5. 破滅的な出来事:短期的な動揺は長期リターンを損なわない
株式市場には、トランプ関税ショックやコロナショックのような「破滅的」とも思える出来事が度々起こります。こうした時、人々はネガティブになり「投資などしない方が良かった」と考えがちです。
しかし、シーゲル教授は、「世界的な出来事は短期的に市場に動揺を与えるかもしれないが、株式の優れた長期リターンを損なうことはなかった」と過去の150年の研究結果に基づいて述べています。
世界恐慌やブラックマンデー、そして数々の戦争を経験しても、企業は予想よりも早く効果的に危機に適応してきたからです。この教訓から学ぶべきは、短期的な出来事に過剰反応せず、長期的な視点を持つことの重要性です。長期投資家にとっては、株価が大きく下がった時こそ、優良株を安く買える「チャンス」なのです。これはウォーレン・バフェットの投資哲学ともほぼ一致しています。
6. 市場の心理:最悪に見える時が最も美味しい
市場のセンチメントに関して、シーゲル教授は「市場は最高にみえる時が一番危険で、最悪に見える時が一番美味しい」と指摘しています。市場が好調で、皆が楽観的になっている時こそ、実はリスクが高まっている時期であるという心理です。逆に、市場がボロボロで悲観的なムードに包まれている時こそ、買いの好機であると統計的に裏付けられています。
7. 個別銘柄の誤評価:割安な企業を見抜く力
市場全体の動きだけでなく、個別の株式にも同様の心理が働きます。市場は「安全な証券を過大評価し、割高な価格を支払おうとする反面、リスクの高い証券を過剰に恐れ、割安な価格しか支払おうとしない」傾向があります。
つまり、みんなが良いと言う人気株は、確かに優良企業である可能性が高いものの、必要以上に割高に評価されていることが多いのです。これは「上昇が上昇を呼ぶ」といった形で、株価が実態以上に吊り上がることがあります。
一方で、一時的に不安視されている企業や、業績不振で売られすぎている企業には、本来の価値よりも「割安すぎる」価格がつくことがあります。良品計画(無印良品)の例のように、かつては過剰に売られ、時価総額が低い時期がありましたが、これは市場がそのリスクを過大評価していたためです。こうした「割安すぎる」状況にある優良企業を、周囲のネガティブな意見に流されずに見極めることが、長期投資では重要になります。
8. 小型株効果:高いリターンにはリスクを取る勇気が必要
本書に記載されている内容として、「小型株の方が大型株よりもリターンが高い」という「小型株効果」も挙げられます。もちろん小型株はリスクも大きいですが、そのリスクを調整して計算してもなお、小型株のリターンが高いという結果が出ています。
これは、株式投資で高いリターンを求めるなら、ある程度のリスクを取りに行く必要があることを示しています。平均を上回るリターンを得るには、他とは違う行動が求められるということです。