fbpx

ミセス・ミキタニの「楽天ポイント」意外な苦戦と天下取りの条件=岩田昭男

楽天経済圏からリアルな世界へ

楽天とO2Oの関係でいえば、ネットからリアルへという世界的な流れがあって、ヤフーはその先頭に立ってリアルの世界に出ていったのですが、楽天にとっては、リアルに出ていく必然性は実はあまりありませんでした。

楽天にはネットの中にたくさんの顧客がすでにいて、楽天系列の事業体で構成された楽天経済圏という閉じた世界の中で自己完結しています。わざわざリアルに出ていって冒険する必要はないと考える人も多いのです。

それでも楽天は外に出ていかなければ成長はないと考えたのでしょう(これは正しい判断だったと思いますが…)。

そう考えた一つの要因が、Tポイントの存在です。Tポイントの総帥である増田宗昭社長と楽天の三木谷社長は同じ関西生まれで、仲がよく、お互いを企業家として認め合っていました。ところが、楽天が楽天市場でDVDのレンタルを始めたことから、二人の関係に変化が生じました。DVDレンタルはツタヤの主力事業であったために、頭越しになったことが増田社長の癇に触ったようで、最後は仲たがいしてしまいます。

それを境に楽天側は、Tポイントをこのまま放っておいたらリアルの市場を根こそぎ奪われてしまうという危機感をもち、Tポイントに対抗するために新たな共通ポイントを立ち上げざるをえなかったという見方があります。

以上、感情的なこじれ、個人的な問題からの進出について述べました。他にもいくつか理由を指摘する向きもあります。もちろん、Tポイントとの関係はそのひとつにすぎないでしょう。実際には楽天もネットだけでは限界を感じており、リアルの豊穣な市場が欲しかったということが最大の理由でしょう。

しかし、実際にでてみると、リアルの壁は高く険しい、という現実に直面します。

共通ポイントの高く険しい壁

そもそもネット上だけの商売は比較的に楽なのです。会員だけを相手にして会員のセキュリティー管理さえしっかり行えばいいのですから、受け身の商売といえます。しかし、リアルが相手ではそうはいきません。リアルな店を相手にする共通ポイントの加盟店開拓は、ネット事業者にはかなり厳しい仕事だったといわざるをえません。

ネットのぬるま湯に浸かって仕事をしてきた社員にとっては、リアルへの挑戦は、地獄の戦いのようなものです。全く別世界の出来事と映ったのではないでしょうか。そこにTポイントの仕掛けた「一業種一社」の排他的ルールが効いています。ですから、どこに行っても良い話には少しもなりません。四面楚歌のような状態だったといえます。

楽天はビッグネームの企業を加盟店にしようとしたのですが、なかなか思うようにいきませんでした。そのため、共通ポイントを始めると一旦アナウンスしてから、実際にスタートするのに1年かかっています。

その間に一生懸命に有力加盟店を口説き落として格好をつけたのです。楽天は共通ポイントを開始することになりました。1年遅れでスタートした楽天ポイントの加盟店にはどんなところがあったかというと、たとえば大丸・松坂屋といったデパートにガソリンスタンドの出光、コンビニではサークルKサンクスでした。大丸や出光は大手ですが、あとは中堅、小ぶりな会社が多く、各業界のトップ企業を加盟店にすることは難しかったのです。

というのも、めぼしい企業はあらかたTポイントとポンタにとられてしまっており「1業種1社」ルールに阻まれ、有力企業を加盟店にすることがなかなかできなかったからです。

それでも、会員にいちばんなじみがあって利用頻度の高いコンビニのサークルKサンクスを取り込むことができました。ところが、今年の秋にはファミリーマートと統合するために、Tポイント陣営の一員になってしまうのです。そうなると自らが自由にできるコンビニがなくなり、楽天にとっては、これは不利な状況です。

Next: 「楽天カード」は好調でも、リアルでの楽天ポイントは逆風にさらされている

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー