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2015年度中のインフレ目標は達成不可能!そもそも「デフレ脱却」ってどういう状態?

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年3月30日号より
※本記事のタイトルはMONEY VOICE編集部によるものです

日本銀行の「2年で2%」のインフレ目標達成の期限が近づいて参りました。もはや、日銀がインフレ目標の「コミットメント」を達成できる可能性はありません。

3月27日に、総務省が15年2月の消費者物価指数を発表しました。消費税増税分(2%)を除くと、CPIが0.2%、コアCPIとコアコアCPIが共に「ゼロ」と、物価は失速しつつあります。消費税増税分が剥がれる4月には、コアCPIとコアコアCPIが共にマイナスに陥っている蓋然性は高いでしょう。

また、同日に家計消費支出(二人以上の世帯)が発表されました。実質消費が、対前年比で▲2.9%。相変わらず、日本国民は消費を「実質的に」減らしているということになります。

そもそも、日本政府(及び日本銀行)の「デフレ脱却」の定義や指標は奇妙で、かつ混乱しておりますので、整理しておきます。

97年の橋本緊縮財政以降、我が国は、
「インフレ率がマイナスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が落ち込み、実質賃金が下がり続ける」
という状態に陥りました。実質賃金の下落とは、国民の貧困化です。デフレは、国民が貧困化することが問題なのです。貧困化した国民は消費や投資を減らすため、更なる物価下落を引き起こし、それ以上のペースで賃金が低下します(=実質賃金下落)。

すなわち、デフレ脱却のゴールは、
「インフレ率がプラスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が上昇し、実質賃金が高まっていく」
ことなのです。国民が「豊かになっていく」環境を取り戻すことこそが、デフレ対策のゴールなのでございます。

当たり前ですが、
「消費者物価指数が上昇に転じたにも関わらず、賃金水準の上昇が不十分で、実質賃金が下落する」
も、
「消費者物価指数が下落に転じた結果、実質賃金がプラス化する」
も、共にデフレ脱却のゴールではないのです。と言いますか、「消費者物価指数下落により、実質賃金がプラス化」した場合、97年・98年の例に倣うと、再び、
「インフレ率がマイナスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が落ち込み、実質賃金が下がり続ける」
の状況に戻る可能性が出てくるわけです。すなわち、再デフレ化です。

しかも、安倍政権は大企業に「賃上げ」を依頼しつつ、同時に労働規制の緩和、外国人労働者の受入と、賃金水準を引き下げる政策を実施しているため、なおのこと「再デフレ化」の確率は高まってしまいます。

政府が真剣に「デフレ対策」を実施したいならば、目標を、
「インフレ率がプラスで推移し、それ以上のペースで賃金水準が上昇し、実質賃金が高まっていくこと」
に置き、インフレ率の目標はコアCPIではなく「コアコアCPI(食料、エネルギーを除く総合消費者物価指数)に設定し、賃金水準を引き下げる各種労働規制の緩和は実施せず、外国人労働者の受入はせずに「需要」を拡大することで、「人手不足」を各産業に伝播させていかなければなりません。
人手不足を外国人労働者受け入れではなく、「生産性向上」により解決しようとしたとき、我が国はようやく「国民が豊かになる経済」を取り戻すことが可能になります。

ところが、安倍政権はデフレ対策を日銀に丸投げし、緊縮財政と労働規制の緩和、外国人労働者受入という、「デフレ対策」としては明らかに間違った政策を推進していっているわけです。

これは、無知によるものなのでしょうか。あるいは、全てを理解した上で、「デフレ期のデフレ促進策」を推し進めているのか。果たして、どちらなのでしょうか。

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