ヒト・モノ・カネが流出する背景
中国経済の停滞には根深い原因があり、今回示した政策で改善するような代物ではありません。
ことの本質は習近平国家主席が体制の強化を優先し、経済や国民生活を後回しにすることへの失望感です。これが10年以上続く中で、中国からは、ヒト・モノ・カネがことごとく流出する事態となっています。
共産党幹部のほとんどがパスポートを保有し、いつでも海外移住ができる体制にあるといいますが、政府は幹部のパスポートを取り上げ、海外に逃げられないようにしています。このため、家族だけが海外に移住するケースが多いといいます。
加えて海外からの投資や人、技術移転を拒む政策を強化しています。中国への直接投資は減少を続けています。スパイ防止法を強化し、中国の恣意的判断で外国人を拘留できるようになり、中国への外国人の渡航が減っています。また日本人学校に通う日本人男児が刺殺されましたが、中国への渡航リスクをゼロとしているのは日本くらいで、多くの国が中国への渡航を制限しています。
ヒト・モノ・カネが海外に流出すれば、需要が海外に逃げ、資金流出は通貨安につながり、意図しない金融引き締め効果を持ちます。そして海外からの投資や旅行者が減れば、国内生産、インバウンド消費が減り、経済が縮小します。
残念ながら今回の政府による経済対策は、こうした基本的な問題に手を付けていません。構造的な縮小圧力が残ったままです。
再び日本株に向くか
中国株への投資家の失望は悪いことばかりではありません。かつては香港や上海株が下げると、日本株も午後には下げる影響が見られましたが、最近は様相が異なります。
今年になって海外の投資家が日本株に積極的な投資を続けてきた背景には、中国市場への失望があり、その代替市場として日本株市場が見られていました。中国マネーのみならず、中国市場への投資をしてきた欧米の投資マネーも日本にシフトしてきました。
ところが9月下旬から彼らが一斉に中国市場に投資先を変えたために、日本の株式市場への外人の買いが鈍り、日本株の低調につながりました。中国株の下げが大きかった分、その買戻しも短期的に大きなものとなる面があり、日本株を冷やすことになりました。
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