厚労省の言い分4:若者は日本の未来に悲観することはありません
第11話「世代間格差の正体~若者って本当に損なの?」は、「なんか憂鬱になっちゃった」という若者を諭すような内容だ。私などは、これを読んだ若者は余計に不安になってしまうのではないかとすら思う。
「若者が損をする」という声がありますが、少子高齢化だけが年金の問題ではありません。日本経済が大きくなれば、公的年金に割ける額も大きくなる。つまり、経済も大きな要因です。結局、若者は大変ということですが…。少子高齢化が続けば仕方のないことですが、この状態が続くとは限らないので、そんなに悲観することはないですよ。
(第11話の内容を筆者要約)
裏読みしてわかること4:現状が悪化することがあっても、改善することはない
セーフティーネットとしては現状でも機能しているとは言い難い年金制度が、少子高齢化によりさらに悪化することは、厚労省も想定している。そして、想定外のことに期待をかけろと、かえって読者を不安に陥れている。
とはいえ、経済が大きな要因であることは事実だ。そもそも、少子化自体が政府の不適切な経済政策によって進展した可能性がある。
日本の経済成長が急激に悪化し始めたのは、消費税導入の翌年1990年からだ。同時にこの年が税収のピークでもあるので、ここから財政赤字が急増、公的債務も急膨張した。そして、消費税率を3%から5%に引き上げた1997年からは経済規模そのものが縮小した。
消費税は安定税源とされ、財政健全化には必要と喧伝されている。だが、消費税が経済成長と税収増を止めたので、財政は悪化の一途、年金制度は形骸化、健康保険制度なども風前の灯となったのが現実だ。世界的にも、消費税が財政に貢献したかどうかは疑わしい。ほとんどの国が財政赤字だからだ。
また、1989年からの税制改革は、企業収益が伸びても税収が増えない制度である。そのため、景気拡大に伴う大幅な税収増が期待できない。財政健全化には、歳出を減らすしかないのだ。つまり、社会保障費の削減だ。
この税制を変えない限り、財政再建も、年金制度がセーフティーネットとして機能することも不可能に近いと言える。
ところが、次の衆院選に先立ち、安倍首相は「消費増税」を明言した。仮に、消費増税が実現したなら、想定内の現状が悪化することがあっても、改善することはないと見ている。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年9月30日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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