から2009年までの10年間に、名目賃金(平均給与)は110.5から99.5へと90%に下がっています。10年で10%、年率では1%ずつ賃金が下がっていったのです。
この10年間、消費者物価も103.1から100.7へと2.3%下がっています。年率では約0.2%の物価の低下です。物価下落を勘案した実質賃金では107.2から98.7にまで8%の下落でした。物価の2.3%の低下により、名目賃金の10%の下落が緩和されたのです。
21世紀の最初の10年で、名目賃金が10%も下がった国は日本だけです。
(注)米国では年間2~3%くらいの賃金増があるので、10年では20%から30%増になります。中国では年率10%くらいの賃金増加です
次は、2010年以降2015年までの6年間です。
実質賃金 | 名目賃金 | 消費者物価指数 | |
---|---|---|---|
2010年 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
2011年 | 100.1 | 99.8 | 99.7 |
2012年 | 99.2 | 98.9 | 99.7 |
2013年 | 98.3 | 98.5 | 100.2 |
2014年 | 95.5 | 98.9 | 103.6 |
2015年 | 94.6 | 99.0 | 104.6 |
政府や日銀がアベノミクスの効果をどう言おうが、以上が、賃金での事実です。名目賃金は2012年が98.9でした。2015年は99.0です。つまり平均給与額は、アベノミクスの3年間、何ら変化がなく横ばいです。
他方、2014年の消費者物価は円安のために1.6%、消費税増税のために2%上がり、合計では3.6%上がっています。2015年も円安効果のため、消費者物価は104.6へと前年比で1%上がっています。
年齢は確実に上がり、家族に必要な支出は増える。しかし賃金は上がらない。むしろ下がった。その上に、2013年以降の3年で消費税分を含む物価はほぼ4.3%上がっています。
このため、安倍政権が始まる前の2012年には99.3だった実質賃金は、3歳分の平均年齢が上がったにもかかわらず、94.6へと4.8%も減ってしまいました。これは、商品の購入数を4.8%減らさねばならないことを示すのです。
雇用者は5300万人です。雇用者の2000年代、2010年代の名目賃金は、110.5(2000年)から99.0(2015年)までの15年間で14.1%も減っています。
毎年1歳、年は上がる。しかし平均の賃金は1%ずつ下がっていったということです。
(注)正社員の賃金の減少より、非正規雇用割合の増加(2015年度:40%)によって平均賃金が下がったことが大きい
賃金の上昇がない限り、増税すれば必ず消費不況になるので、増税ができません。企業の人的生産性を高め、平均賃金を上げていくことが先だったのです。
異次元緩和の効果は、50%の円安を招き、円安が株価を2倍に上げことだけでした。円安が輸出企業の、下がった円での利益の増加を招き、上場企業には輸出企業が多いため株価を上げましたが、賃金の上昇はなかった。このため消費税増税が、消費不況を招いたのです。
以上のことが消費不況と言われない理由は、円安により海外からのインバウンド消費の増加(3兆円)があったこと、および企業利益が好調だったからです。賃金と消費の面では、上記のように明確な不況です。
経済成長の目的は、国民の賃金の上昇であるべきはずですが、ニュー・ケインジアン(新ケインズ主義)では、経済成長と賃金の関係を言うエコノミストはいなくなっています。
(注)わが国では、1960年代初期の池田内閣が「所得倍増論(10年で2倍)」を唱え、実現しました