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「飴は広告」老舗駄菓子問屋が飴のオーダーメイドで売り上げを倍増させた大胆な変革=吉村智樹

3代目として家業に入り「飴に特化した広告企業」へと改革

そして中村さんは2017年、3代目として家業に入る。父から勧められたわけではなく、自分の意志で決めた。

中村「子どもの頃から父や母が働いている姿を見て育ち、ここで誕生した商品が誰かの喜びにつながることも知っていました。そんな飴に、自分のアイデアを組み込んで、これまでの食品業界だけではなく『広告業界で戦おう』と考えたんです。言わば弊社は“飴に特化した広告企業”。実際、私が入社してから広告代理店からの依頼が本当に増えました。飴で広告をつくる会社なんて、他にはありませんから」

「飴に特化した広告企業」。そのような前例なき航路に舵を切った中村さん。そんな中村さんが入社して、先ず挑んだことが二つある。一つはSNSマーケティングへの注力だ。特に組み飴がつくられる様子を公開した動画は海外で大いにバズり、瞬く間に280万回再生され、注文も増えた。映像のなかには70代の職人もおり、匠のワザがSNSを通じて海を渡ったのだ。

飴づくりの動画が海外でバズり、新たな受注にもつながったimage by:まいあめ

飴づくりの動画が海外でバズり、新たな受注にもつながったimage by:まいあめ

中村「SNSマーケティングに力を入れた第1の理由は、『飴づくりはこんなすごい技なんだ』と、言葉ではなくビジュアルで配信したかったからなんです。ファブレスメーカーである弊社にとって、飴づくりをお願いする職人の存在は命。そんな職人の高度な技術を知ってほしかったし、ハイレベルな技術力でつくられた飴をPRに使うと広告価値がさらに高まることも伝えたかった。動画は言葉の壁を越えて視覚で訴えられるので、職人の技術に関心をもってもらうよいきっかけになりましたね」

もう一つは、カードやフライヤー、シールなどの封入サービス。飴のデザインとは別にパッケージやメッセージカードのオーダーも請け、さらにPR力を向上させたのだ。

中村「組み飴のサイズは基本的に直径2センチ。載せられる情報には限りがあります。そんな飴にカードやフライヤー、シールなどを組み合わせれば、メッセージの量も増やせるじゃないですか。たとえば企業の100周年記念のノベルティでしたら、あいさつ文や沿革なども同封できます。広告媒体として、メディアとして、飴の価値がさらに高まるんです」

飴とカードの封入作業は自社で行う。入社前は役員を含めて5名だったスタッフを17名に増員して対応しているという。

中村「封入は面倒な作業なので他の業者さんはやりたがらないんです。それを、うちはやる。そうやって単価・利益率・業績があがっていった部分はありますね。食品ってどうしても利益率が低い業界なんです。だからこそ、付加価値をつけていかないと生き残れない」

他社が避ける煩雑なパッキング作業も請けることで受注を増やしていった中村さん。飴だからこその利点もあった。

中村「弊社は裏方ではあるのですが、食品の場合、食品を販売し責任を負う会社は会社名を必ず明記しなければならない決まりがあるのです。そのため、自社の名前を表示できたのは大きかったですね。そこで検索してもらって、さらに口コミで広がっていきました」

「広告としての飴」の需要はどんどん高まっていったimage by:まいあめ

「広告としての飴」の需要はどんどん高まっていったimage by:まいあめ

このように、広告としての飴、コミュニケーションツールとしての飴という中村さんの指針は次第に認められてゆき、得意先は広告代理店、企業広報、グッズ制作会社の比率がさらに高くなってきた。PRノベルティのオーダーは着々と増え、現在はパッケージングを含めノベルティの依頼が6割以上に達している。「NewsPicks」をはじめメディアからの依頼もあるという。

カードの封入やパッキングも請け負い「飴に特化した広告企業」へと業態を変化させていったと語るimage by:吉村智樹

カードの封入やパッキングも請け負い「飴に特化した広告企業」へと業態を変化させていったと語るimage by:吉村智樹

Next: コロナ禍で感じた「飴が想いを伝える力」

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