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株価上昇「TDK」今からでも買い?長期投資家が注視すべきリスクとAIブームの追い風=元村浩之

<1. センサーシステム:サーバーの効率化と保護>

TDKのセンサー事業は、前年同期比で大きく伸びており、その理由はICT市場および産業機器市場向けが好調であるためです。

TDKは、AIデータセンター向けにセンサーシステムソリューションを提供しています。その役割は、「サーバーを止めない、壊れない、効率よく動く」ようにすることです。

例えば、高熱を持つAIサーバーの温度管理のために、サーバー、冷却システム、電源部品などに温度センサーが必要とされます。また、データサーバーの電源ユニットで電流の流れを瞬時に検知し、効率化を図る超高速応答電流センサーも活用されています。

<2. 磁気応用製品:HDDとデータ保存の鍵>

磁気応用製品の分野、特にハードディスクドライブ(HDD)向けの製品も、AIデータセンター需要によって伸びています。

最新のデータセンターのデータ保管の約8割はHDDに保存されているとされています。その理由は、HDDが高い堅牢性、信頼性を備え、大容量のデータ保存が可能で、コストパフォーマンスに優れているためです。

AIデータセンターが建設されるほど、HDDの需要が高まっています。現在、AIデータセンター向けのHDDは供給が追いついておらず、購入に24ヶ月待ち(2年待ち)といった遅延が発生しているという記事も出ています。

TDKは、このHDDに使用される重要部品であるサスペンションや、記録を行うための磁気ヘッド、アームを制御するアクチュエーターなどを手掛けており、AIサーバーの需要増加の恩恵を間接的に受けている状況です。

TDKの未来:次世代技術への貢献

TDKは、現在のAIデータセンター需要に加え、将来の市場を創造する次世代技術にも注力しています。

<中型二次電池の可能性>

小型二次電池以外にも、中型二次電池が有望な分野として注目されています。小型二次電池よりも大きいこの製品は、産業用ロボットや無人搬送車といったファクトリーオートメーション(FA)関連機器、電動バイクなど、多様な用途での需要が高まっています。

さらに、AIデータセンターのバックアップ用バッテリーとしての活用も期待されています。データセンターは絶対に停止させてはならないため、停電時の緊急電源として大容量の中型二次電池が活躍する可能性があります。

<Hai端末と予知保全システム>

TDKは、AIエコシステム全体への貢献を考えており、中でもHai(Human-centric AI)端末に注力しています。

Hai端末は、工場などに組み込まれ、端末側でAI処理を行うことで価値提供を行います。例えば、工場の設備にセンサーを取り付け、温度や振動のデータを集積し、正常時と異常発生前の変化を比較することで、故障を事前に予測(予知保全)受動部品、センサー、二次電池の全てに需要増をもたらします。TDKはこの分野への注力として、ソフトウェア企業の買収なども行っているようです。

<ARグラスと次世代ウェアラブル>

さらに長期的な展望としては、スマートフォンに続く次世代のウェアラブル端末として注目されるARグラス(拡張現実グラス)への貢献です。

ARグラスは、現実世界にスマートフォンのような情報を重ねて映し出すデバイスであり、もしこれがスマートフォン並みに普及した場合、二次電池、センサー、受動部品の需要は当然爆発的に高まることが予想されます。

たとえARグラスの普及が遅れたとしても、ドローンなど様々な新しい電子デバイス機器の誕生は今後も続くと予想され、TDKはあらゆる形でその恩恵を受けることとなるでしょう。

Next: TDKは買いか?長期投資家が持つべき視点

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