9. 人間の性質:悲観論に惑わされない
人間の性質として、「悲観論が書かれた本の方が楽観論よりも3倍売れる」という事実があります。人々は不安を掻き立てられる情報に注目しやすく、YouTubeなどでもネガティブな内容の方がアクセスが伸びる傾向があるほどです。
しかし、長期投資の本質は、どんなに世界的に悪い経済事象があっても、最終的に株式は大丈夫であるという「楽観」にあります。世の中の意見は悲観に流れがちですが、真実はむしろ楽観の方にあることが多いのです。そして、人々が不安を掻き立てれば掻き立てるほど、投資家にとってはチャンスが広がってくると言えるでしょう。
10. 人間の性質:時間のかかるリターンを軽視しない
シーゲル教授は、人間のもう一つの性質として、「すぐに手に入るリターンには大金を支払い、手に入るまで時間の掛かるリターンにはわずかな金額しか支払おうとしない」ことを指摘しています。
例えば、鶏をすぐに解体して肉として売れば即座に利益が得られる(短期的なリターン)ため、皆そこに殺到します。しかし、その鶏に卵を産ませ、孵化させ、ひよこを育て、さらに鶏を増やしていく(長期的なリターン)方が、計算上ははるかに大きなリターンが得られると分かっていても、なかなかそちらを選ぼうとはしないのです。
これは株式市場でも同様です。目先の値動きの激しい銘柄には多くの人が殺到し、すでに旨味がほとんど残っていないことがあります。一方で、時間さえかければ大きなリターンが得られると分かっている企業であっても、すぐに株価が動かないと見過ごされがちです。人々から見過ごされている優良企業を安価でコツコツと買い続けることが、最終的に大きな成功に繋がる秘訣なのです。
11. 景気と株価は予測できない:底打ちを待つな
投資の情報を追う中で、「景気がこれからどうなるか」「株価は景気を織り込む」といった予測の話題を耳にすることが多いでしょう。しかし、シーゲル教授は、「景気の底入れを示す明確な証拠を待っている投資家は、すでに株価の大きな上昇を逃している」と警鐘を鳴らしています。
投資家が最もとってはいけない行動は、「景気感を後追いする」ことです。例えばコロナショックの際、アメリカがロックダウンした時点で株価はすでに底打ちし、経済指標が出る前から急上昇を始めました。景気が悪いからと買いを待っていると、結局株価が上がってしまい、買い時を逃してしまうのです。
シーゲル教授は、ウォーレン・バフェットと同様に、景気の先行きを見通すことは不可能であるため、予測に時間を費やすのではなく、「収益性の高い企業を見つけること」に満足していると述べています。
12. 常に「フルポジ」であること:機会損失を避ける
シーゲル教授は、「株式を売ったら、それを現金として置いておくのが良くない」と主張しています。景気が悪いかもしれないと言って現金化してしまうと、株価の上昇を逃してしまう可能性が高いからです。
長期投資は、必ずしも1つの企業を永遠に持ち続けることだけを意味しません。良い企業に入れ替えていくことはアリであり、大切なのは全体的な株式の持ち高を落とさないことです。
実際に、多くの成功している投資家(「億り人」と呼ばれるような人々)は、ほぼ例外なく「フルポジ」(常に株式に全力で投資している状態)であることが多いと、私も感じています。彼らは、変に持ち高を落として「待ちの期間」を作ることなく、良い企業を常に持ち続けることを実践しているのです。リーマン・ショック後に上昇相場を現金で逃した有名なバリュー投資家の例も、この原則の重要性を示唆しています。