もはやFRBもECBも物価目標にはこだわっていない
もともと、インフレ率の低下は、日本が不況になり、デフレになったためではなく、まして日銀の流動性供給が不足していたからでもありません。この20年で顕著になったグローバル化・フラット化が、日本だけでなく世界の主要先進国で賃金・物価の押し下げをもたらし、代わって中国や新興国で賃上げ・インフレを高めることになりました。
現に日本のメーカーは次々と中国、ベトナム、バングラなどに生産拠点を移し、米国自動車産業はメキシコに移転して生産コストを下げました。これで価格を抑え、競争力、収益を確保しています。これらに中央銀行が介在する余地はありません。
もともと欧米やニュージーランドの物価目標は、財政規律の緩みも含めて、高すぎるインフレを抑制する目的で設けられています。それが経済のグローバル化・フラット化により、低すぎるインフレに状況が変わったので、物価目標の位置づけも変わりました。このため、FRBもECBも物価目標に拘泥せず、景気の拡大のもとで徐々に正常化に転じています。
なぜ日本だけが緩和策を継続?
日本も本来、置かれた状況は同じで、完全雇用、人手不足という中で大規模緩和を続けたり、選挙が終わったからと言って経済対策で需要をつけたりする必然性はありません。それでも、アベノミクスで掲げた2%の物価目標から遠いからというだけで、緩和策を継続する羽目になっています。この日米欧の違いから、日銀に新たな負担が及びます。
FRBはすでに利上げを繰り返し、ついに資産の圧縮も始めました。この春以降は低下気味にあった米国長期金利も、ここへきてまた上昇気味となっています。ECBが資産買い入れを圧縮すれば、金利圧力はさらに高まる可能性があります。
そうなると、日本の国債利回りにも上昇圧力がかかり、10年国債利回りがゼロ、あるいは0.1%までに収まらなくなります。現状のままなら、日銀は国債の「指値オペ」により、長期国債を無制限に買う羽目になります。建前上、年に80兆円程度を目途に、としていますが、日銀の本音は「国債の買い入れを減らしたい」。米金利上昇はこれに逆行します。









