緩和策「解除」を求められる黒田日銀
日銀の黒田東彦総裁は15日に開催された支店長会議で、「景気は緩やかに拡大を続ける」とし、物価も目標とする2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を示しました。
しかし、日銀もこれまでの緩和策の解除を市場から求められる可能性があり、徐々にその兆候が見られ始めています。
国債買い入れ額がすでに目標の80兆円を大きく下回っており、実質的なテーパリングになっている点を理解しておく必要があります。
「ドル円」はもう少し高くてもいい
さて、昨年12月末時点のドル円の理論値の推計は111.56円であり、ドル円はもう少し高くてもよいでしょう。また、米5-30年債利回りスプレッドから見た理論値でも112円台半ばです。その意味でも、いまのドル円はやや円高に振れている印象があります。
しかし、いまはドル安材料が多い状況です。繰り返すように、ユーロや円が金融政策の変更の可能性を受けて買われやすいといえます。このような「材料視の新鮮味」にも注意が必要です。
今の政策がさらに加速する
日銀の政策転換が明確になれば、円高は不可避ですが、日銀が政策を名目上簡単に変えることはあり得ません。
黒田総裁の後任人事も話題になりますが、今の時点で後任の名前が出てこないとなれば、黒田氏の続投は十分にあり得るでしょう。
安倍首相も秋に自民党総裁選を控えています。東京五輪を首相の立場で迎えることは悲願であり、総裁選での勝利から消費増税を乗り切る必要があります。これはかなり高いハードルといえます。
そのためには、財政再建は先送りし、むしろ財政出動を行い、緩和策を継続するしかありません。
結果的に今の政策がさらに加速することになります。とにかく、円高には絶対にできないという強い意志を示す一方、これを米国側に納得してもらい、受け入れてもらうしかありません。
安倍首相にはその政治力が問われているといえるでしょう。そのために、安倍首相は「伝家の宝刀」を抜くのではないかと考えています。
いずれにしても、安倍首相とトランプ大統領は良好な関係です。しかし、「〇の切れ目は縁の切れ目」であることを理解しておく必要がありますね。これらが何を意味するのか、いずれ機会があれば解説したいと思います。
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