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カリスマ経営者・鈴木氏を追い出したセブン&アイが欧米勢に狙われるワケ=児島康孝

セブン&アイ・グループは、カリスマ経営者の鈴木敏文氏が去り「普通の企業」になりました。しかし今後、不採算店の閉店や人員削減など「欧米式の尺度」に引き込まれると、まともな経営は難しくなります。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

「日本流」の強みを失ったセブン&アイはこの先を生き残れるのか

欧米の脅威だったカリスマ経営者・鈴木敏文氏

欧米の投資家の間で、バブル崩壊後の日本を「つぶす」時期に名前が上がっていたのが「セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏」と「ロック・フィールド(RF1・神戸コロッケ・グリーングルメなど)の岩田弘三氏」であった。とにかく欧米勢は、この2人が気に入らなかったのだ。

なにか話題があると、2人の名前が出てきていた。なぜなら、欧米勢が欧米式の尺度で次々と日本企業をつぶし、または力を削ぐ中でも、この2人は独自の日本的なやり方で譲らなかったためだ。

2人に共通するのは、欧米の尺度以上に、日本的な現場の把握や試行錯誤を徹底していたこと。鈴木氏は「自らコンビニ弁当を食べていた」と伝えられているし、またロック・フィールドは、地元の人間でもあまり知らないような九州の奥地にも契約農家をもっていて驚かされる。このため、欧米勢に負けることなく、日本的なやり方で企業を発展させたわけだ。

カリスマの失脚で「普通の企業」になったセブン&アイ

このうちセブン&アイは、鈴木氏が去り、いわば普通の「欧米の尺度の企業」になったわけだ。不採算店は閉店するか、統廃合。利益が出なければ、人員削減でコストダウン。こうした普通の欧米の尺度に引き込まれると、セブン&アイは欧米勢に狙われることになる。

なぜならセブン&アイは、鈴木氏の現場の観察や把握力で、欧米の尺度を上回っていたからだ。欧米の尺度でコンビニを経営すると、NYなどにあるセブンイレブンのような感じになる。昔からの雑貨店を、少し綺麗にした感じ。つまり、コストや客が求めるレベルだけで最適化すると、アメリカのコンビニのようになるわけだ。それを鈴木氏は、現場の観察と試行錯誤で日本のセブンイレブンに仕上げ、完成させ、高収益を上げていた

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 日足(SBI証券提供)

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 日足(SBI証券提供)

鈴木氏がセブン&アイを追われる前に話していた、今後のセブンイレブンに対する危惧は本当なのだろう。数字では、好業績のセブンイレブンだが、鈴木氏の目には課題が見えていたわけだ。その課題を解決できないセブンイレブンのトップを交代させようとして、逆に鈴木氏側が失脚してしまったというわけだ。

セブンイレブンと、ローソンやファミリーマートを比べると、数字上はセブンイレブンが勝っている。しかし、どちらの店が繰り返し買えるか、日常の食事に替わるかなど、買い手の都合では必ずしもセブンイレブンが優れているわけではない。とくにコンビニ3店舗がすべて揃っている場所では、こうした比較が働く。

鈴木氏が去ったセブン&アイは、セブンイレブンの今後イトーヨーカ堂の立て直しそごう西武をどうするかなど、欧米の普通の尺度では厳しい経営に直面することになる。

おそらく欧米勢は、鈴木氏の退任に大喜びであっただろう。戦時中に例えれば、零戦(零式艦上戦闘機)の弱点を発見したようなものだ。

Next: なぜ日本は「構造改革」に騙されるのか?欧米勢の狙いとは

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