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インフレは米国超え、金利は日本が3%下回る…異常な金利構造がもたらす次のリスクとは=斎藤満

イールド・カーブがスティープ化

日銀の植田総裁も、日本の実質金利が低いことは認めています。この実質金利の低い状態を放置すれば、緩和が進み過ぎてよりインフレを助長する面があることは総裁も認識しています。

だから行き過ぎた緩和の修正が必要と言っているのですが、ここまでは内外の政治的な圧力で思うように修正できていません。足元でも官邸から「夏の参議院選挙前の利上げは困る」と止められています。

政策金利が低すぎてインフレを助長することになれば、それだけ長期金利が上がります。そしてイールド・カーブがスティープ化します。これは何を意味するのでしょうか。

まず長期金利の上昇が速かったことは、固定金利の国債などの価格が急速に下落したことを意味し、国内債券を大量に保有する機関は債券の含み損が大きくなります。これを売却すれば含みでなく、売却損になります。例えば、今年3月までの金利上昇が速かったため、日本生命の国内債券含み損が3兆6,000億円に上ったと報じられました。

その後4月初旬にかけて長期金利が急落したので、含み損は急速に改善されたはずですが、ここへきてまた長期金利の上昇がみられるので、再び大きな含み損が出ている可能性を示唆しています。

つぎにイールド・カーブのスティープ化は、短期金利が低く、長期金利がより大きく上昇して高くなったことになるので、短期資金で調達し、長期で運用する金融機関に大きな利益をもたらします。短期金利が低い中で利上げ期待やインフレ懸念で長期金利が先に上がれば、銀行のマージンが改善され、収益が拡大します。

短期の政策金利が引き上げられても、預金金利の引き上げ追随率が普通預金で4割程度なので、調達金利が上がっても短期の運用金利がより大きく上がって利ザヤが拡大します。また政策金利の引き上げに伴って当面は長期金利も上がるので、長期の運用利回りも上昇します。金融機関の株価には上昇要因になります。

次に住宅ローン金利ですが、イールド・カーブがスティープ化する状況では、短期金利に連動する変動金利型の金利が低く、長期金利に連動する固定金利型のローン金利がより高くなります。実際、最近では政策金利が0.5%まで引き上げられましたが、それでも変動金利型ローンの金利は、多くの機関で0.6%台にあります。

一方、固定金利型ローンの金利は、多くの機関で10年物が1.9%程度、35年では2.4%前後となっています。固定金利型は将来の金利がずっと今の金利で固定されるので上昇リスクがありませんが、現行水準がすでに高くなっています。変動型は現在こそ低金利ですが、今後の利上げ次第ではさらに上昇する可能性があります。

ただし、現在の金利差が大きいので、今後の利上げ幅が1%程度であれば、変動型のローン金利は現在の固定型よりまだ低い可能性があり、政治的に利上げが抑えられる環境なら、短期金利に連動する変動型が有利と考えられます。

Next: 参院選後に利上げ再開か。トランプの動きに要警戒

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