ガバナンスと長期的な課題
<相次ぐ後継者の交代>
ニデックは、外部から優秀な人材を後継者候補として招き入れましたが、次々と交代(事実上の解任)させてきました。これは長森会長のワンマン体制と、気に入らない人間を切り捨てる姿勢を物語っています。
後継者として期待された人たち(呉氏、片山氏、吉本氏、関氏など)が次々と去った事実は、強力なトップダウンの下でガバナンスが機能していなかったことを示唆します。
<内部統制への投資不足>
M&Aで急成長してきた会社にとって、買収した会社をうまく経営し、内部統制を効かせるのは非常に困難です。
しかし、徹底したコスト削減文化の下では、直接的に売上に繋がらない内部統制システムの構築(お金や時間をかけること)への意識が希薄になっていた可能性が考えられます。ケチケチ経営を突き詰めた結果、ガバナンスがおろそかになったと言えるでしょう。
<ターンアラウンド(事業再生)の難しさ>
今後、ニデックが業績を立て直す場合、通常はコスト削減から入ります。しかし、ニデックは元々コストに極めて厳しい会社であるため、コスト削減の余地がほとんどありません(乾いた雑巾を絞るようなもの)。
今後利益を増やすためには、単なるコストではなく、付加価値を高め、収益性を上げる方向へと経営の概念を根本的に変えていく必要があります。そのためには、長森氏ではない、新しい考えを持った経営者による転換が不可欠です。
今後の展望と投資判断:今、株は買うべきか?
<上場廃止の可能性>
過去にはオリンパス(バブル期の損失隠蔽)や東芝(不正会計、債務超過)といった大手企業も上場廃止の危機に瀕しましたが、いずれもギリギリで踏みとどまりました。
今回のニデックの件について、私の意見としては、上場廃止の可能性は必ずしも高くないと考えています。監査法人が意見不表明としたのは、第三者委員会の結果が出ていないためという側面が強いと読み取れるからです。ただし、長森氏を含めた経営層ぐるみでの不正が確定した場合、リスクは高まります。
<結論:長期で見るとまだ買い時ではない>
株価は過去5年間で6割程度下落していますが、安くなったからといって、すぐに「買い時」とは判断できません。
前述の通り、調整後のPERで見ると、競合他社と比べて特に割安ではありません。上場廃止のリスクが残っていることに加え、長期的に見ても、経営の構造的な問題を解決し、収益性を高めるための経営転換が見えない限り、投資するには時期尚早です。
最終的な第三者委員会の結果や、その後の抜本的な経営改善策が示されるまでは、今はニデック株に触らない方が良いというのが、現時点での結論です。
不正会計や不祥事を見抜くことは難しいですが、今回のように業績の安定性やキャッシュフローの推移が他の優良企業と比較していびつでないかを確認することは、投資判断の大きな助けとなります。
長期投資に興味のある方は、ぜひこの機会に、企業の「筋の良さ」についても改めて考えてみてください。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年11月6日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。