■サンフロンティア不動産<8934>の業績動向
2. セグメント別の事業動向
(1) 不動産再生事業
不動産再生事業は、売上高39,327百万円(前年同期比76.0%増)、セグメント利益11,802百万円(同95.1%増)となった。物件販売が好調であり、大幅な増収増益を記録した。
リプランニング事業の販売件数は13件で、前年同期比で1件減少したが、販売規模が大きい物件や高収益の新築物件が含まれていたため、売上高・セグメント利益ともに大きく伸長した。国内外別に分類すると3分の2が国内、3分の1が国外という構成である。また、個人法人別に分類すると個人が3分の1、法人が3分の2という構成となる。なお、法人には個人の資産管理会社も含まれている。セグメント利益率についても30.0%と高水準を維持しており、売却物件のキャップレート(還元利回り)は中間期単体で3.57%、中間期累計で3.75%となっている。特殊要因として3%台の低いキャップレート案件があったものの、それを除けばおおむね4%程度で推移している。平均事業期間は867日で、前年通期比で84日の拡大となった。これは新築物件2件が含まれているため事業期間が長期化していることが要因である。新築物件2件を除いた平均事業期間は630日前後と、プロジェクトの回転率は引き続き良好である。事業期間にこだわった運営により、高い資本効率性を実現する方針だ。
賃貸ビル事業においても仕入れ進捗が良好で、前年同期に比べて賃貸関連費用が減少した結果、増収増益を実現した。また、契約済み未決済を含む仕入れ額は、中間期決算発表日時点で50,055百万円に達し、通期目標である55,000百万円に対し9割を超える進捗を既に示している。主な要因としては、前期中に契約済みであった物件の影響に加え、今期は大型物件の仕入が多いという点が挙げられる。大型物件ばかりではないものの、例年と比較して多い印象であるようだ。これらは中長期で取り組む物件であり、今期仕入れたものがすぐ販売されるわけではなく、来期以降を見据えた仕入れである。これを受けて、同社では通期の仕入目標額を70,000百万円に上方修正しており、仕入状況は非常に好調に推移していると弊社では考える。
(2) 不動産サービス事業
不動産サービス事業は、売上高8,359百万円(前年同期比40.4%増)、セグメント利益4,520百万円(同53.7%増)となった。各分野での受託・利用拡大が進み、通期予想に対しても極めて順調に推移している。
プロパティマネジメント事業では、管理受託棟数が前期末比27棟増加したことで収益が拡大し、ビルメンテナンス事業においても、グループ内の連携を強化することで管理棟数を拡大し、いずれも増収増益となった。仲介事業に関して、売買仲介事業でグループ内紹介案件の成約増加や大型案件の取り扱いが進んだほか、賃貸仲介事業ではオフィス需要の回復が進むなかで、テレワークとのハイブリッドな働き方の浸透や、優秀な人財確保に向けた需要を捉え伸長した。加えて、上野支店を地域戦略の核として新設し、エリア連携を機動的に強化した。中期経営計画ではストック型事業の事業基盤の拡大を掲げていることから、東京都心を中心とした地域密着の支店網の増強が、今後一層進むのではないかと弊社では見ている。
貸会議室事業では、開業から1年未満の新規拠点が収益基盤として機能し始めたことに加えて、長期利用や大型案件の増加により増収増益を記録した。開業・増床による運営坪数増加が業績に寄与しており、さらなる拠点増に向けた取り組みも今後期待される。東京都内の貸会議室需要は検定試験や研修需要のほかにも、近年増加傾向にある会議室を持たない企業や、関連各社が集まる業界団体の研修向けの需要もあり、潜在需要によるポテンシャルは高い。また、滞納賃料保証事業では、新規契約及び再保証契約の件数が堅調に増加し増収増益となった。
(3) ホテル・観光事業
ホテル・観光事業は、売上高9,733百万円(前年同期比18.5%増)、セグメント利益2,291百万円(同14.3%増)となった。運営ホテル数が32棟3,649室に達し、事業規模の拡大と既存ホテルの堅調な運営が両立したことで増収増益となった。
ホテル開発事業では、下半期にホテル売却を予定しており、今期中の収益貢献が期待される。新規開業案件では、2025年9月に「たびのホテル加古川別府駅前」が、10月には「たびのホテル石狩」が当初計画通り開業した。さらに、来期以降の建設中・計画中ホテルが16棟2,534室と豊富なパイプラインを確保していることから、来期以降の業績寄与も大いに期待できる。今後も運営ホテルの客室数増加に向けて、M&Aや開発用地の取得を積極的に推進する方針である。
ホテル運営事業では、好調なインバウンド需要等に加え、オペレーション力の強化に努めたことで、稼働率と客室単価がともに上昇し、増収増益となった。客室単価については、関西エリア及びラグジュアリーホテルでの上昇が顕著であり、インバウンド需要に加え大阪・関西万博による効果も業績を押し上げる要因となった。
(4) その他
その他の事業は、売上高1,600百万円(前年同期比67.9%増)、セグメント利益408百万円(同79.4%増)となった。
建設事業では、オフィス内装工事や通信ネットワーク関連工事などの受注件数が前年同期比で増加し、増収増益を達成した。また、海外開発事業では、2024年8月に着工したベトナム新規分譲マンションプロジェクト(第2号案件「HIYORI Aqua Tower」)が、2026年度下半期の竣工に向けて順調に進行している。加えて、ベトナムダナン市における3号物件に向けて、土地仕入の情報収集を同時進行で進めている。
3. 財務状況
2026年3月期中間期末の資産合計は、前期末比19,578百万円増の237,768百万円となった。リプランニング物件などの仕入やホテル開発案件の進捗により棚卸資産が12,755百万円増加した。また、ホテル開発の進捗により有形固定資産が4,252百万円増加した。
負債合計は前期末比16,039百万円増の128,337百万円となった。有利子負債に関しては、物件仕入れに伴う借入金の増加があった結果、同13,759百万円増の106,217百万円となった。1年内返済予定の長期借入金が2,027百万円減少した一方で、短期借入金が2,125百万円、長期借入金が13,662百万円増加した。
純資産合計は前期末比3,539百万円増の109,431百万円となった。配当金の支払い1,606百万円があった一方で、親会社株主に帰属する中間純利益8,993百万円の積み上げ等により増加した。自己資本比率は同1.0ポイント減の45.8%であり、積極投資を進めながらも高水準を維持している。財務健全性は総じて良好であり、現時点で顕在化した大きな懸念は見当たらない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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