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中国株の乱高下に投資家失望…海外投資マネーは再び日本株へ?期待できない中国の経済対策=斎藤満

中国の上海総合株価指数は、国慶節を前にした9月下旬に3割近い急反発を見せ、香港ハンセン指数は1週間で3割を超える急騰と、世界を驚かせました。中国政府がようやく金融緩和策によって経済の再生を打ち出したことを好感したものです。

これを見て米国市場でも中国経済の需要回復を期待した資源株などが買い上げられました。この速すぎる中国株の上昇は冷静に見るべきで、追随するとやけどを負いかねません。実際、国慶節明けの市場では早くも一部が反落しています。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

【関連】「貯蓄から投資へ」の残酷さ。政府は国民を切り捨てる意図で投資を奨めている=鈴木傾城

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年10月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

期待過剰の中国経済対策

中国の投資家も海外の投資家も、長らく中国政府の政策対応に期待できないとして、中国株から距離を置き、米国や日本市場に逃避していました。このため中国株はジリ貧を続け、カラ売りも膨らんでいたとみられます。そこへ、久々に金融緩和による経済政策が提示されたため、中国株式市場が見直されました。

空売りしていた筋は予想外の対策提示で、ショートカバーを余儀なくされ、これまで海外に逃げていた投資家が中国市場に目を向けるようになりました。そのきっかけとなったのが北京政府の提示した経済対策です。

これまで人民元がドルとリンクする制約の下で、思い切った金融緩和、特に利下げができなかったのですが、FRBがまさかの0.5%利下げを実施してくれたおかげで、人民銀行も預金準備率の0.5%引き下げのみならず、政策金利や貸出基準金利を0.2%から0.3%引き下げることができました。

また大きなネックになっている住宅市場に対しても、住宅ローン金利の引き下げを指示し、住宅購入時の頭金規制などの緩和撤廃を決めました。また消費者には耐久消費財の買い替え支援を行い、株式市場には株購入用の資金支援融資をすることにしました。

これらが想定以上だったことから、空売りしていた投資家が急遽買戻しを余儀なくされたことも、株価急反発の一因になりました。

上海総合 日足(SBI証券提供)

上海総合 日足(SBI証券提供)

香港ハンセン 日足(SBI証券提供)

香港ハンセン 日足(SBI証券提供)

しかし、経済対策の多くが痛み止め的な政策で、金利を下げても投資意欲がなければ借りないことは、30年前の日本で経験しています。住宅の供給が過剰で、価格が下落基調にある中で、買いやすくしても、住宅需給の改善にはなかなかつながりません。借金をして住宅を買っても、その後価格が下げ続ければ、デット・オーバーハングになり、借り手も貸手もバランスが悪くなります。

住宅に関しては政府が買い入れ消却するか、直接需給を改善する手当てが必要ですが、今回そこまで手を打っていません。また若者の失業問題を改善し、高齢者の老後不安を解消する手立てもありません。仕事がなく、結婚もできず、親の介護や自身の老後不安を抱えている中では消費を拡大することにも限度があります。多くの地方労働者の賃金は全く増えていません。

金融緩和策を打ち出した翌週、ロイターは政府が2兆元の国債発行を用意と書き、ブルームバーグはそのうち1兆元は国有銀行への資本注入に使われると報じました。しかし、政府からはまだ具体的な策は提示されず、国債発行も国会の了承が必要でまだしばらくは開催されません。

残念ながら中国がいま抱える問題を解決する道筋を示していないだけに、この対策への期待で株を買った人は、早晩失望に会います。期待先行の株価急騰と言わざるを得ません。

中国経済の回復に期待した米国の関連株買いも、最後は期待倒れの結果となりかねません。

Next: 中国経済の停滞に根深い要因…ヒト・モノ・カネが流出する背景は?

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