2025年2月4日に、第3四半期決算発表がありました。そこで「三菱重工の業績はどうだったのか知りたい」という声をよく耳にします。また「三菱重工の今後の業績について気になる」という方も多いようです。そこでつばめ投資顧問が、2月4日に発表された決算についてや三菱重工を取り巻いている環境に関して解説していきます。また、三菱重工を長期投資の対象としてみる場合、注目すべき点についても紹介します。ぜひ最後までご覧ください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
業績好調!
2月4日に発表された決算で株価は動きませんでしたが、業績は過去最高益を予想していてさらに上方修正もされ好調です。
2020年までは、国家プロジェクトとして国産旅客機であるMRJの開発に挑戦していましたがうまくいかず撤退しました。
そのため2020年3月期は赤字となっていますが、そこから急回復し今回の決算発表で今期の純利益を4%上方修正しています。
また今回の決算で、事業利益が38%の増加と当期利益が25%増えたことが発表されました。
現在PER30.6倍と少々高い水準ですが、利益が次の決算でも30%近く増加するとしたらPERは23倍程度だと計算できます。
織り込み済みの可能性もありますが、今回の決算までの流れを見ると現在の株価はそこまで割高ではない水準だといえます。
三菱重工の業績が好調な理由
今回の決算で、三菱重工は好調であることがわかりました。
この章では、三菱重工が好調な理由について深掘りしていきます。
三菱重工が好調な理由は以下のとおりです。
- エネルギー関連に追い風
- 防衛関連に追い風
それぞれ解説していきます。
<エネルギー関連に追い風>
三菱重工の業績が好調な理由として、AI市場の拡大で使用電力量増加に伴い火力発電のガスタービンの需要が増えたことが挙げられます。
ガスタービンとは、火力発電時にガスでタービンを回して発電する機械のことです。
出典:関西電力「火力発電についてWhat’s 火力発電」
ちなみに、ガスタービンの世界トップシェアは三菱重工です。
以下ではガスタービンの需要が大きくなった理由について解説します。
・データセンターの建設が増えた
エネルギー関連需要が大きくなった理由は、AI発展によるデータセンター建設が増えたことが挙げられます。
AIのデータセンターとは、AIを動かすために必要なサーバーのことです。
実物は以下のようなものです。
出典:ソフトバンク株式会社「国内最大級の生成AI開発向け計算基盤の稼働および国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格開始」
データセンターは、かなりの電力を消費します。
AIを動かすだけでも多くの電力を使いますが、サーバーは使うと発熱するので熱を冷やす冷房の電力も必要です。
ちなみに、アメリカの一部の州では電力の25%をデータセンターで消費していると言われています。
・データセンターの稼働には安定した電源が必要
上の節からも想像できるとおり、データセンターを稼働させるには安定した電力が必要です。
ですがデータセンターを建てるのに適した土地というのは、田舎や砂漠などなにもないところで元々人も少なく発電能力が低いです。
そのためデータセンターに安定して電力を供給させるためには、新たに発電所を建設する必要があります。
そこで環境に優しい太陽光や風力などの自然発電を利用したいのですが、発電量が安定しないことがネックとなり、24時間稼働し続けられる火力発電が見直されました。
・高効率なガスタービンの需要が増える
ただ世界では、脱炭素といって地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出量を抑える脱炭素化の取り組みが行われています。
なので、発電する際に二酸化炭素を排出する火力発電は、世の中の流れと逆行していて適した発電方法とはいえません。
ですが、三菱重工のガスタービンは高効率が売りとなっていて少ないガスでタービンを回せます。
このように脱炭素の流れがあるため、少しでもエコな三菱重工の高効率なタービンの需要が大きくなりました。
ちなみにライバル企業となるのが、エジソンで有名なアメリカのGEや、ドイツのシーメンスなど世界の大企業3社程度しかおらず、寡占市場となっています。
また仮説にはなりますが、三菱重工以外の会社は脱炭素の流れからガスタービンの研究を推し進めていなかったのではと考えています。