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ダイキン、最高益でも株価下落…長期投資の好機か?主要市場での苦戦を巻き返す成長戦略とは=佐々木悠

<アメリカ市場の現状と課題:環境対応需要の読み違え>

アメリカでは、2025年3月期の通期実績で、住宅用が前年比-8%と不調でした。当初は+7%の予想でしたが、これを大きく下回りました。小型の業務用と住宅用を合わせたカテゴリーも、当初予想28%増に対し+8%にとどまりました。ビル用の業務用も1%増と予想に届いていません。

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一方で、超大型工場やデータセンター向けの「アプライド」は好調でした。これが全体の売上高を前年よりプラスにした大きな要因です。データセンター向けの需要が非常に強い状況です。

アメリカ市場での住宅用・小型業務用空調の販売が伸び悩んだ理由として、環境対応需要の読み違えが挙げられています。2025年から環境に優しい冷媒を使ったエアコンへの切り替えが進むと予想し、ダイキンは新製品の生産を増やしました。しかし、市場では規制前に旧来の環境に優しくない冷媒を使ったエアコンが安く大量に販売され、消費者は安価な旧製品を選好しました。この結果、ダイキンは環境対応製品しか在庫がない状況となり、旧製品の需要を取り込めず、販売が予想を下回り苦戦したのです。これにより、シェアを落としてしまいました。

今後も、市場にまだ旧製品の在庫が出回る可能性があり、しばらくはその影響が続くかもしれません。2025年度の住宅用販売予想(+38%)についても、過去の実績を踏まえると懐疑的な見方があるようです。

<ヨーロッパ市場の現状と課題:ヒートポンプ需要の伸び悩み>

ヨーロッパ市場も正直、アメリカと同様にかなり苦戦しています。2025年3月期の通期実績で、住宅用は予想+20%に対し+4%にとどまり。業務用も予想に届きませんでした。

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特に、ヒートポンプ事業が前年割れとなっています。ヒートポンプはコロナ禍やガス価格高騰時に需要が急増しましたが、戦争の落ち着きとともに前年割れが続いている状況です。2026年3月期は前年比プラスの予想を立てていますが、決算説明の質疑応答などを見ても、大きなプラス要素は見当たらないとの見方もあります。

ヒートポンプ需要が伸び悩む背景には、補助金の打ち切りや、イギリスでの燃焼式暖房販売禁止規制が2025年から2035年頃まで延期されたことなど、規制が緩和された影響があります。また、LNGなどにより比較的安価なガスが入ってくるようになり、ユーザーがあえてヒートポンプを選ぶ理由が薄れていることも影響していると考えられます。

ヨーロッパ市場については、好調すぎた時期から「普通」に戻っていくイメージと言えるかもしれません。中期計画ではヒートポンプ事業を強化する方針ですが、コロナ禍やガス価格高騰のような外部環境の変化がないと、需要は伸び悩む可能性があります。

<データセンター向け大型空調の好調が業績を下支え>

アメリカ市場で見たように、データセンター向けの大型空調は引き続き好調です。単価も大きいと考えられ、これが全体の売上・利益を下支えしている大きな要因です。

Next: ダイキンの「すごさ」とこれまでの成長戦略

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