今後の展望と投資判断
<短期的なリスク要因>
短期的に見ると、シマノにはいくつかの逆風が続く可能性があります。
- 中国市場の景況感の減速
- 設備投資増強後の稼働率低下
- 北米景況感の不透明性
底が見えず、大幅な下方修正につながるほどのインパクトがあります。
固定費の負担が重く、利益への圧迫が続きます。
ハイエンドなE-バイク(高額製品)の主要市場である北米の景況感が悪化すれば、販売動向が鈍る可能性があります。
<中長期的な成長トレンドとライバルの存在>
中長期では、悲観的になる必要はありません。
世界的な自転車市場は、年率5%から7~8%程度で成長が予測されています。特に、アジアの経済発展に伴う電動自転車の普及や、先進国での健康志向の高まり、政府による環境に優しい交通手段(CO2を排出しない)としての推奨(特に欧州)など、長期的な追い風は吹き続けるでしょう。
シマノは、この成長トレンドの中、足回り部品で世界シェア8割の地位を維持できれば、その恩恵を享受できます。
しかし、E-バイク市場では、モーターやソフトウェア制御に強い欧州企業ボッシュ(Bosch)が主要メーカーとなりつつあり、新たなライバルとして存在感を高めています。シマノは、E-バイクになっても「足回り一式をシマノで」というポジションを維持するために、今後も技術力と設備投資による競争を続けていく必要があります。
<投資の可能性>
現在、下方修正によりPERは46.6倍に高まっています。過去の傾向(30倍前後で落ち着いていた)から見ても、株価は下がったものの、現時点での割安感はまだないという印象です。多くの投資家は将来的な業績回復を見込んでいると推測されます。
投資対象として検討する場合、外部環境(中国の不透明感、為替の悪影響)のリスクが払拭されるタイミングや、E-バイクのようなハイエンド品が動きやすい欧州の成長がさらに加速するタイミングなどをじっくりと伺うスタンスが望ましいでしょう。
シマノは財務状況が健全であり、冷間鍛造技術など高い技術力を持つ日本が誇る企業です。長期的な視点で応援し、投資を検討する価値のある企業であると言えます。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月24日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。