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日銀が発表した「量的・質的金融緩和の検証」を検証してみた

「量的・質的金融緩和」が導入されてからはや2年。日銀はこの量的・質的金融緩和に対しする検証レポートを5月1日に発表しました。はたしてその内容はどのようなものだったのでしょうか?その検証レポートについての検証を人気メルマガ『牛さん熊さんの本日の債券』が行っています。

量的・質的金融緩和の検証の検証

牛さん熊さんの本日の債券』(2015年5月12日号)より一部抜粋

日銀は2015年5月1日に個人の名前ではなく企画局の名前で、『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』というレポート(日銀レビュー)を発表した。

「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証

2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入してから2年が経過し、「量的・質的金融緩和」が金融・経済に与えた政策効果についての定量的な検証を試みたものだそうである。

それによると「量的・質的金融緩和」の効果の波及メカニズムは、2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントとこれを裏打ちする大規模な金融緩和により予想物価上昇率を引き上げると同時に、巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることで、実質金利を押し下げることを起点とするとある。

この計測の結果、「量的・質的金融緩和」は、実質金利を1%弱押し下げた、実際の経済・物価は、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きを示している、と評価できる、としている。ただし、最近では、原油価格の下落を主因に消費者物価上昇率は低下しており、これが人々の予想物価上昇率の形成との関係でどのような影響を与えるか、注視していく必要がある、としている。

110兆円まで膨らんだ日銀の国債保有残高であるが、この累積の国債買入れ効果は、10年物実質金利換算で0.8%ポイントとの結果が得られたそうである。そもそも実質金利とは何か。実質金利=名目金利-予期インフレ率で表すことができるとされる(フィッシャー方程式)。予期インフレ率の算出そのものに疑問があり(岩田副総裁はBEIについて欠陥があると明言)、さらに経済活動を行う上で実質金利を意識している経済主体が果たしてあるのかという疑問もある。それにも関わらず、実質金利の低下による経済効果を算出することが可能なのだろうか。

株価や為替の動きを載せているが、すでに株価の上昇も急激な円安も日銀の異次元緩和以前に始まっており、これを実質金利の低下によるものと結論づけることは無理があるまいか。景気や物価、雇用の個別の数字を出して効果があったと結論づけているが、ここにはユーロ圏の信用危機の後退による影響等も当然含まれていたはずである。

このレポートでは肝心要の「マネタリーベース」という言葉が出てこない。黒田日銀の金融政策の目標値は「マネタリーベース」であるにも関わらず、これが増加すれば自然と物価が上がるというような説明はない。しかも最大の目標となっている2%の物価上昇については原油価格の下落の影響により達成できなかったとしている。マネタリーベースは予定通りに順調に増加していたのに、物価は予想通りには上がらずとも、当初の目的は達成できたとの結論はやはり無理があるのではなかろうか。

牛さん熊さんの本日の債券』(2015年5月12日号)より一部抜粋

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