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安川電機が示す景気悪化シグナル…なぜ350億円も下方修正?製造業・半導体業界に波及か=元村浩之

今回は「景気の先行指標」として注目される安川電機<6506>の最新決算から、現在の経済状況と今後の展望について詳しく解説します(※原稿執筆時点:2025年7月16日)。安川電機は、その決算発表が他の多くの企業よりも早いため、経済全体の動向を占ううえで非常に重要な存在です。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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安川電機とは?なぜ景気の先行指標とされるのか?

安川電機は、一般的な企業が多い3月期決算とは異なり、2月期決算の企業です。このため、3月期決算企業がラッシュを迎える前に先行して決算を発表する傾向にあります。

さらに、安川電機は顧客企業がグローバルに広がっているため、世界的な景気動向の先行指標として捉えられやすいという側面を持っています。

安川電機<6506> 週足(SBI証券提供)

安川電機<6506> 週足(SBI証券提供)

同社が手掛ける製品は、工場で必要とされるロボットやサーボモーター、インバーターといった制御装置が中心です。これらの製品は、特定の場所に正確に動かしたり、モーターの速度を制御したりするために不可欠なものです。

顧客の業界は多岐にわたり、半導体工場、家電製造工場、食品工場、自動車製造工場など、ありとあらゆる工場で必要とされています。

特に、安川電機の製品は、企業が生産ラインを増やしたり、新しい工場を建設したりするような「攻めの設備投資」の局面で強く求められます。このため、企業の設備投資意欲が数字に反映されやすいという特性があり、「設備投資意欲指標」とも言えます。

最新決算:まさかの下方修正の背景

安川電機は7月4日に2026年2月期第1四半期の決算を発表し、下方修正を行いました。

第1四半期にもかかわらず、売上高で約350億円、営業利益で約170億円もの下方修正となりました。これは、通期の売上予想5,150億円に対して約10%弱の修正に相当します。

この下方修正の主な原因として挙げられているのが、トランプ氏の関税政策です。これにより先行き不透明感が増し、特に自動車業界を中心とした設備投資が鈍化するという見込みが背景にあります。

<トランプ関税が設備投資に与える影響>

現状、トランプ関税が実際にどうなるか分からない状況が、各企業の投資に対して「及び腰」にさせています。安川電機の決算にも、この不透明感が数字として現れつつあると見られています。

これまで米州では、製造業の国内回帰や半導体工場の米国建設といった動きが活発で、比較的受注が好調でした。

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出典:安川電機 決算説明資料

しかし、今回のトランプ関税によって、米国での設備投資がどうなるか不明瞭になり、企業が投資を抑制する流れが今後出てくるだろうと予想されています。

米国への輸出を考えて工場を建設する場合、関税がいくらかかるか分からないため、投資に慎重にならざるを得ません。一方、米国国内で生産する分には関税がかからないため、米国での工場建設が相対的な選択肢になりそうにも見えます。

しかし、自動車製造においては、工場建設やサプライチェーン、物流全体の再構築には莫大なコストと時間が発生します。さらに、関税がいつまで継続するか不透明なため、数年後に政策が変われば、米国に製造拠点を移したことが無駄な時間と経費のロスになる可能性も懸念されています。既存の稼働率や生産キャパシティ、人材確保の難しさなども考慮すると、企業は安易に投資を増やせない状況にあると言えるでしょう。

Next: 景気悪化のシグナル?業績と株価の動向まとめ

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