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「完全失業率3%未満の日本」という幻。政府の嘘とカラクリを暴け=三橋貴明

「緊縮財政」と「構造改革の正当化」が日本を滅ぼす

不思議なことに、日本では構造改革や緊縮財政が推進された際に、何らかの理由により「一見、好景気に見える」という状況が訪れます。それ故に、構造改革が正当化され、実際にはデフレの長期化を招いてしまうのです。

小泉政権期、かつてないほどに猛烈に構造改革が推進された時代、アメリカではサブプライムローンの流行などで不動産バブルが起きていました。

アメリカの家計は、本来はローンを組めない所得水準の人々までもが住宅を購入し、住宅価格が値上がりすると、価格上昇分のお金をさらに借り入れ(ホーム・エクイティ・ローン)、消費に回しました。結果的に、世界経済はアメリカのバブルと消費拡大の恩恵で、活況を呈しました。

日本にしても、実質輸出が1.5倍に拡大する状況になり、反対側で小泉政権がデフレを深刻化させる公共投資削減と、構造改革をバリバリと推進したにも関わらず、悪影響が目立ちませんでした。当時、アメリカの不動産バブルという「特需」がなかった場合、公共投資削減を中心とする緊縮財政で経済が極端に悪化し、構造改革は頓挫せざるを得なかったのではないかと思うのです。

2012年末に第二次安倍政権が発足し、異次元の金融緩和が始まりました。金融市場で投機的需要が拡大し、円安が進行。円安になれば、外国人株主が日本株を買うというわけで、日経平均は上昇していきました。結果的に、何となく「アベノミクスが上手くいっている」という印象が広まり、国民の実質賃金が下がり続けているにも関わらず、財務省主導の緊縮財政が橋本政権、小泉政権を上回る勢いで推進されました。

同時に、TPP(頓挫はしましたが)、国家戦略特区、派遣法改正、農協法改正、電力自由化、発送電分離、外国移民受入、患者申出療養(混合診療)開始、ガス自由化といった構造改革が強行されます。さらには、上下水道民営化、公共インフラのコンセッションによる売却、種子法廃止と続き、安倍政権の「日本の国の形をぶち壊す」構造改革は、とどまるところを知りません。

そして今、緊縮財政と構造改革というデフレ化政策が進んだにも関わらず、少子高齢化に端を発する生産年齢人口比率の低下により、失業率が改善していっています。今度は、株価ではなく、失業率の改善が緊縮財政や構造改革の目くらましに使われるのでしょう。

「失業率が改善している。日本経済はもはやデフレではないため、財政拡大は必要ない」「アベノミクスの効果で、人手不足が深刻化している。生産性向上のための『規制緩和』が必要だ」といったレトリックが、政治家やエコノミストなどにより繰り返されることになると思います。

とはいえ産業別に見ると、日本で伸びている雇用は、ほとんど「介護」だけなのです。なぜ、アベノミクスや金融緩和の効果で「介護分野の需要が増えた」のか、誰も説明しません。真実は、単に少子化により若者の労働市場への参加が減り(母数が減っている以上、当たり前です)、高齢化で介護の需要が増えた。ただ、それだけの話です。

金融緩和により雇用が改善した」といった説が広まってしまうと、「ならば、財政出動はいらないね」という話になるに決まっているのが、我が国の言論スタンダードなのでございます。

現在の日本政府に求められるのは、公共インフラの整備や技術投資の拡大により、社会全体で生産性向上をもたらすことです。レントシーカーに「ビジネス」を提供する規制緩和ではありません。インフラ整備や技術投資は、「現在の需要不足(デフレ)を終わらせ、将来の生産性向上をもたらす」というわけで、まさに現在の日本にふさわしい一石二鳥の政策なのです。

ところが、「失業率が下がっている」といった目くらましにより、インフラ整備や技術投資の予算は「カット」され(されています)、日本の国力を衰退させると同時に、一部のレントシーカーに所得をもたらす規制緩和、自由貿易といった構造改革が行われるのが日本国なのです。

このままでは我が国は、インフラ後進国、技術後進国と化し、外資系を含むレントシーカーたちに食い荒らされ、中長期的に衰退していくことになるでしょう。何とかしなければなりませんが、何とかなるのでしょうか。分かりませんが、とりあえず足掻くことなしで、事態は改善しないでしょうから、足掻き続けることに致します。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年4月1日・3日号より

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