よく考えてみたら、OpenAIもNVIDIAも以前から存在する企業だが、2023年に生成AIが爆発的なブームになるまで、ほとんどの人はどちらも知らなかった。しかし、NVIDIAはAIによるイノベーションがはじまって、一気に世界有数の時価総額を誇る企業へと成り上がっている。
そのようなダイナミックな光景を見ていると、10年後は想像もしない企業が頂点に立っていたとしても、何ら不思議ではない。しかし、依然としてMetaやAmazonやAppleがハイテク業界のトップにある可能性も逆に考えられる。
私自身はAlphabetは頂点ではなかったとしても、かなり頂点に肉薄した位置にいるのではないかと考えている。AIを動かすためには、その頭脳であるデータセンターや半導体に莫大な投資をしなければならない。
データセンターといっても、通常のデータセンターでは競争に勝てない。数十万台ものサーバーが動くハイパースケールなデータセンターでなければならない。Alphabetはそれを用意し、運用する能力がある企業なのだ。
今とはまったく違うAI駆動型の検索エンジンになる
すでにAlphabetは、AmazonのAWS、MicrosoftのAzureと並んで三大クラウドサービスと呼ばれているGCP=Google Cloudを運用しており、高いシェアを持っている。
つまり、Alphabetはハイパースケール・データセンターを構築・運用する能力と資金力がある企業であり、それはAIの覇権を取るための大きなアドバンテージとなる。
2024年第1四半期の業績は非常に好調で、売上高は前年同期比15%増、営業利益率は32%に上昇しており、この潤沢な資金力により、AIハードウェアへの継続的な投資が可能となっている。
もちろん、生成AI「Gemini」も継続的にバージョンアップして進化し続けることになるだろう。検索エンジンにしても、おそらくどこかのタイミングでAIと密接に連携していき、今とはまったく違うAI駆動型の検索エンジンになる可能性もある。
2024年4月、Alphabetは生成AIを搭載した検索エンジンの新バージョン「AIオーバービュー」を発表している。これは検索結果の上部にAIで生成した「検索結果の概要」を表示する機能で、これをAIが自動で生成するものとなっている。
調べ物をする場合、検索サイトに入力した質問の答えを検索エンジンはどこかのサイトに向かわなくても教えてくれるようになっているのだ。この検索エンジンの変化には気づかない人もいるかもしれないが、これは大きな変化でもある。
検索エンジンは、どこに答えを書いたサイトがあるのかを教えてくれるのではなく、すでに答えそのものを直接教えてくれるようになってきている。
サイト運用者は、これによってPV(ページビュー)が激減するので激しい不満を表明しているのだが、そもそも人々は「何か知りたいとき」は、もうすでに検索エンジンではなく、ChatGPTなどに聞くようになってきており、こうした変化はもうとめられないともいえる。
Alphabetは検索エンジンの性質をゆっくり変えていき、よりAIファーストの仕様にしていく。もう、それはとめられない動きでもある。