厚労省の言い分2:お年寄りが増えるけど、年金はつぶれません
マンガの第8話「財政検証のための人口と経済の見通し」では、少子高齢化の影響が検討されている。確かに「嘘は言っていない」かもしれないが、国民にとって最も重要な問題点を無視した説明といえる。
あと何十年かしたら人口の4割が65歳以上になりますが、「年金って大丈夫なの?」と心配する必要はありません。そのときのために、厳しい人口推計を織り込んで財政検証を行っています。
(第8話の内容を筆者要約)
裏読みしてわかること2:年金がつぶれないかわりに、老後も働かなければ生きていけない
「自動的に財政のバランスを取る」のだから、年金制度が潰れないことに嘘はない。つまり、十分に給付しないのだから、潰れるわけがない。
とはいえ、そのような年金制度が、セーフティーネットの役割を担う社会保障制度として、まともに機能するかどうかは別問題だ。
セーフティーネットとしての機能、つまり生きていけるだけの金額を給付する年金制度を期待するならば、平成28年度の基礎年金満額受取年金額が年間780,100円だったので、既に事実上破たんしている。自営業など、国民年金のみに加入している場合の65歳受取開始金額がこれだ。
厚生年金の加入者はもっと多く受け取れるが、セーフティーネットが意味するところは、少ない方を支えることだ。これは現状の、「現役20人で年金受給者10人を支える」状況の場合での金額だ。
厚労省は、将来「現役12人で年金受給者10人を支える」状況になった時は、現役世代の半数にあたる女性6人や、支えられる側10人の労働力に期待するしかないと言う。
とはいえ、年間780,100円で暮らしていけるとは思えないので、現状でも既に支えられる側とはいえ、年金受給者は労働力でいるか、私的に支えられているはずだ。政府に言われなくても、「働かざる者は生きていけない」のが現状だ。それが、将来はもっと厳しくなるだけなのだ。
また、女性の労働力に期待し過ぎることは、少子化の進展に繋がる恐れがある。すると、「現役12人で年金受給者10人を支える」はずが、「現役10人以下で年金受給者10人を支える」状況にもなりかねないので、注意が必要だ。