2017年はトランプ大統領が主役の年
トランプ大統領就任で始まり、目玉公約であった税制改革法案成立で締め括られようとしている2017年は、名実ともにトランプ大統領が主役の1年だったといえる。
昨年末時点で19,762ドルであったNYダウは、クリスマス休暇前の先週末時点で24,754ドルと約5,000ドル、25%上昇を記録した。
低支持率や政権幹部の相次ぐ離脱など政権の安定性に疑問符が付けられ、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しやTPP(環太平洋パートナーシップ)、パリ協定からの離脱など米国第一主義、保護主義的な政策や孤立化がずっとメディアから批判を受け続けたうえに、北朝鮮や中東問題などの地政学リスクに直面し続けた新大統領の任期1年目で、これだけ金融市場が好調に推移したのは奇跡だともいえる。
逆説的ではあるが、これだけメディアから批判を受け続ける大統領の下で金融市場が安定的に推移し続けたのは、メディアのおかげであったともいえる。
「悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」という相場の格言に準えれば、メディアがトランプ大統領を批判し続け、常に投資家に「懐疑」を与え続けたことが「相場を育てた」と大きな要因だったといえる。
一般的に、投資環境に「懐疑」を抱いている投資家は、投資資金を一度に使わず、様子を見ながら参戦するか、ヘッジを掛けながら慎重な運用に努めるかである。
NY株は、ボラティリティが低位安定的に推移してきた
トランプ大統領が誕生して以降のNY株式市場の大きな特徴は、ボラティリティが低位安定的に推移してきたことである。NY株式市場の中期的なボラティリティの平均は12%程度であるが、2017年は6.5%程度となっている。特筆すべきことは、2017年になって先週末22日までの247営業日のうち、ボラティリティが10%を超えたことは1日もないことである。ボラティリティが10%を超えたのは、トランプ大統領が大統領選で予想外の勝利をおさめ、トランプラリーが始まった2016年の11月が最後である。
ボラティリティが低下するということは、資金の流れが一定であることを示している。ボラティリティの上昇は、短期間に資金の流出入が起きた場合に起きるものである。
もしトランプ大統領の支持率が高く、政治的に安定していると見做されていたとしたら、投資家は我先に投資資金をリスク資産に注ぎ込んだだろう。しかし、トランプ政権は低支持率に喘ぎ、常にマスコミから批判を浴び続けていた。こうした状況を見続けていた投資家の多くは、投資資金を一時にリスク資産に投じることをためらったとしても不思議ではない。
100注ぎ込む予定だった資金を、10ずつ10回に分けて投じるようにすれば、結果的に市場へ安定的に資金が流入することとなり、市場のボラティリティは低下することになる。トランプラリーが予想以上に長く続いた背景には、投資家がトランプ政権に対して「懐疑」を抱き続けてきたことがあったといえる。
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