2025年8月5日に発表された、フォースタートアップス株式会社2026年3月期第1四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
エグゼクティブサマリー
志水雄一郎氏:フォースタートアップス株式会社代表取締役社長の志水です。ただいまより、2026年3月期第1四半期の決算説明会を開催します。
エグゼクティブサマリーです。過去最高の四半期業績を達成し、増収・大幅増益となりました。連結売上高は11億1,600万円で、前年同期比28.9パーセント増、連結営業利益は2億1,200万円で、前年同期比168.8パーセント増と大きく成長しました。
連結受注高は13億5,600万円で、前年同期比18.6パーセント増となりました。
また、主力のヒューマンキャピタル事業のみで、四半期の売上高および受注高がともに初めて10億円を超えました。今後につながる大変重要な成果だと考えています。
開示セグメントの変更(7/17 適示開示済み)

今回、開示セグメントを変更しました。従来は、タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業とベンチャーキャピタル事業という2つのセグメントを開示していましたが、今後はヒューマンキャピタル事業、オープンイノベーション事業、ベンチャーキャピタル事業という3つのセグメントで開示していきます。
昨年、オープンイノベーション事業が黒字化し、さらに成長していく見通しが立ったことが大きな要因です。そのような中で、私たちの事業成長をみなさまにしっかりとご理解いただくためにも、管理体制を見直し、新しいセグメント区分に変更しました。
連結決算サマリー

2026年3月期第1四半期の連結業績についてご説明します。売上高と各段階利益は通期予想進捗率25パーセントを上回る水準となっています。非常によいスタートを切れたと思っています。
営業利益増減

営業利益の増減分析についてです。今回、ヒューマンキャピタル事業が好調に推移したことで、全体の利益率が改善しました。この事業は非常に高い粗利率を持つため、成功報酬型の人材紹介サービスやコンサルティングサービスがしっかりと伸びることが、当社の利益を生み出す源泉となっています。
その他販管費に関しては、前期まではオフィス移転に伴う一時費用が非常に大きく発生していましたが、今年度はその費用が発生しないことにより、当期の費用増加分を打ち消しています。このような点から、当期はしっかりと利益を出せる1年になると考えています。
連結売上高

グループ全体の連結売上高についてです。四半期の売上高は、前年同期比プラス28.9パーセントの成長を遂げ、11億1,600万円で着地しました。
各事業別に見ていきます。ヒューマンキャピタル事業は、前年同期比プラス24.7パーセントの成長を記録しています。前期第4四半期に受注が後半にかけて回復してきたこと、ならびに4月以降の受注が好調に推移していることが、この事業の売上高成長に寄与しています。
オープンイノベーション事業に関しては、前年同期比でプラス91.3パーセントという高い成長を示しています。この成長の要因としては、「Public Affairs」と「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」が非常によいスタートを切ったことが挙げられます。
連結受注高

受注高についてです。第1四半期は、13億5,600万円で着地し、前年同期比18.6パーセントの成長を記録しています。事業ごとに見ると、ヒューマンキャピタル事業では、前年同期比23.6パーセントの成長となりました。前期第4四半期の事業改革により、質を重視しすぎた事業運営から量を拡大する体制への方針転換を進めてきました。
後ほどお話ししますが、その成果が明確に数字に表れたと考えています。引き続き高い受注水準を示しているため、今期のヒューマンキャピタル事業の成長に非常に期待しています。
オープンイノベーション事業については、前年同期比1.1パーセントの成長となりました。内容を詳しく分析すると、前向きな成長であることが確認できるため、この点については後ほどご説明します。
連結販管費の状況

連結の販管費の状況についてです。2024年3月期および2025年3月期の2期については、オフィス移転に関わる経費の増加などにより販管費が増加したため、ボラティリティのある期間だったと考えています。
今期については、通常年度としてコストコントロールを行いながら、戦略的に販管費を活用する方針です。先ほどもお話ししましたが、確実に利益を出せる1年になると認識しています。
通期業績予想は変更なし

そのような中で、通期の業績予想については、現時点では変更しない方針です。受注が非常に好調に推移しており、第2四半期の売上高につながり、さらに7月以降の数字は第3四半期の売上高につながると考えています。この数字の状況を見ながら、今後の業績予想をお話しできればと考えています。
ヒューマンキャピタル事業|売上高推移

セグメント別の状況についてです。主力であるヒューマンキャピタル事業についてご説明します。
売上高の推移について、前年同期比プラス24.7パーセントの成長となりました。また、ヒューマンキャピタル事業単体で初めて売上高が10億円を超えました。前期第4四半期に行った事業改善や、質から量への意識転換が、結果的に質を維持したまま量が拡大することへつながり受注高を押し上げ、売上高の向上につながっています。
ヒューマンキャピタル事業|人材紹介サービス売上高構成-単価・入社数推移

その売上高を構成する要素の1つに、成功報酬型の人材紹介があります。こちらの単価と入社数の推移についてご説明します。
初めて200名を超える239名の入社数となりました。その中で、単価については維持もしくは下がると予想していましたが、結果として逆に単価が引き上がりました。
件数の拡大と単価の向上が相まって、ヒューマンキャピタル事業の売上高を大きく構成する状況となっています。
ヒューマンキャピタル事業|受注高推移

受注高の推移です。前年同期比でプラス23.6パーセントの成長を果たし、初めて事業単体で四半期受注高が10億円を超えました。やはり、この数字を牽引しているのは量です。KPIを引き上げたことが、この受注高につながっていると考えています。
営業面での取り組みとしては、求人企業からの高年収オファー、重要ポジションの手数料率の引き上げなどの努力があり、結果として当社の受注高増加に寄与していると考えています。
ヒューマンキャピタル事業|主要KPI推移(単体)

先ほどから、質から量への転換についてお話ししていますが、新規求職者の面談数は、前年同期比で83.7パーセント増加しており、これが結果的に大きく受注高に寄与しました。
ただし、面談を行った方々の中で次につながる、すなわち企業と実際に中途面接を実施したユニークユーザー数を見ると、前年同期比でプラス22.9パーセントの成長にとどまっているのも事実です。これは、ある意味で今後の圧倒的な成長余地であると考えています。
この点に関する取り組みとしては、求人企業向けの活動です。魅力的な求人案件を増加させることで、安定して漏れなく上積みされる体制を図れるのではないかと考えています。
ヒューマンキャピタル事業では、AI活用の専任人材を配置し、全社へのAI導入を推進しています。これにより、マッチングの工数削減などを進めていく方針です。
今回は10億円を超える数字となりましたが、現有メンバーでも現状の2倍の成果が可能ではないかと期待しています。今後もヒューマンキャピタル事業にご期待いただければと思います。
オープンイノベーション事業|売上高・受注高推移

オープンイノベーション事業についてです。スライドは売上高と受注高の推移で、左側が売上高、右側が受注高となります。売上高は前年より大きく伸び、受注高は微増となっています。
内容を詳しく見ていきます。「STARTUP DB」では、セールスチームの強化が功を奏し、売上高・受注高ともに前年同期比で大きく伸長しています。「STARTUP DB」は、社内予算で設定している目標を上振れした新たな設定に切り替えるほど、非常に好調な事業推移を見せています。
「Public Affairs」に関しては、期ズレの影響などがあるものの、事業単体で見ると年間受注予算をすでにクリアしている状況です。あとは、どのタイミングで売上に反映されるかが焦点となります。
オープンイノベーション事業|売上高と受注高の関係

オープンイノベーション事業に関しては、売上高と受注高の関係が他事業と少し異なります。例えば、第3四半期にカンファレンスの売上が計上されることや、第4四半期に「Public Affairs」の売上が計上されることなどがあり、オープンイノベーション事業の売上は下期に集中する傾向があります。
オープンイノベーション事業|Public Affairs

オープンイノベーション事業の各事業を見ていきます。「Public Affairs」についてです。現政権において、「地方創生×イノベーション」が1つの方針となっています。地域ごとにテーマが設定され、ディープテックのチームをどのように作るのか、ユニコーン企業をどのように生み出すのかが政策となっています。
こちらを推進するために、各自治体と連携しながらイノベーション施策の支援を行うことが、「Public Affairs」の現在の立ち位置です。
オープンイノベーション事業|STARTUP DB/カンファレンス

オープンイノベーション事業の「STARTUP DB」とカンファレンス事業についてです。
好調な「STARTUP DB」ですが、現在のデータ課金から、今後はソリューション課金などに移行すると考えています。オープンイノベーションの推進、ならびに「STARTUP DB」を活用したM&Aソリューションなど、今後、大いに期待できるプラットフォームへと進化していくのではないかと捉えています。
カンファレンス事業については、「GRIC2025」が11月に開催される予定であり、現在その準備に取りかかっている状況です。
ベンチャーキャピタル事業|投資状況

第3の事業であるベンチャーキャピタル事業の投資状況についてです。宇宙領域のスタートアップ企業である岩谷技研に新たに投資を行いました。同社は、気球旅行を提供する事業を展開しています。2025年6月末時点での合計投資先社数は10社となっています。
事業環境変化に伴う現時点のセグメント別業績影響

事業環境変化に伴う現時点のセグメント別業績への影響についてです。東証グロース市場の上場維持基準100億円への引き上げが決まりました。当然、当社もこの問題に直面している事業者ではありますが、この件に関してはむしろプラスの影響を受けていると考えています。
プレスタートアップやポストIPOスタートアップにおいても、事業成長を目的として、人材投資やM&Aロールアップを進める流れが加速しています。このように、いわゆるスタートアップや起業家・経営者が成長を目指して積極的に行動している状況であり、このようなニーズを当社が的確に捉えていると考えています。
当社では、スタートアップの資金調達市場が停滞している部分について、一部マイナスの影響もあると認識しています。しかし、当社はベンチャーキャピタルのみなさまからの市場情報を早期に把握するとともに、政府・官庁からの政策変更の影響を迅速にキャッチし、プレIPOのスタートアップだけでなく、ポストIPOのスタートアップの支援も展開しています。
また、これまでSaaSドメインでの支援を中核としていましたが、現在は資金調達マーケットの変化を受けて、ディープテックへの移行が進んでいます。この流れに対応し、ディープテックに向けた支援を拡大することで市場に最適化し、着実に成長を遂げています。
今回の業績では、売上高だけでなく、受注高にもその成果が反映されていることが見て取れるかと思います。このことから、当社が市場環境に適応しながら着実に成長していることをご理解いただけるのではないでしょうか。
中期経営方針-「成長産業支援プラットフォーム」構想

中期経営方針に基づく事業進捗についてです。当社は、「成長産業支援プラットフォーム」への移行構想を発表しています。イノベーションを生むのはいつの時代も人であり、私を含む当社のメンバー全員が、人の無限大の可能性を信じています。
この可能性を活用した事業創造、社会創造、未来創造を進めていくことが、スタートアップにとっても日本経済にとっても重要であると認識しています。
「どうやって、次のソニー、次のトヨタを日本から生み、イノベーションを起こしていくのか?」というテーマに基づき、私たちはこのプラットフォームの育成に取り組んでいきます。
重要なのは、その中核に位置するのが挑戦者やアントレプレナー、起業家、経営者であるということです。人が選択できる行動の中で最も美しい選択の1つは、挑戦だと考えます。挑戦している時の人の表情や姿勢は、他の人に勇気を与えます。
このような挑戦に対して、律速が生じない社会システムをどのように構築していくかに、当社は挑戦し続けたいと考えています。
(再掲) 中期経営方針|成長産業支援プラットフォーム化の実現に向けた取り組み

そのような中で、「成長産業支援プラットフォーム」を実現するために必要なことを3つ挙げています。1つ目は「質・量ともにNo.1のスタートアップHR」、2つ目は「スタートアップ支援メニューの拡大」、3つ目は「コーポレートアクションとしてのM&Aや共創事業創出による規模拡大」です。
この3つを展開することで、「成長産業支援プラットフォーム」を進化させたいと考えています。
成長産業支援プラットフォーム化の実現に向けた取り組みの状況

その進捗状況についてです。1つ目の「質・量ともにNo.1のスタートアップHR」を目指すにあたり、最も重要なポイントは量に注力することであり、今回はKPIを徹底的に改善しました。その結果、この部分においては非常によい成果につながっているものの、課題も存在すると考えています。
課題として挙げられるのは生産性の部分です。まだ大きく受注を伸ばす余地があると考えています。この点に関しては、AIの活用やマーケティング戦略の改善、さらに子会社を設立することやM&Aを推進していくことによって、事業拡張を進めることが可能であると認識しています。
2つ目の「スタートアップ支援メニューの拡大」では、スタートアップM&Aの仲介業に参入する決断をしたことが最も大きなポイントです。この分野でのパートナーとしてストライク社を選定しています。M&Aの実行については、当社の株主であり、資本業務提携先でもあるストライク社に依頼する予定です。
今後については自社での実行機能を構築していきたいと考えています。
3つ目の「コーポレートアクションとしてのM&Aや共創事業創出による規模拡大」の部分については、第1弾として、新設会社であるGOジョブ株式会社へのカーブアウト出資を展開しています。
今後も、新たな取り組みを私が中心となって進めており、引き続きイノベーティブかつクリエイティブな挑戦を発表していきたいと考えています。
共創事業として、新会社「GOジョブ」を持分法適用関連会社化

そのような中で、第1弾の共創事業として、GO株式会社内の新規事業「GOジョブ」をカーブアウトし、その事業に出資を行い、持分法適用関連子会社化を公表しました。
「GOジョブ」は、タクシードライバーの人材紹介や採用支援を行うプラットフォームです。今後は、トラックや物流の人材ビジネスにも新規展開を進めます。
さらに近い将来には、資格取得者向けのエッセンシャルワーカードメインにも事業を拡張し、日本社会の課題解決を図る国内プラットフォーマーとして、「GOジョブ」を成長させたいと考えています。
新規事業|M&A支援を開始

もう1つの新規事業として、スタートアップM&A仲介をストライク社とともに展開することを発表しました。
各ベンチャーキャピタルとの連携を行い、社内では「STARTUP DB」ならびにヒューマンキャピタル事業部が連携し、M&A推進を徹底的に行います。
今後、スタートアップM&A支援事業においては、M&A事業でNo.1の地位を確立するための取り組みを進めていきたいと考えています。
(再掲)中期財務方針|既存事業の業績目標

中期の財務方針および既存事業の業績目標についてです。既存事業の売上高は、成長率15パーセントから20パーセントの範囲を目標に設定し、利益率についても15パーセントから20パーセントの水準を目指すと発表していました。
現在の進捗としては、受注高が非常に好調に推移しており、今期2027年3月期の業績を1年前倒しして達成できる可能性があるほどの成長を遂げていると捉えています。
まずは、今回掲げている2026年3月期の売上高43億円、営業利益6億5,000万円をいかに上回れるかに挑戦していきたいと考えています。
新オフィス活用状況

2024年11月、当社は麻布台ヒルズ森JPタワー31階に新オフィスを移転しました。確かにコストはかかりましたが、経済合理性を確保しながら移転を実現しました。
こちらのオフィスに移ったことはよかったのかという点については、採用やイノベーションを起こす場として非常によい環境となっていると考えています。実際、内定後の承諾率も以前より向上し、現在は非常に良質な人材が当社の事業に参画する状況です。
今後の展開においても、新オフィスは重要な人材が参画する1つのキーポイントになったと考えています。引き続き、このオフィスを活用しながら成長していきたいと思います。
質疑応答:ヒューマンキャピタル事業とオープンイノベーション事業の現状および今後の戦略について
「利益進捗がよく、ガイダンスに対して進捗率が30パーセントを超えています。オープンイノベーション事業の売上高の季節性を考えると、利益はかなり上振れ可能性を秘めているものと思います。とはいえ、コストをかけて攻めることも想定しているのだろうと推察されますが、今後どのようにコストを投下していくことをお考えでしょうか?」というご質問です。
現在の状況を捉えると、それぞれの事業において状況が変わってくると考えています。具体的には、既存のヒューマンキャピタル事業において副社長の恒田を筆頭に、各メンバーが協力し、質を重視しすぎた事業運営から量的意識を強める事業運営への転換を図り、KPIを一気に引き上げる挑戦を行いました。それにより、今回の大きな利益水準へとつながり、受注増加、売上高増加、そして利益向上が実現しています。
この事業においては、まだまだ生産性の向上が可能であると考えており、AI活用やマーケティング強化などにコスト投下を行う方針です。
オープンイノベーションについてです。先ほどもお話ししましたように、「STARTUP DB」と「Public Affairs」の2つの事業が非常に好調に推移しています。確かに、下期に売上高が偏重するモデルではありますが、この2つの事業が好調であれば、さらに利益が生まれるというのは、みなさまの予測どおりだと思います。
来期以降もより高い成長を果たすために、引き続き最適な投資を行っていきたいと考えています。ただし、現時点で「テレビCMを打つ」というような大きな施策を打つ計画はありません。
引き続き、自分たちの戦略を最適に実行するために必要なものに対して投資を行う方針です。また、社員に大変がんばっていただいているので、ぜひ給与に反映できるよう努めたいと考えています。
質疑応答:自社でのM&A体制構築とストライク社との連携について
「新規事業として、ストライク社とのスタートアップM&A支援に取り組むことは、とても有意義だと思いますが、自社でM&A支援を行うという選択肢はなかったのでしょうか?」というご質問です。
先ほどもお話ししましたが、いずれは自分たちでノウハウやナレッジを蓄積し、エグゼキューションチームを編制して、自社でM&Aを行える体制を整えていきたいと考えています。ただし最初は、資本業務提携を行っている、先輩企業であるストライク社から学び、エグゼキューションをストライク社にお任せしたいと考えています。
自社でエグゼキューションチームを構築したとしても、当社が目指すのはスタートアップドメインへの特化です。そのため、例えば「スタートアップが中小企業を買収します」のような案件については、ストライク社との連携がなければ実現できないと考えています。
したがって、このような取り組みを確実に実行できる体制を整備していく努力を、当社としても続けたいと思います。
質疑応答:「GOジョブ」事業の背景と成長可能性について
「GOジョブ社への出資について、持分法適用関連会社とするまでに関与度を高めた理由は何かありますか? また、『共創事業』と志水社長が呼んでいる意味合いを再度理解したく、どのようなイメージを持っておけばよいでしょうか?」というご質問です。
もともと、タクシー配車アプリ「GO」を展開するGO社とは、非常に強い関係性を持っています。GO社の成長に必要な経営人材・事業人材を、私たちは100名以上ご紹介してきた歴史があります。
そのような背景から、GO社の中島社長と私は、1年以上前からこのプロジェクトを推進する準備を進めてきました。そして、現在、市場において重要な転機が訪れていると感じています。
その転機とは、生成AIの誕生です。これにより、ホワイトカラーの方々が削減される可能性が非常に高まっていると考えられます。実際にアメリカでは、大型テック企業やコンサルティングファームのリストラなどの動きが発表されています。
そのような流れは、いずれ日本にも到来すると思います。その中で、日本で人手不足が生じている部分として、ドライバー不足であるエッセンシャルワーカードメインや建設ドメインなどが挙げられると捉えています。
資格を取得しているエッセンシャルワーカーの分野に、ホワイトカラー職でリストラされた方々が移行してくるといった社会構造の変化に対し、今後、政府も注目していくという情報を得ています。このような状況において、「GOジョブ」には非常に大きな可能性があると考えています。
当社は、ハイブリッドキャピタルとして、人材と資金の投資を行い、スタートアップのバリューアップに貢献してきました。その代表的なモデルが共創事業であると考えています。
事業や売上を共に創出し、そのようなモデルを今後展開していければと思っており、その第1弾としてGO社とともに「GOジョブ」を手がけることは、大変よい機会だと考えています。
この事業は今後、IPOやM&Aなどさまざまな事業展開を検討できる可能性がある事業だと捉えています。そのため、当社としても、この事業を支えることで大きなメリットを得られるものと考えており、私自身もコミットしていきたいと考えています。
質疑応答:M&Aや事業アライアンスの取り組みについて
「資本政策について、おうかがいさせてください。御社自身のM&Aについての進捗、狙いについて、補足していただけると、うれしいです。当面は、今回お示しいただいた持分法化や、大株主との連携した新規事業などに注力するということでしょうか? それとは別に、御社自身のM&Aを並行して狙っていくと理解してよろしいでしょうか?」というご質問です。
今、両利きの経営を進めるという方針のもと、副社長の恒田が既存事業を担当し、私は社長として新規事業への取り組みや、コーポレートアクションとしてのM&Aを含めた事業アライアンスの推進に全力を注いでいます。そのような中で、さまざまなM&Aのあり方を模索し、進展させている段階にあります。
現在、私は新経済連盟の幹事を務め、副社長の恒田は経済同友会の幹事を務めています。これまでは、スタートアップ業界の経営者や投資家のみなさまとお会いすることが中心でしたが、現在では、社長、副社長が日本の経済の中核を担う大企業や外資系IT関連企業のみなさまなどとも多数お会いしています。
このようなみなさまと共創事業を構築し、スタートアップの買い手となることで、企業が積極的に活動するきっかけにつながる、人間関係や企業間の関係が形成されつつあります。
現在、さまざまな並行的な案件を抱えていますが、それらをみなさまに発信できるよう準備を進めていきます。
質疑応答:スタートアップ資金調達市場の現状とグロース市場での基準改革について
「グロース市場の100億円基準やスタートアップ資金調達市場の伸び悩みという、一見ネガティブな市況感で、御社の売上・利益が市場の予想以上に成長しているのは、ポジティブなサプライズでした。あらためて志水社長から、足元のスタートアップ市況感について解説いただきたいです」というご質問です。
スタートアップの資金調達市場についてお話しします。確かに、資金調達の伸びは鈍化しており、年間1兆円前後で推移していると捉えています。ただし、市場では資金調達環境を改善するための動きが少し見られます。
例えば、メガバンクが直投資を行うためのチームを事業会社として組成し、セカンダリ市場などで大型の資金提供を進めようとしています。メガバンクが動けば、次は地方銀行が動き、さらに地方銀行の動きに続いてメーカーや商社など、日本経済の中核を担う企業チームが動き始める、そのようなタイミングに来ているのではないかと考えています。このように、民間でも動きが活発化している状況です。
SaaSの分野は厳しい状況が続きそうですが、ディープテック分野について、データを見ると、「Grant」が前年よりも大きく伸びています。このような政府からの資金提供がディープテック分野においては今後大きく寄与すると考えています。
このような環境を活用しながら、スタートアップ支援を継続することが、当社の目指す方向性であると考えています。
グロース市場における100億円の基準改革について、M&Aやセカンダリが大幅に増加していくと考えています。直近の事例としては、「みずほ銀行×UPSIDER」「ビジョナル×Thinkings」のような大企業とスタートアップによるM&A、スイングバイIPOを目指すM&Aが広がっています。
私たちの投資先でも、ナレッジワーク社がスタートアップをM&Aするなど、スタートアップが買い手となるケースも増加すると見ています。この動きをしっかりと捉え、「スタートアップHRならフォースタ」といったこれまで築いてきたブランドに加え、次の「スタートアップM&Aならフォースタ」と呼ばれるようなマーケットを作ることで、この市場をさらに進められると考えています。
今現在についてはポジティブに捉えており、今後も成長を支援できればと考えています。
質疑応答:AI活用による効率化とヒューマンキャピタル事業への影響について
「過去最高の四半期業績、ありがとうございます。『成長産業支援プラットフォーム』構想にも期待しています。今後の成長に向けて、AI活用の専任人材を設置し、AI活用によるマッチング工数の削減に取り組まれるということでした。
具体的には、何パーセント程度の工数削減が可能なのか、また、その他の今後のAI活用による生産性向上の取り組みについてご教示ください」というご質問です。
AIの活用について、ヒューマンキャピタル事業ではスカウト文面の作成などにAIを導入しています。「STARTUP DB」にもAIを取り入れ、企業がオープンイノベーションなどでマッチングを行う際の情報取得を支援し、最適なマッチングを実現する仕組みを提供しています。
さらに、AIの適用範囲を広げることで、生産性をどの程度向上させられるのかという具体的な数値について、この場では開示しませんが、ヒューマンキャピタル事業では現在の倍程度の成果が期待できるのではないかと考えています。
月次の決定数ついて、四半期の決定人数は239名でしたので、これを月当たり100名を超える状況に持っていきたいですし、実現できるのではないかと考えています。そのさらに先を目指していきます。
質疑応答:1人当たり決定件数の生産性改善について
「すばらしい決算内容および意気込みが伝わるご説明をありがとうございました。新規求職者面談数と面接、ユニークユーザー数のギャップが大きな伸びしろということで期待しています。
生産性改善について、月次ベースなどで改善が見られているのでしょうか? AI活用などの効果が期待できる時期について、今期中に期待できるのか、来期以降なのか、おうかがいさせてください」というご質問です。
1人当たりの決定件数については、まだ改善の途上にある状況です。生産性が高かった時期も過去にはあり、その水準に戻すだけでも、非常に高い業績を実現できると考えています。
生産性の改善については、月次ベースでも少し改善が見られているのは事実ですが、さらに倍程度生産性を向上できるところまでなんとか持っていきたいと考えています。時期に関しては、またみなさまと共有できればと思っています。
質疑応答:生産性向上と人材投資のバランスについて
「生産性向上に目処がついた場合には、採用による人材投資を加速するとありますが、すでに生産性向上は実現し始めていると思います。どの程度の向上が実現した場合でしょうか?」というご質問です。
これも先ほどお話しした内容と関連しています。1人当たりの決定件数については、まだ改善の途中にあり、さらなる改善の余地が大きく残されています。そのため、生産性を向上させつつ、人材投資をどのように進めるかというバランスが重要です。
来期以降の成長を見据えながら、人材採用に対しても積極的に投資を行うフェーズに入ったと考えています。
また、受注高を見極めながら採用数を適切に調整し、よりよい人材をより多く採用する方針です。そのような状況を受けて、採用活動を加速していきたいと考えています。
採用において一番重要なのは、量を確保するというよりも、質的向上を図ることです。また、優秀な人材を採用できているのが現状だと考えています。
志水氏からのご挨拶
みなさまから、たくさんのご質問をいただき、誠にありがとうございます。第1四半期は、よいスタートを切ることができました。第1四半期の受注高が非常に堅調に推移したことで、第2四半期もよい売上高を示せるものと考えています。
最も重要なのは、この第2四半期において受注高をどれだけ引き上げられるかです。そして、これは既存の話だけにとどまりますので、ここに未来へつながる良質なコーポレートアクションをどのように作っていけるかが非常に重要だと思います。
全社一丸となり、グループ全体で当社の成長に全力で邁進していきます。引き続き、応援とご支援をよろしくお願いします。本日は、ありがとうございました。
