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アメリカの本音、日本の岐路。在日米軍撤退をちらつかす大国の意図=北野幸伯

日米安保、二つの目的

まず、「もともと」の日米関係について。日米安保は、日本とアメリカの「軍事同盟」です。しかし、

「他国が日本を攻めてきたら、アメリカは日本を守る」
「他国がアメリカを攻めてきても、日本はアメリカを守らない」

という変な(片務的な)内容になっています。これはなぜでしょうか?

日米安保には、「二つの目的」があることを、知っておく必要があります。一つは、「アメリカが日本を守ること」。主な仮想敵は、「ソ連」でした。日本が「共産陣営」に支配されたら、アメリカも困ります。

もう一つは、「日本を自立させない」こと。どういうことでしょうか?

日米安保がなければ、日本は自分で自分の国を守る必要が出てくる。すると、またアメリカに逆らう国になる可能性が出てくる。そういうことなのです。これに関連して、リアリストの大家・伊藤貫先生の『中国の「核」が世界を制す』に面白い話がでてきます。

1972年2月、北京でニクソンとキッシンジャーが周恩来と外交戦略の会談をしたとき、米中両国首脳は、「日本に自主的な核抑止力を持たせない。日本が、独立した外交政策・軍事政策を実行できる国になることを阻止する。そのためにアメリカは、米軍を日本の軍事基地に駐留させておく」という内容の、米中密約を結んだ(この密約の要点を書き留めたニクソンの手書きのメモが残っている)。

出典:『中国の「核」が世界を制す』著:伊藤 貫/刊:PHP研究所 (p78)

どうですか、これ? アメリカ軍は、日本を守るためでもありますが、「日本を自立させないため」に駐留しているのです。

米中関係に起こった変化

「米中密約」が結ばれた当時、第1に、2次大戦が終わってから27年しか経っていなかった。戦争の記憶はまだ生々しく、米中は、「共通の敵」日本を警戒していた。

第2に、中国は、今と違って混乱した、貧しい、哀れな国だった。それで、アメリカは、中国をまったく警戒していなかった。その後、米中関係は、体制がまったく違うにも関わらず、概して良好に推移してきました。

1970年代~91年は、「ソ連に対抗する」という共通の目的があった。1991年以降のアメリカには、「13億人の市場中国で大儲けしたい」という動機があった。そして、良好な米中関係は、「100年に1度の不況」が起こった08年まで続いたのです。

しかし、08年以降、米中関係に変化が起きてきました。理由は、アメリカが沈み、中国が浮上したことです。中国は、世界経済が最悪だった09、10年も、9%を超す成長をつづけた。GDPで日本を超えたとされ、「世界2位の経済大国、軍事大国」に浮上した。

アメリカは警戒感を強め、オバマは2011年、「アジア回帰」を宣言します。しかし、実際には、簡単ではありませんでした。他の地域で、さまざまな問題が起こったからです。

「アジア回帰」を宣言した2011年、すでにシリア内戦が始まっていた。アメリカは、反米アサド政権を倒すべく、反アサド派を支援します。2013年8月、アメリカは、シリア(アサド)攻撃一歩手前までいった。

2014年3月、ロシアのクリミア併合によって、米ロ関係が極度に悪化。ウクライナでは内戦、米ロ代理戦争が始まってしまいました(アメリカは、ウクライナ新政府軍を支援し、ロシアは、東部「親ロシア派」勢力を支援する)。

また、シリア、イラクで「イスラム国」(IS)が台頭。アメリカは2014年8月、空爆を開始しました。

2011年11月に「アジア回帰」を宣言したオバマ。しかし、その後も、中東、ウクライナ問題でゴチャゴチャし、なかなか動けなかったのです。

Next: アメリカにとって日本は「敵」から「使える仲間」に変わったのか

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