トランプ政権は「対外直接投資&逆輸入」を問題視
この種の問題は、先進国共通です。共通ですが、ある国で「対外直接投資&製品逆輸入」が政治問題化し、改善が始まっています。その国とは、驚くことに(驚かないかな)、アメリカです。
米フォード・モーターは3日、メキシコでの工場新設をとりやめ、代わりに米ミシガン州の工場で電気自動車(EV)と自動運転車をつくると発表した。
フォードはメキシコの新工場で小型車をつくり米国に逆輸入する計画だったが、トランプ次期米大統領はこれを「恥知らず」と批判し、大統領就任後は高関税をかけると公言していた。
フォードのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)がミシガン州のフラットロック工場で記者会見した。現在はフォードの「ムスタング」と高級車「リンカーン」をつくる同工場で、2020年以降に順次EVと自動運転車を追加生産する。フィールズCEOは会見で「我々はグローバルメーカーだが母国はアメリカだ」と述べた。(後略)
引用:米フォード、メキシコ工場建設を中止 トランプ氏の批判に対応か – 日本経済新聞 2017年1月4日付
次期アメリカ大統領であるドナルド・トランプの経済政策に関する評価をするのは、時期尚早もいいところですが、少なくとも「対外直接投資&逆輸入」を問題視する姿勢は、彼の公約に沿っていると思います。
フォードからしてみれば、メキシコに工場を建設し、アメリカに自動車を逆輸入することは、「そちらの方が利益が出る。安い製品を流通させれば、アメリカの消費者も喜ぶではないか」という話なのでしょうが、「国民経済」からしてみれば、「そうではないだろ」という話になるのです。少なくとも、アメリカの生産者がダメージを受けます。
そして、国民経済において「生産者」は「消費者」でもあるのです。
思えば、労働者の賃金を引き上げ、購買力を高めることで大量生産した製品を販売し、企業の売上や国民経済を成長させるという「フォーディズム」の始まりは、当たり前ですがヘンリー・フォードです。
そのフォード社が、事情はどうあれ「対外直接投資&逆輸入」を取りやめた。時代を象徴しているとは思えませんか?
日本もアメリカに倣い、「対外(対中)直接投資&逆輸入」が国民経済に悪影響を与えていることを認識、国内生産を拡大することを経済政策の目標に掲げるべきなのです。
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017/1/4号より
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