東京エレクトロンの今後の見通し:長期的な成長性は健在か?
足元の状況だけを見ると不安になるかもしれませんが、東京エレクトロンがこのままずるずるとダメになるわけではないと考えています。
- 業界全体のトレンドであり、シェアの低下ではない
- 半導体市場の長期的な拡大
- 地政学リスクと生産拠点シフト
- 技術トレンドへの対応
- 次世代AI半導体の再需要
今回の下方修正は、東京エレクトロンが幅広い半導体製造装置を扱うがゆえに、業界全体のネガティブな動向の影響を受けているに過ぎません。同社が業界内でのシェアを奪われたわけではない点が重要なポイントです。
半導体市場は、2030年頃までに現在の約2倍弱まで拡大すると予測されています。東京エレクトロンは、その中で非常に重要な半導体製造装置をグローバルな半導体メーカーに提供しており、製品ラインナップも非常に広いため、半導体市場の拡大に伴い、いずれはプラスの恩恵を受ける時が来ると予測されます。
中国向け需要の縮小は懸念材料ではあるものの、中国がダメになれば、半導体の製造拠点はそれ以外の地域に移転する動きが中長期的に出てくるでしょう。市場全体の拡大という事実が変わらない限り、需要地が変わるだけで、半導体製造装置市場は中長期では拡大していくと考えるのが自然です。
半導体製造プロセスにおける「後工程(パッケージング)」技術への移行が東京エレクトロンの業績に影響を与える可能性も指摘されていますが、技術のトレンドがどちらに転んだとしても、東京エレクトロンの半導体製造装置は不可欠な存在であり続けると考えられています。
昨今開発されている様々なAI関連サービスを考えると、次世代AIサーバー向けの高性能AI半導体の需要が再び勃興すれば、東京エレクトロンの業績に大きなプラスの上振れ余地がある点は変わっていません。
短中期と中長期、どちらの視点で見るか
以上の点を踏まえると、短中期的な目線で見た場合、業績が悪化する可能性は高まっていると言えます。しかし、中長期的な目線で見れば、東京エレクトロンはまだまだ成長していく可能性を秘めていると考えられます。

東京エレクトロン<8035> 月足(SBI証券提供)
半導体関連銘柄は、景気変動リスクに大きく業績や株価が左右される特性があります。また、今回は同じ半導体関連企業の中でも業績に明暗が分かれるなど、複雑な側面もあります。
安易な考えで投資をしてしまうと、目先の業績や株価の変動に動揺しがちです。そのため、東京エレクトロンのような景気変動リスクや株価変動リスクが大きい企業に投資する際は、企業のことをしっかりと理解し、ご自身の投資スタンスと照らし合わせたうえで、投資判断を慎重に検討することが求められます。