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日本経済の供給力と生産性を破壊し続ける「消費増税の大罪」=内閣官房参与 藤井聡

消費税は、日本経済の生産性、供給力、競争力にも大ダメージを与えた

多くのエコノミストや学者、経済官僚や財界の皆さんが常日頃「大切だ」と言い続けている日本経済の「生産性」や「供給力」さらには「競争力」に対して、消費増税は大きなダメージをもたらしているのです!

下記のグラフをご覧ください。このグラフは、民間投資(実質値)を示しています。

日本のGDPはおおよそ500兆円、その最大部分を占めるのが300兆円の消費ですが、民間企業の「投資」は現在おおよそ80兆円程度の水準を占めています。

この80兆円という投資水準は「消費」の4分の1弱で、全体の6分の1強ですから、さして大きくないとも言えますが、その水準は日本経済の「生産性」や「競争力」にとって、最も重要な意味を持つものです。

なぜなら民間企業が投資を重ねることではじめて、日本の生産力、供給力が維持され、増強され、国際的な競争力が獲得されていくからです。

「投資」は一旦行うと、何年も何十年もの間、生産性を向上させます。ですから、日本の「経済力」を考えるうえで、文字通りその場で消えてなくなってしまう「消費」よりも中長期的に重要な意味を持つのです。
(※これは民間投資だけでなく、公共投資についても同じことが言えるのですが――それについては本稿では一旦脇に置きましょう)

2014年の「消費増税」以降、成長率が一気に鈍化

さて、日本経済を考えるうえで、それほどまでに重要な「投資」なのですが、これもまた、リーマンショックによって大きく縮減します。ですが、その直後の2009年から徐々に回復していくことになります。

そして、消費増税の直前の2014年の1-3月期までに、リーマンショック後の最低水準だった65兆円から79兆円にまで、約14兆円も回復していったのです。その成長は年率で2.9兆円、「4%」のペースでした。その背後には、「リーマンショックからの回復」という過程に加えて、2012年からはじまったアベノミクスによる景気浮揚効果があったことは間違いありません。

しかし、2014年の4月の消費増税以降、そのトレンドがいきなり変化します。成長率が一気に鈍化したのです。グラフに示したように、年率1兆円、成長率「1.3%」にまで縮退します。これは増税前の「3分の1」の水準。実学にして年率1.9兆円も縮小してしまったわけです。

なぜこうなったのかといえば、理由は明白。そもそも、日本企業全体にとっての最大のマーケット=顧客は、日本国内の「消費」です。その「消費」が約1割、一世帯あたりにして月3万円弱も縮小すれば、企業が投資を控え始めるのも当然です。しかも、「投資」を行うにしても、その投資行為に対して消費税がかかってくるのですから、民間投資にブレーキがかかるのも必然です。

結果、日本では、昨年末時点で3.9兆円もの投資が縮退してしまったことが、先程のグラフから推計される、という次第です。

もしこのままの「投資成長率」が続けば、毎年1.9兆円ずつ投資が縮退していき、2020年時点では、「11兆円」程度もの水準で、民間投資が縮退することになってしまいます。

そもそも民間投資は、「生産性の向上」のみならず、年々老朽化していく設備に対する「維持・管理・更新」や地震等のリスクのための「強靭化」のためにも必要不可欠。このままでは、生産性の向上が阻害されるばかりではなく、「現状維持」すらままならなくなっていきます。

つまり消費増税は、短期的に需要を棄損し、景気後退、経済規模縮退を導くのみならず――、

――それを通して、日本の成長の源泉たる「供給力」や「生産性」、つまり「経済競争力」を抜本的に毀損するダメージを我が国にもたらしているのです。

この「消費増税によるダメージ」の存在を真正面から受け止めるなら、日本経済が自ら成長していく力を取り戻すために、「消費税を5%に戻す」減税の可能性も含めた「政府支出の拡大」が必要不可欠であることは、万人が認めざるを得ないのではないでしょうか。それなくして消費増税のダメージから日本経済を救い出し、日本人の消費や需要、そして「競争力」の回復を期することなどできないのです。

※追伸:あるべき経済政策については,ぜひ下記をご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4794968248/

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