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さらば発泡酒! 酒税改正に揺れるビール業界、生き残りの条件とは=栫井駿介

アサヒ、9,000億円の買収金額はまともな感覚ではない

しかし、巨額買収には大きなリスクが付きまといます。海外展開で先行していたキリンも、買収したブラジル事業の業績が振るわず、減損損失を計上したことにより昨年は上場以来初の最終赤字を計上しました。

キリンはブラジル事業を約3,000億円で買収しましたが、アサヒはそれを上回り、合計1.2兆円におよぶ巨額買収となりました。買収が失敗となれば、キリン以上の巨額の損失計上を迫れる可能性もあります。

特に、今月の買収案件は価格が大幅に釣り上がりました。売上高が約2,000億円の事業に9,000億円も支払うのは、まともな感覚ではありません

巨額買収と言えば、サントリーが2014年にウイスキーが中心のジン・ビーム社を約1.6兆円で買収しています。どの会社も国内市場の縮小を前に、リスクを冒してでも手を打っておきたいと考えているのでしょう。

幸い、アサヒはスーパードライという巨額なドル箱がありますから、財務に余裕があるうちに手を打てたのは良かったと言えます。余裕がなくなってからではどうしようもありません。

巨額買収をしてしまった以上、これまでのように国内市場に甘んじているわけにはいきません。銘柄としてはディフェンシブと見られがちなビール会社ですが、これからは買収の成否により、浮き沈みの激しい荒波に漕ぎ出すことになるでしょう。

サッポロは台風の目になるか

大きなリスクを取って海外に出ようとするビール会社の中で、台風の目となりそうなのがサッポロホールディングス<2501>です。海外売上比率は20%弱ありますが、巨額買収は行わず、地道な展開で自社ブランドを浸透させています。

サッポロホールディングス<2501> 日足(SBI証券提供)

サッポロホールディングス<2501> 日足(SBI証券提供)

サッポロと言えば「黒ラベル」はもちろんですが、プレミアムビールの先駆けとなった「ヱビス」を有しています。酒税統一で品質やブランドが優劣を左右すると考えられるビール市場において、頭一つ抜け出ていると言えるでしょう。

また、サッポロの経営を支えているのが「不動産事業」です。「恵比寿ガーデンプレイス」を有し、そこから生み出される利益は「国内酒類」と肩を並べています。「サッポロビール」ならぬ「サッポロビル」と揶揄されるほどです。

不動産事業で力を入れるのが「恵比寿ガーデンプレイス」や今年9月に改行した「銀座プレイス」といずれも一等地の物件であり、これからも安定した収益でサッポロの経営を支えるでしょう。

規模は他の大手3社の3分の1以下にすぎませんが、安定した収益源を持っていて巨額買収に手を出さないことから、リスクが最も小さい銘柄と言えるでしょう。

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image by:LunaseeStudios / Shutterstock.com

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年12月14日)

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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