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株価低迷「キッコーマン」いまが買い時?長期投資家が注視すべき下落要因と日本食ブームの行方=元村浩之

<追い風となる外部環境:日本食人気の高まり>

さらに、キッコーマンの北米市場には複数の追い風が吹いています。

1. 健康志向と植物ベースの食事の普及
コロナ禍で食のトレンドが変化し、肥満傾向に陥った人が増えたことから、食文化の見直しが加速しています。ヘルシーな日本食(豆腐、味噌、醤油など大豆を使った調味料)への需要が高まっています。また、ベジタリアンやビーガンといった植物ベースの食事を選ぶ人々が増加しており、彼らは特に醤油のような調味料を好む傾向にあります。

2. インバウンドによる日本食人気の加速
昨今の円安傾向により、日本を訪れる外国人観光客が急増しています。日本で本物の日本食を味わった人々が、帰国後も日本食を食べたいと願うことで、日本食人気が加速しています。これは戦後、米国駐留兵が日本の食文化に触れて帰国後も醤油を求めた状況と酷似しており、歴史的な潮流が繰り返されています。

3. Z世代とSNSによる拡散
現代はSNSが発展しており、特にZ世代からの和食への関心が高いことが挙げられます。彼らはSNSを積極的に利用し、多様な文化を柔軟に受け入れる世代であるため、SNSを通じて日本食文化の人気が急速に拡散しています。

 

これらの複合的な要因により、米国では醤油市場全体に大きな追い風が吹いている状況です。
実際、リサーチ会社も2030年頃まで、世界の醤油市場が年平均5%弱で拡大すると予測しており、その中でも特に北米での成長傾向が高いと分析しています。食生活の変化(ビーガン、植物性食品)、日本食の普及、健康志向の高まりなどが成長に寄与するとされています。

投資判断:長期的な視点で逆風を乗り越える

現在のキッコーマンは、確かにコスト上昇、値上げ効果の一巡、為替の悪影響といった逆風に直面し、一時的な踊り場を迎えています。しかし、米国での盤石なポジショニングと日本食ブームの恩恵を考えれば、キッコーマンは再び成長軌道に乗る可能性が高いと言えるでしょう。

キッコーマンは過去にも、オイルショック時に原材料費や物流費の高騰に直面し、値上げが追いつかず赤字化した時期がありました。しかし、その際も「いずれ市場が値上げを許容してくれる時が来れば取り戻せる」と、動じることなく長期的な視点で構えていた経緯があります。

現在の状況も、ある意味でキッコーマンにとっては対処しようのない外部要因による逆風であり、会社の本質的な強さとは関係ないものです。時間が経てば、再び値上げが許容される状況や外部環境の変化により、成長軌道に乗せることができるはずです。このような会社の場合、長い目で見てあげることが重要です。

北米以外の新市場(欧州、アジア、新市場など)の開拓については、まだ不透明な部分もあります。しかし、欧州では日本食ブームに乗って日本食レストランが増加しており、キッコーマンはその恩恵を受けていると見られます。キッコーマンは、北米開拓で培ったように、現地レシピの開発、店頭での試食デモンストレーションといった地道な活動を愚直に継続することで、時間をかけて市場に浸透させていくことでしょう。

キッコーマン<2801> 週足(SBI証券提供)

キッコーマン<2801> 週足(SBI証券提供)

まとめ:再び安定成長への期待

足元のPERは一時36倍程度あったものが、現在20倍程度まで下がっています。しかし、キッコーマンが再び安定成長軌道に乗れば、その安定成長性が再評価され、PER水準が30倍程度まで戻る可能性も十分にあると私は分析しています。そのスピード感は不確かですが、可能性は十分に秘めていると言えるでしょう。

キッコーマンへの投資を検討されている方は、目先の株価変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点と、同社の持つ本質的な強み、そして日本食ブームという外部環境の追い風を総合的に判断することが重要です。


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【関連】なぜバフェットは「守り」に入る?現在の株価は高すぎ?長期投資家が注視すべき市場のシグナル=栫井駿介

image by: BalkansCat / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月2日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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