トランプ大統領が「相互関税」を発表し、日本には24%の関税をかけると発表しました。果たしてこれが日本経済や世界経済に与える影響はどのようなものになるでしょうか?(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
緊急事態!トランプ大統領の相互関税でいよいよ雲行きが怪しく…
トランプ大統領が発表した相互関税によって、経済の状況が本当に厳しくなってきていると感じています。正直、私が想像していたよりもはるかに事態は深刻で、大変な状況になりつつあるのではないかと危惧しています。
これまでトランプ大統領は、アメリカが貿易赤字である国に対して「不均衡だ」「不公平だ」と主張してきましたが、今回の相互関税は、アメリカの貿易赤字額を基に各国への関税率を決めるという、かなり無理のある計算方法に基づいていると私は見ています。

日経平均 日足(SBI証券提供)

NYダウ 日足(SBI証券提供)
衝撃の関税率!日本への影響は想定以上に大きい
そして、皆さんも気になる各国への関税率ですが、日本に対しては24%という、事前の想定を大きく上回る数字が示されました。日本だけでなく、中国、台湾、韓国といった国々も軒並み高い関税率になっています。東南アジアの国々も同様です。
これらの国々の関税率が高くなったのは、アメリカに対して多くの輸出を行っているからです。しかし、アメリカが自ら商品を買っているのに、それを貿易不均衡と呼ぶのは筋違いではないかと私は思います。
さらに、一律で10%の関税が課せられる品目や、自動車には一律25%の関税が課せられることも発表されています。これまで日本への自動車関税25%は当然視されていましたが、それ以外の品目に対して24%もの高い関税が課せられることは、日本企業にとって大きなネガティブサプライズになるだろうと強く感じています。
本当に困るのはアメリカ自身?相互関税の矛盾
しかし、冷静に考えると、本当に困るのはアメリカの側ではないかと私は考えています。関税をかけることで、アメリカ国内で製品を販売する際のコストが上がり、最終的には物価が上昇するのは明らかです。
トランプ大統領は、安い外国製品がアメリカに流れ込んでいるのは、アメリカが相手国を優遇してきたせいだと主張していますが、それは違うと私は思います。外国で作った方が安くて良い製品を作れるからであり、アメリカ企業自身も海外で生産し、それを輸入することでアメリカの消費者が恩恵を受けてきたのです。
例を挙げれば、iPhoneが良い例でしょう。Appleが設計しても、製造・組み立ては中国や台湾で行われています。アメリカ国内で同じ品質と価格で製造することは、人的リソースやサプライチェーンの面から考えても非常に難しいでしょう。
トランプ大統領は製造業の雇用を取り戻すと声高に言っていますが、私の考えでは、関税をかけても雇用は戻らず、むしろ物価が上昇する可能性が高いと思います。