<4つのポジティブな要素>
まずは、ポジティブな要素からみていきましょう。
ここで紹介することを念頭において、三菱重工が今後も伸びていけるかを考えることが長期投資をする上で重要になります。
1. エネルギー需要は続く
三菱重工がこの先まだ伸びると考えられる理由は、データセンターの需要がこれからも増えていくと予想できるからです。
今後もAI市場の成長が見込まれていますので、データセンターを建てる必要がでてくるでしょう。
直近では省エネで動くDeepSeekの登場で、電力問題が解消される可能性があることも考えられています。
ですがこれまでのデータセンターが不要になるとも考えにくく、今後もAI市場の拡大に伴い必要に応じて建設されると推測しています。
そうなると、発電所も必要なため、三菱重工のガスタービンの需要も大きくなるでしょう。
2. 原子力施設の強化も進めている
三菱重工は、原子力施設の強化を進めていることもポジティブな要因です。
脱炭素と安定電源を追求すると、どうしても現段階の技術では原子力に注目が集まります。
三菱重工は「実施可能な設計検討はほぼ完了」したことを公表しているくらい原子力施設の開発が進んでいることを発表しました。
そこで、三菱重工の中期経営計画を見てみます。

ガスタービン事業、原子力事業を重点領域とし成長産業だと明記しています。
日本では原発事故の影響でイメージが悪いですが、アメリカでの建設となると話は進みやすいかもしれません。
3. 日本の防衛強化において中核的な役割を担う
アメリカは、日本に対して防衛力を強化するべきだという要請をこれまで続けてきました。
防衛力強化の圧力があるなかで、いざ安全保障を考えて手を打つとなると三菱重工に受注されることになります。
最近ではイギリスやイタリアなど西側の国々と協力して、次世代戦闘機を開発することも決まっています。
このように防衛力強化として措置を取る場合、国とのつながりも強いことから三菱重工へ受注が増え売上はさらに伸びると考えられるでしょう。
4. ライバルが少ない
火力発電市場は、寡占市場のため競合が少ないです。
そのためガスタービンの需要が増えると、どの会社も生産が追いつかなくなることが考えられます。
すると、受注が増えることによる売上増加など様々な恩恵を受ける可能性もでてくるでしょう。
ライバル企業が少ないことも、大きなポジティブ要素といえます。
さらに、新規参入できるような業界ではないことも非常に大きなポイントです。
<懸念点>
今後を見通す際に押さえておきたい要因を解説しましたが、もちろん課題となることもあります。
これまでの話を見てもわかるとおり、三菱重工の業績は外部環境依存が大きいです。
いまは防衛関連とエネルギー関連の追い風で業績がとても伸びていますが、この流れが弱まると業績が低迷する可能性があります。
ここでは、三菱重工の今後を見通す際に注意すべき点を解説します。
・ガスタービンが今後も許容されるのか不透明
ガスタービンによる二酸化炭素排出が、環境へ悪影響だと強く再認識される可能性が少なからずあります。
また、原子力のイメージがさらに悪くなるニュースがでると原子力施設の設置は難しくなるでしょう。
いまはやむを得ず火力発電や原子力発電に頼っていますが、より良い技術が出てくればこれら2つの需要がなくなる可能性もあります。
一方でアメリカのトランプ大統領は、石油や天然ガスを燃やして産業を発展させることに前向きです。
そのなかで、高効率のガスタービンは脱炭素の流れに沿った製品でコスト的にも優れていることからアメリカ的にもポジティブなモノだと言えます。
なお、三菱重工自体も水素やアンモニアを利用した二酸化炭素を出さない発電方法を研究しています。
それがうまくいった場合、火力発電や原子力発電に代わるものとして使われるかもしれません。
・国内政治リスク
防衛産業は、国の予算によって決まります。
現在の自民党政権下では、防衛予算を2倍にする計画を進めていますが今後も維持されていくならまだ三菱重工にとっていい流れは続きそうです。
しかしながら、政権交代が途中で起きると防衛費を増額する流れが停滞するかもしれません。
そのため、三菱重工の見通しを考える際は国内政治にも目を向けておく必要があります。
三菱重工は今後、投資対象としてはどう?
これまでの話を踏まえて、三菱重工は投資対象としてどうなのかみていきましょう。
実際、三菱重工は収益基盤が安定しているわけではありません。
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