fbpx

米大統領選後に迫る大混乱…選挙結果を覆すハリス陣営の「禁じ手」とは?どちらが勝っても内戦に発展する可能性=高島康司

憲法修正第14条の適用による大統領就任阻止

まずひとつは、憲法修正第14条の適用である。合衆国憲法には憲法修正第14条というものがある。これは、19世紀の南北戦争後に導入され、憲法順守を誓った米国の公務員が反乱に関与したり、反乱を起こした人物に対し支援や便宜を与えた場合に、将来の公職への就任を認めないと規定した条項だ。トランプが次回の大統領選挙で勝利した場合、これを適用してその大統領就任が阻止するというプランだ。

すでにトランプは、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件に関与したとして、証拠をすべて審理した裁判所が存在するコロラド州、イリノイ州、メイン州において、反逆罪で有罪判決を受けた。

だが、選挙結果を覆すために憲法修正第14条を適用するためには、最高裁の法的な手続きが必要になる。トランプが「反乱」に関与したと法的に認定される必要があるのだ。「反乱」と見なすには、トランプの行動が2021年1月6日の議会襲撃事件に直接関与し、それが法的に反乱と最高裁が認める必要がある。最高裁がどのようにこの問題を解釈し、トランプの行動を「反乱」と認めるかどうかが、彼の大統領就任を阻止するかどうかを決定づける重要な要因となる。現在の最高裁は保守派が多数を占めているため、トランプに有利な判決が下される可能性も考えられが、結果は分からない。

しかし、選挙に勝利した後、大統領に就任するまでの期間は限られている。トランプが正式に就任する前に憲法修正第14条が適用されるためには、迅速な法的手続きが必要となる。法的な争いが長引けば、トランプがすでに大統領に就任している状況も考えられる。

したがって、憲法修正第14条の適用でトランプの大統領就任を阻止するのは、かなりの困難が伴う。確実に使えるという手段ではない。

選挙結果の意義申し立て

そこで考えられているのが、2つ目の選択肢だ。これは、トランプが僅差で勝利した州で、選挙結果に異議を申し立てるための積極的な法的措置をハリス陣営が講じることである。その州の選挙手続きや票の集計に異議を申し立てることで、選挙結果を逆転できる可能性がある。

しかし、この方法も最終的に決定するのは争いの争点になった州の最高裁である。この法廷闘争は長期化する可能性もあり、トランプが大統領に就任する2025年の1月まで間に合わない可能性もある。

だからこれも、選挙結果を確実に逆転できる保証はない。

大衆動員戦略と弾劾裁判

そして第3の選択肢は、2016年のトランプ当選後に起こったような、選挙後の期間に民主党が大規模動員キャンペーンを行うことだ。長期的な抗議活動を継続するための準備を行い、トランプが大統領に就任しても、全米に混乱を拡大させ、トランプ政権を統治能力のない死に体の状態に追い込むことである。そして、大統領の弾劾裁判にまで持ち込み、トランプの辞任を迫るという方法だ。

しかし、大衆動員戦略を背景にした方法にはリスクが伴う。実際、トランプはすでに、大統領就任初日に「暴動取締法」を発令する可能性を示唆している。同法は、大統領が軍を国内警察として利用することを認めるものだ。このようにしてトランプは、国内で高まった抗議運動を早期に取り締まり、国内の混乱を封じ込めることができる。すると、弾劾裁判まで行くプロセスは中断されてしまうだろう。

さらに、民主主義と人権に対する継続的な攻撃に直面すると、人々は徐々に政治から離れて私生活に目を向けるようになり、抗議運動の関心は薄れてしまうことも考えられる。そうなると、抗議運動そのものが組織できなくなる。

Next: 最終手段の禁じ手「バイデンによる権力委譲の拒否」も?

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー