中国市場依存と「ファブ持ち」ビジネスモデルの脆さ
<世界の工場・中国での低迷が直撃>
地域別売上を見ると、日本はそれほど落ち込んでいませんが、その他の地域、特に中華圏(中国を中心とした地域)が大きく低迷しています。
オムロンのデータブックを確認すると、中国における制御機器事業と電子部品事業の業績悪化が明確になっています。つまり、「世界の工場」である中国で設備投資があまり行われていないことが、オムロンの主力事業に大きな影響を与えているのです。
なお、日本国内では、社会システム事業やデータソリューション事業、ヘルスケア事業などが比較的健闘して推移しているため、国内でのダメージは大きくありません。
<利益が極端に落ち込む構造的な理由>
オムロンの利益がガタンと極端に落ち込む背景には、そのビジネスモデルがあります。
オムロンは、制御機器や電子部品を製造するための工場を国内や中国に自社で抱えています(ファブ持ち)。顧客企業が「設備投資を一旦控える」といった状況になると、自社工場の稼働率が下がってしまいます。稼働率が下がっても、工場を維持するための固定費は変わらないため、外部環境が悪化すると利益が極端にガタンと落ちてしまうという、外部環境の悪化に非常に弱いビジネス構造を展開しているのです。
競合他社との比較:なぜ三菱電機とキーエンスは健闘しているのか
このような状況は競合他社にも共通するのかを調べると、興味深い違いが見られました。
<健闘する三菱電機>
三菱電機は、オムロンほど業績が落ち込んでおらず、むしろ伸びています。これは、制御機器や電子部品関係の事業だけでなく、社会システム事業、電力システム事業、防衛宇宙システム事業、ビルシステム、空調関係の事業など、多岐にわたる事業が好調であるためです。
<急成長するキーエンス>
オムロンと同じく工場の自動化(FA)を進める企業であるキーエンスは、売上を大きく伸ばしています。
オムロンとキーエンスはFAの領域で競合しますが、得意な領域が少し異なります。
オムロンが得意とするのは制御機器であり、これはロボットや機械をどう動かすかを指示する装置、つまり機械内部の制御を担うものです。一方、キーエンスが得意とするのはFA機器で、工場での作業を自動化するための機械や装置を手掛けます。例えば、画像認識センサーによって不良品をピックして排除するなど、これまで人手が担っていた部分を機械がやってくれるソリューションを得意としています。
今、製造現場で言われているDXのトレンドは、どちらかというとFA機器を積極的に活用した工場の自動化へと向かっており、現場の「こういうのがあったらいいな」というニーズを満たす製品開発でキーエンスが一歩リードしている可能性があり、それが業績の差に現れていると考えられます。
さらに、キーエンスは基本的にファブレスであり、自社工場を持たず外部に製造を委託しています。そのため、オムロンのように顧客からの受注が減った際に、工場の稼働率低下によって利益が激減するリスクが低いという、ビジネスモデルの違いも、業績の振らされやすさに繋がっています。
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