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英フィナンシャル・タイムズが「日本撤退」を投資家に勧める理由

マイナス金利幅の拡大でゆうちょ銀の「貯金」が崩壊する?

フィナンシャル・タイムズの「7月末には、マイナス金利をマイナス0.1%からマイナス0.3%にまで拡大することを提議する可能性あり」という情報は、まだ日本では出ていないようです。

しかし、この情報のとおり、もし、金利がさらに引き下げられた場合、壊滅的な打撃を受けるのは、ゆうちょ銀行(郵便局)の定期貯金・定額貯金・財産形成貯金などです。

今年2月16日からの日銀のマイナス金利の導入を受けて、日本の3つのメガバンクが0.01%に金利を引き下げました。

郵便貯金の金利も、これに歩調を合わせるようにして3月14日から、1ヵ月から5年までの定期貯金の適用金利を、それまでの年0.025~0.03%から0.01%に引き下げました。

ゆうちょ銀行の「貯金」である(愛称)郵便貯金は、預金者が郵便局に預けている預金で国債を購入し、その金利で預金者に分配するというビジネスモデルで成り立っているため、マイナス金利が、さらに-0.3%まで拡大されると、それが崩壊してしまうのです。

日銀などの中央銀行が実施する量的金融緩和とは、政府が発行した国債を三井住友、みずほ、三菱東京UFJなどに代表される市中銀行が買い取り(このとき、財務省から電話が入って、国債の買い取枠、つまりノルマが通達される)、それを日銀に売ることによって実行されます。

日銀は、日本政府という信用の裏付けによって通貨を信用創造(新しい紙幣を印刷する)し、それを市中銀行から買い取った国債の代金に充てます。

その代金の一定額は、日銀の当座預金制度によって開設されている口座に当座預金(3階層に分かれている)として預けなければなりませんが、マイナス金利が導入された2月16日以降、預けられた資金についてはマイナスの金利がつくことになったのです。

預けておくだけで元本がマイナス金利によって減っていくわけですから、国債を買った市中銀行は、国債を日銀に売らずに市場で売買することによって利益を出そうとします。

どう利益を出すかというと、国債を買っている(あるいは、政府から国債を買わされている)すべての銀行が、こうしたマネーゲームに参加するようになるので、市場で売買される国債の値が吊り上がって、最初に国債を買った銀行などの金融機関は、値が吊り上がったところで売って差益を出そうとします。

すると、国債を買いたがる金融機関が殺到して国債の利回りが低下します。みんなが買いたがるので、資金の一時避難所と化した国債の利回りが、仮にゼロであっても買い手が付くからです。

その挙句が、現在のように2年から10年物の国債すべてがマイナスになってしまったのです。

国債の買い需要が沸騰してしまったので、市場メカニズムは、その熱を冷ますために自動的にマイナスの金利をつけてクールダウンさせようとしているのです。

こうなると、国債を持っていても損が出るし、かといって日銀に国債を売っても、当座預金として資金を預けたままにしておけば、元本はマイナス金利によって目減りしていくので、市中銀行は資産を減らしていくことになります。

そこで、市中銀行は国債に関わると損をするので、三菱東京UFJ銀行のように、政府から特別に国債を購入できる権利、つまり国債特別資格を返上するという事態が起きてくるのです。

もう、日本の金融当局は、民間銀行をコントロールできなくなりつつあるということです。

そうなると、買えば損するし、売っても損するので、政府は国債を発行しても、誰も引き受けないという事態が生じます。つまり、買ってくれる金融機関がないので財源を確保できなくなりつつあるのです。

こうなると国家予算を組むことができなくなってしまいます。それは、国の財政の破綻を意味します。それが、現在の状況です。

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